不動産 民法 借地借家法

借地権の及ぶ範囲について

永吉先生

平素は大変お世話になります。
相続税の財産評価において、郊外型広大な自動車販売店敷地の
評価を行っております。借地借家法第二条に該当する「借地権の
及ぶ範囲」について税務裁決、裁判例以外で、この規定の争い
があった場合の参考事例や参考書書籍等ございましたらば
ご教示頂ければ幸いでございます。
宜しくお願い申し上げます。

●●先生

ご質問ありがとうございます。
弁護士法人ピクト法律事務所の永吉です。

1 ご質問

>相続税の財産評価において、郊外型広大な自動車販売店敷地の
>評価を行っております。借地借家法第二条に該当する「借地権の
>及ぶ範囲」について税務裁決、裁判例以外で、この規定の争い
>があった場合の参考事例や参考書書籍等ございましたらば
>ご教示頂ければ幸いでございます。
>宜しくお願い申し上げます。

2 回答

法的には、
自動車販売店敷地について、
「建物以外の駐車場部分がある場合に、
どの範囲で「建物所有目的」の賃借であるといえるか」
ということかと思われます。

そして、借地の一部だけに建物が
建っているというケースですと、
主たる目的が建物所有目的か否かで
判断されています。

そのような論点は従前から多くはあるのですが、
マイナーな論点であるため、当該論点について、
詳しく書いている書籍はあまりありません。

裁決例や裁判例以外でいうと以下の書籍に
一応の検討があります。

◯渡辺晋「借地借家法の解説」住宅新報社
◯司法研修所編「紛争類型別の要件事実」法曹會

ただし、裁判例を挙げているのみであるので、
結局どういった場合に、建物所有が主たる目的といえるか
についての解説ではありません。

借地の一部だけに建物が建っている事案の
場合には、以下のような裁判例があります。

建物所有が主目的とされた事案として、
・自動車運転教習所(最判昭和58年9月9日、東京地判平成2年6月27日)
・木造貯蔵及び製材のため作業場(大阪地判昭和26年6月26日)
・運送事業の営業所(東京地判平成19年9月20日)
・駐車場設備設置のための土地利用(東京地判平成23年2月15日)
などがあります。

一方、建物所有が主目的ではないとされた事案として、
・露天造船所(大判昭和15年11月27日)
・ゴルフ練習場(最判昭和42年12月5日)
・バッティングセンター(最判昭和50年10月2日)
・中古自動車展示販売場(東京高判昭和50年5月19日)
・ガソリンスタンド(東京高判平成14年4月3日)
・自動車修理場(東京地判平成24年11月30日)
などがあります。

ただし、どの裁判例も個別性が高く(個別判断)から、
書籍等でも簡単に触れられる程度なのだと考えられます。

最終的には、できる限りの理論武装をした上で、
判断していくことになるでしょう。

よろしくお願い申し上げます。