不動産 民法 借地借家法

建物の売却代金を家賃として支払うことの是非

永吉先生

お世話になっております。税理士の●●です。

建物の売買代金を家賃として支払うことの法律的な問題点を
教えてください。

甲(売主)は乙(買主)は、建物を売却する売買契約を締結する予定です。
(売却代金250万円)
その売買契約の上に、「不動産賃貸借契約の覚書」という覚書が作成されており、
「賃貸借契約に関する取り決め
1.本契約は、本件建物を金250万円にて甲より乙に売却するため、本件建物の売買代金を
乙が甲に家賃として支払うための契約である。
2、乙より甲への家賃の支払いが250万円となった時点で本来の売買が完了し、
甲は乙への所有権移転手続きと引き渡しを行うこととする。その際、甲は乙に受領済みの家賃 の他に追加の金額を要求できない。」
という条項があります。

乙は、売買代金を家賃として支払って、経費で落としたい、という考えのようです。
(甲が弊所関与先です。)
不動産会社が仲介に入ってやっていることのようですが、
これは会計上も税法上も問題があると思います。

よろしくお願いいたします。

●●先生

ご質問、ありがとうございます。
弁護士法人ピクト法律事務所の永吉です。

1 ご質問

>建物の売買代金を家賃として支払うことの法律的な問題点を
>教えてください。
>その売買契約の上に、「不動産賃貸借契約の覚書」という覚書が作成されており、
>「賃貸借契約に関する取り決め
>1.本契約は、本件建物を金250万円にて甲より乙に売却するため、本件建物の売買代金
>を乙が甲に家賃として支払うための契約である。
>2、乙より甲への家賃の支払いが250万円となった時点で本来の売買が完了し、
>甲は乙への所有権移転手続きと引き渡しを行うこととする。その際、甲は乙に受領済みの家
>賃の他に追加の金額を要求できない。」
>という条項があります。

>乙は、売買代金を家賃として支払って、経費で落としたい、という考えのようです。
>(甲が弊所関与先です。)
>不動産会社が仲介に入ってやっていることのようですが、
>これは会計上も税法上も問題があると思います。

2 回答

ご指摘のとおり、これは、単なる売買契約の
代金の分割払いかと思います。

そもそも売買契約の対価は、売買の対価であって、
家賃?ではありません。

法的に整理すると、売買代金(250万円)の全額支払い
まで、甲に所有権を留保する売買契約ということとなります。

民事的にいうと、
「家賃」と記載してしますと、
あくまでも代金支払いが完了するまでは、
甲は賃貸人と同様の修繕義務等は負う合意
だった等、甲は、通常の売買に比べて
義務が過重されるおそれもありますし、

他の契約条項がわかりかねますので、
なんとも言い難いですが、例えば
完済までの期間に物件が破損した場合に
どちらがそれを負担するのか(売買代金は
払い続けるのかどうか)等
疑義がでます。

契約書はあくまでも、取引関係を
明確にするために作るものですので、
互いの義務・合意内容が不明確になる
または明らかに実態と乖離する契約書を作成すること
はあまりおすすめはできません。

よろしくお願い申し上げます。