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取引の損金性と税理士の責任

永吉先生

お世話になっております。

塗装業を営む法人です。
お客さん(エンドユーザーとなる個人)に対して、
請求書を発行していますが、一部現金で返金しています。

これは事前に話がついているようで、
客が銀行借入で賄った工事代金を一部現金化しているのではと思います。

どちらから話を持ち掛けているかは不明ですが、
この場合、当該法人に違法性があるように思いますがいかがでしょうか。

また、違法性があるとした場合に返金した金額が損金となりえるかどうか及び
取引内容を知っていた税理士事務所の責任についてお教えください。

よろしくお願い致します。

ご質問、ありがとうございます。
弁護士法人ピクト法律事務所の永吉です。

1 ご質問①~違法性について~

>これは事前に話がついているようで、
>客が銀行借入で賄った工事代金を一部現金化しているのではと思います。
>どちらから話を持ち掛けているかは不明ですが、
>この場合、当該法人に違法性があるように思いますがいかがでしょうか。

違法性があるとすれば、

エンドユーザの借入について、
銀行は工事代金に充てることを前提に、
金銭を貸付けており、仮にそうでない
とすれば、貸付をしなかったということが
あれば、銀行に対する詐欺に当たる可能性がある
というところかと思います。

直接的な行為者は、エンドユーザですが、
それに加担しているということで、
共犯になる可能性自体はあるでしょう。

ただ、銀行と一消費者であるエンドユーザの
契約で、それを詐欺とまで言えるのかという
かなり難しいのではないかと思います。
(銀行に損害が実際にでるのかという問題も
あります。)

2 ご質問②~税への影響と税理士の責任について~

詐欺に当たるとしても、銀行とエンドユーザ
の関係は、取消がされなければ有効なものと
扱われますし、

法人とエンドユーザの間の契約まで、
違法となるかというとそうとは言えない
かと思います。
(また、税法上は、違法行為であるから
損金になるならないを判断するわけでは
ありません。)

あり得るとすると、
そもそも返金分は、工事代金ではなく、
請負契約の代金が請求書金額から工事代金を
差し引いた金額であるとされる可能性は
あるのでしょうが、
そうすると、そもそも益金が少なくなりますし、
一旦、法人に入金されているということですと、
そのような認定も難しいのではないかと思います。

>取引内容を知っていた税理士事務所の責任についてお教えください。

仮に詐欺に当たる行為だとしても、
基本的に人の犯罪行為を止めさせる義務自体は
ありませんので、責任が生じることは
考えにくいかと思います。
(もちろん、積極的に関与すれば、
詐欺罪の幇助等にはなりえますが)

もちろん、粉飾や脱税に関しては、
税理士として、
税理士法の規制がかかりますが、

上記の行為自体について、知っていた
というだけで、税理士の先生が責任を負う
という話ではないでしょう。

よろしくお願い申し上げます。