お世話になっております。
ある会社の監査役就任あたって、責任限定契約を締結することを検討しております。
監査役に就任する予定の会社から送付された責任限定契約書のドラフトに、会社法427条1項の要件である「監査役がその職務を行うにつき善意かつ重大な過失がないか」の判断は、会社が行うという規定(以下「本規定」)がありました。
・質問①
今回の会社とは別の会社で、監査役として責任限定契約を締結しているのですが、当該別の会社の契約には本規定はありませんでした。
本規定は一般的な規定のでしょうか?
・質問②
善意かつ重過失がないかを会社が決定できるとすると、仮に軽過失でも重過失と会社に判断されてしまうこともありえ、あまり責任限定契約の意味がないかと思ったのですが、そういう理解で正しいでしょうか?
(それとも、私の考えすぎで、本規定があっても、それほど実害はないのでしょうか?)
・質問③
本規定がなかった場合、 善意かつ重過失がないかはどのように決定されるのでしょうか?
(まずは会社と監査役で協議し、協議がまとまらない場合は、裁判?)
よろしくお願いいたします。
ご質問、ありがとうございます。
弁護士法人ピクト法律事務所の永吉です。
1 ご質問①〜会社が判断する規定について〜
>監査役に就任する予定の会社から送付された責任限定契約書のドラフトに、会社法427条1項
>の要件である「監査役がその職務を行うにつき善意かつ重大な過失がないか」の判断は、会
>社が行うという規定(以下「本規定」)がありました。
>今回の会社とは別の会社で、監査役として責任限定契約を締結しているのですが、
>当該別の会社の契約には本規定はありませんでした。
>本規定は一般的な規定のでしょうか?
一般的ではないように思います。
2 ご質問②〜実害があるのか?〜
>善意かつ重過失がないかを会社が決定できるとすると、仮に軽過失でも重過失と会社に判断
>されてしまうこともありえ、あまり責任限定契約の意味がないかと思ったのですが、
>そういう理解で正しいでしょうか?
>(それとも、私の考えすぎで、本規定があっても、それほど実害はないのでしょうか?)
ご指摘の通り、この規定を文言通りに解釈すると、損害賠償の側面では、
相手方になる会社が判断できるものですので、
先生のご指摘の通り、責任限定契約の意味がないものとなる可能性が高いです。
そもそも、責任限定契約がなければ、監査役に就任はしないという
前提での意思決定であれば、修正を求めるべきでしょう。
3 ご質問③〜本規定がなかった場合について〜
>本規定がなかった場合、 善意かつ重過失がないかはどのように決定されるのでしょうか?
>(まずは会社と監査役で協議し、協議がまとまらない場合は、裁判?)
そうですね。一般的には、
協議して、まとまらなければ、裁判となります。
ただし、この損害賠償請求は、株主代表訴訟という
ものもありますので、代表取締役以外の株主が
多い会社ですと、代表の人柄として、
損害賠償をしてこないだろうと想定したところで、
株主が会社を代表して、損害賠償請求をしてくる
というケースがあります。
よろしくお願い申し上げます。