相続 遺産分割 所得税

特定の者が負担する準確定申告の所得税

永吉先生

いつもお世話になります。

準確定申告の所得税を特定の者が負担する場合について教えてください。

どうぞよろしくお願い申し上げます。

【前提】

すべての相続人の同意によって、1人の相続人が準確定申告の所得税を全額負担することが決まりました。

付表6(相続人の代表者指定届出書)の特定の者の相続分に、納付税額の全額を記入しました。

申告書提出時、特定の者が全額納税する場合、遺産分割協議書等の添付が必要と指導がありました。

相続税申告時の遺産分割協議書は、以下の事項を含めて記載いたします。

【質問】

(1)遺産分割協議書

遺産分割協議書の内容は、次のとおりでよろしいでしょうか?

相続人○○○○が承継する債務

所得税及び復興特別所得税
○○税務署 ○○○円
令和1年分

(2)添付書類

遺産分割協議書は、署名実印、印鑑証明書は不要で、記名認印でよろしいでしょうか?

【私見】

上記で問題ない。

【参考】

遺産分割協議書への債務の書き方

被相続人が負担すべき債務は相続開始と同時に共同相続人に相続分に応じて引き継がれますので、民法上は遺産分割の対象にはなりません。
しかし、相続税法では、被相続人の債務について債務控除の規定を設けており、「その者の負担に属する金額」については課税価格から控除することとしています(相続税法13条)。
この場合の「その者の負担に属する金額」とは、共同相続人の間で合意した負担額となりますので、共同相続人全員で負担者が決定されたときは、民法の考え方はともかくとして相続税の計算上は債務控除の対象となります。
従って、債務に関して負担者が決定されたもの(複数の相続人が別々の債務を負担するもの)を各人が債務控除する場合には、遺産分割協議書に個々に列挙して記載する必要があります。

https://www.zeiri4.com/c_6/c_1070/q_18268/

●●先生

ご質問、ありがとうございます。
弁護士法人ピクト法律事務所の永吉です。

1 ご質問

>【前提】
>すべての相続人の同意によって、1人の相続人が準確定申告の所得税を全額負担することが決
>まりました。
>付表6(相続人の代表者指定届出書)の特定の者の相続分に、納付税額の全額を記入しました。
>申告書提出時、特定の者が全額納税する場合、遺産分割協議書等の添付が必要と指導があり
>ました。
>相続税申告時の遺産分割協議書は、以下の事項を含めて記載いたします。

>(1)遺産分割協議書
>遺産分割協議書の内容は、次のとおりでよろしいでしょうか?
>相続人○○○○が承継する債務
>所得税及び復興特別所得税
>○○税務署 ○○○円
>令和1年分
>(2)添付書類
>遺産分割協議書は、署名実印、印鑑証明書は不要で、記名認印でよろしいでしょうか?

2 回答

ご質問のご趣旨は、
準確定申告による全額納税を特定の者が
する場合に必要な、添付される遺産分割協議書の形式
ということでよろしいでしょうか。
その前提で回答します。

(1)民法上の遺産分割協議書について

民法上は、遺産分割協議書について、
ご指摘のとおり、作成様式に関する
制限はありません。

そのため、記名認印だからと言って、
効力がないとかそういう問題にはなりません。
(あくまでも相続人の合意があれば良い)

しかし、
遺産分割協議を行う場合には、
複数の相続人が同居しているケースもあるかと思います。

この場合、作成後において、相続人のうち1人から、
他の相続人に印鑑を盗まれ、勝手に遺産分割協議が行われたなどとして、
遺産分割協議書の内容が争われるのがままあるケースです。

そのため、
署名実印や印鑑証明書の交付を求めるほうが、
遺産分割協議書の内容が後日争われるリスクを
低減することができます。

(2)準確定申告による所得税の全額納付について

被相続人の所得税納付義務は、
法律上は、各相続人の法定相続分にしたがって分割される
ものです(最判昭和34年6月19日、所得税基本通達124・125-3)。

ですので、相続人間の負担割合は別として、

債権者との関係で誰が債務を履行する義務を負うか
というと、債権者の同意がない限り、法定相続分で
ということとなります(このケースでは債権者が「国」
となります。)。

したがって、ご質問の

>申告書提出時、特定の者が全額納税する場合、
>遺産分割協議書等の添付が必要と指導がありました。

というのは、法律の要件というよりは、
債権者(国)サイドで、1名の納付に同意をするかを
判断するための資料ということになります。

ですので、

>(2)添付書類
>遺産分割協議書は、署名実印、印鑑証明書は不要で、記名認印でよろしいでしょうか?

というのは、法律で指定されているわけではなく、
あくまでも国側がそのような形式の遺産分割協議書で、
1名の納付に同意をするのか否かという国側の任意の問題と
なります。

したがって、法律上、どのような形式ならOK・NG
というものは存在しません。
(実務上は、記名認印で提出して、全額を納付していれば、
それ以上何もいってこないとは思いますが)

(3)記載方法

>(1)遺産分割協議書

>遺産分割協議書の内容は、次のとおりでよろしいでしょうか?
>相続人○○○○が承継する債務
>所得税及び復興特別所得税
>○○税務署 ○○○円
>令和1年分

この記載例でも趣旨はわかりますので、
問題はないかと思いますが、

厳密にいうと、債務を「承継」するのは、
相続分の範囲でですので、

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
以下の被相続人の債務については、
相続人○○○○が全額負担するものとする。

被相続人の所得税及び復興特別所得税
○○税務署 ○○○円
令和1年分
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

等の記載となるかと思います。

(4)その他

こちらはご質問の趣旨から外れるかとは
思いますが、

例えば、不動産登記等では、
相続人の印鑑証明書の添付と
協議書への実印での押印が必要となります。

別途、登記用の資料を作成し直す
ということであれば、それでも構いませんが、

手間という意味では、
実印等で行っておいた方がスムーズである
ということはあるかと思います。

よろしくお願い申し上げます。