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過去の修正により消えた繰越欠損にかかる重加算税の適用について

永吉先生
●●と申します。
宜しくお願いします。
申し訳ございません税務の質問になるのですが、回答可能でしたら。

前提
最近顧問契約した甲社は過去の調査で売上除外により修正と重加算税をかけられてました。
その調査などが落ち着いた後に顧問で引き継ぎました。
過去の修正申告により繰越欠損が消えたのですが、調査対象後の事業年度の申告は
前任税理士様が申告を終えており、金額大きく調査決定も長引いたらしいので、
繰欠が消えたことに対する修正をしないままになってました。

それが最近甲社に上記とは別で無予告調査が来てしまい、
直近年度の調査が開始されてしまい
繰欠を控除したままだと指摘をされてしまいました。
恐らく事前通知をすると修正されてしまうので、無予告で入ったのだと思われます。
もちろん無予告は断りましたが。
ただ、繰欠控除についての指摘の際に、
「これは元々売上除外に起因するものなので、重加算税になる」との主張でした。

この場合、今般調査年度で仮装隠蔽があったわけでは無いので、重加算税はおかしい
のでは主張しました。
「逆にこの調査前に修正出していれば、重加算税にはならなかったのですか?」
と質問すると。
「そうですね。」とのことです。

質問
調査官の指摘する過去調査での売上除外に起因していたからとする、今般の繰欠に対する修正に重加算税をかけることは適法なのでしょうか?

●●先生

ご質問、ありがとうございます。
弁護士法人ピクト法律事務所の永吉です。

1 ご質問

>最近顧問契約した甲社は過去の調査で売上除外により修正と重加算税をかけられてました。
>その調査などが落ち着いた後に顧問で引き継ぎました。
>過去の修正申告により繰越欠損が消えたのですが、調査対象後の事業年度の申告は
>前任税理士様が申告を終えており、金額大きく調査決定も長引いたらしいので、
>繰欠が消えたことに対する修正をしないままになってました。

>調査官の指摘する過去調査での売上除外に起因していたからとする、今般の繰欠に対する修
>正に重加算税をかけることは適法なのでしょうか?

2 回答

>甲社は過去の調査で売上除外により修正と重加算税をかけられてました。

この重加算税の賦課決定が正しかったの否かについて、
状況がわかりませんので、この売上除外が、重加算税の賦課要件である
「隠蔽または仮装」にあたるという前提で回答します。

法律的にいうと
国通法68条1項の隠蔽・仮装行為に「基づ」くと
判断できるかの議論かと思いますが、

基本的に、問題となっている事業年度以前の隠蔽・仮装行為により
発生した繰越欠損金を問題となっている事業年度で控除した場合には、
その控除した事業年度について重加算税の対象となると
解されています(長野地判平成9年8月26日、山口地判平成9年8月26日)。

事務運営指針もそのような前提の規定が置かれています。
https://www.nta.go.jp/law/jimu-unei/hojin/100703_02/00.htm

前回の修正申告などにより、
理論的には
故意性のある隠蔽・仮装に「基づ」くという
部分が解消されただけの事情があれば争う余地がないことも
ないかとは思いますが、

>過去の修正申告により繰越欠損が消えたのですが、調査対象後の事業年度の申告は
>前任税理士様が申告を終えており、金額大きく調査決定も長引いたらしいので、
>繰欠が消えたことに対する修正をしないままになってました。

ということで、重加算税の賦課要件の判断は、
原則的には(例外的な要素や判例もありますが本件とはあまり関係ないでしょう)
納税申告書提出時を基準とするため、

今回、問題となっている事業年度の確定申告提出時点では、
隠蔽・仮装が発覚する前に確定申告をしていたということ
でしょうから、裁決や裁判になれば、かなり厳しいと思います。

調査レベルで、争うとすれば、
前回の調査で修正申告をした時点で、
仮装・隠蔽の故意性は失われており、
今回の問題となっている事業年度では、
修正申告を忘れたに過ぎないという
ことを主張することにはなるかとは思います。
ただ、法的にはかなり厳しい主張であることは上記の通りです。

>今般調査年度で仮装隠蔽があったわけでは無いので、重加算税はおかしい
>のでは主張しました。

上記のとおり、今回は、あくまでも、
問題になっている事業年度の課税要件(繰欠の控除)
の調査の問題となりますので、調査年度は、
重加算税の要件を満たすか否かには関係がありません。

徹底的に争うということであれば、
上記の「基づく」とは言えないという
主張に加え、前回の修正申告の対象となっている
売上除外自体が、そもそも「仮装・隠蔽」行為ではなかった
という理由で、今回の重加算税の賦課決定(将来されたらの
話です)について争うということも、理論上は可能です。
(ただ、証拠の関係や前回修正申告に及んだ経緯等
は、納税者に極めて不利な判断資料となってしまうでしょう。)

よろしくお願い申し上げます。