役員報酬 株式 会社法 所得税

税制非適格SOと源泉税

永吉先生

お世話になっております。

(前提)
・A社の取締役Xは、2019年6月にストックオプション(SO)を行使した。
・上記SOは、税制「非」適格SOのため、行使時に給与課税され、A社は当該給与課税に係る源泉税を納税した。
・当該源泉税の額が多額だったため、取締役Xは、A社に当該源泉税分の金額を支払うことができず、2019年11月現在A社の貸借対照表上資産計上されたままである(当該資産は取締役Xに対する債権と理解しています)。
・取締役Xは、何とか資金を工面し、上手くいけば、2019年12月中には源泉税相当額を会社に支払うことも可能かもしれないが、まだ確定ではない。

(質問)
A社による源泉税の納税は、源泉徴収義務者としての納税義務を履行したにすぎず、取締役Xとの直接的な取引ではない。
一方で、結果として、A社は取締役Xに対して債権を有しているという事実もある。

A社による源泉税納付又は納付後速やかに回収ができないことが判明した時点等のタイミングで、会社法上利益相反取引の承認を取締役会で決議をする必要があるか?

よろしくお願いいたします。

●●先生

ご質問ありがとうございます。
弁護士法人ピクト法律事務所の永吉です。

1 ご質問

>A社による源泉税納付又は納付後速やかに回収ができないことが判明した時点等のタイミング
>で、会社法上利益相反取引の承認を取締役会で決議をする必要があるか?

2 回答

結論として、回収できないことが判明した
時点における取締役会決議は不要です。

ご指摘のとおり、A社はXに対して、結果として、
源泉税相当額について債権を有していますが、
これは、Xの既に認められたストックオプションの行使に
よるもので、会社の法律行為によって生じたものでは
ないため、利益相反「取引」に該当しません。

なお、A社がXに対して、債権放棄(債務免除)をする等ですと、
会社の取締役への法律行為となりますので、利益相反規制が及びます。

また、会社のストックオプションを行使した取締役に対する
納付金額相当の債権は、取締役に対する報酬と対当の金額で
相殺して処理をすることも多いです。

この相殺については、会社に不利益が生じることはないため、
「利益相反」取引の規制は及びません。

よろしくお願い申し上げます。