いつも大変お世話になっております。
表題の件について、ご教示頂ければ幸いです。
電子申告の義務化対象法人についての相談です。
【前提】
当該法人の税務申告書及び決算書の作成は全て法人自身が作成し、
税理士は作成しません。(税務申告書のチェックは行います。)
また、電子申告の送信は当該法人自身で電子署名を行い送信する予定です。
【質問1】
「税理士署名押印」欄に顧問税理士名を記載する事は税理士法上の
問題がありますか。また、この場合、税理士の電子署名は必須でしょうか。
【質問2】
「税理士署名押印」欄を空欄としつつ、税務調査対応の関係で、
税務代理権限証書のみ電子申告で送信する事は、技術的には可能ですが、
税理士法上の問題はありますか。
以上です。
どうぞよろしくお願い申し上げます。
ご質問、ありがとうございます。
弁護士法人ピクト法律事務所の永吉です。
1 ご質問①
>【質問1】
>「税理士署名押印」欄に顧問税理士名を記載する事は税理士法上の
>問題がありますか。また、この場合、税理士の電子署名は必須でしょうか。
(1)税理士の署名押印について
>「税理士署名押印」欄に顧問税理士名を記載する事は税理士法上の
>問題がありますか。
税理士が税務書類を作成した場合には、
責任の所在を明確にするために、
税理士法上、署名押印欄に記載する必要があります(税理士法33条2項)。
一方で、作成していない場合に署名・押印をしてはいけない
という規定自体はありません。
(名義貸しになるようなケースや実際には内容を
確認せず、虚偽の申告書に署名押印してしまった
ケースは別として)
>当該法人の税務申告書及び決算書の作成は全て法人自身が作成し、
>税理士は作成しません。(税務申告書のチェックは行います。)
ということですと、この税務申告書のチェックが、
「税務相談」に止まるものなのか、税務書類の「作成」と
評価するのかの問題ですが、
一般的に税務相談よりも、税務書類の「作成」をした
方が責任重くはなりますので、実態が「チェック」のみ
ということであれば、署名押印欄に記載することは
おすすめしません。
(2)電子署名について
>この場合、税理士の電子署名は必須でしょうか。
現実的に問題視されるかと、以下の法律が
このような税理士法の建付まで考慮して立法
されたかについては、甚だ疑問が残りますが、
行政手続等における情報通信の技術の利用に関する法律
第3条4項及び同施行規則8条1項
により、法形式上は、電子申告自体だけではなく、
税務書類の作成欄の署名押印(税理士法33条2項)
についても、必要と考えられます。
2 ご質問②
>【質問2】
>「税理士署名押印」欄を空欄としつつ、税務調査対応の関係で、
>税務代理権限証書のみ電子申告で送信する事は、技術的には可能ですが、
>税理士法上の問題はありますか。
当然、確定申告の代理を行わずに、調査のみ代理するという
ことも税理士法は認められています。
ですので、税理士法上問題はありません。
ただし、通常の代理権限証書で記載してしまうと
確定申告の代理をしたのか否かが明確では
ありませんので、税理士署名・押印欄が空欄である
ことを上記の税理士法33条違反と疑われるおそれも
ありますし、依頼者との契約関係も不明確となりますから、
代理権限証書の注意事項にも記載のあるとおり、
「2 その他の事項」で、
本代理権限証書で、証明する代理権限には、
税務申告書の作成及び申告行為の代理権限は、
含まれておらず、税務調査における代理または代行権限
が含まれるものである旨、明示すべきかと思います。
よろしくお願い申し上げます。