相続 遺言 相続税

遺族年金の返金と債務控除等について

たいへんお世話になっています。「遺族年金」について、教えてください。
経過
遺族年金を受けていた母親がなくなりました。相続人は一人で、その他生前同居し
ていた内縁の夫が包括受遺者となりました。
生前、母親は遺族年金を受けていたので、たぶん内縁の夫が年金関係の手続きをし
た時だと思いますが、
「時効にかかっていない遺族年金の5年分を返却してください。」と言われたそう
です。又「相続の場合は返却で、贈与の場合 は、返却する必要がなく税務署の判断です」と言われたそうです。
前段の、内縁関係は遺族年金を返却する。はわかるのですが
後段の「相続」「贈与」になると、何を言っているのかよくわかりません。
私なり に解釈すると、「受遺者として、相続税の申告
をするのであれば、5年分の遺族年金は返却してください。」ということだと思い
ました。

そこで上記を前提に質問ですが、
1.内縁の夫が返さない場合は、相続人に返還義務が生じるのでしょうか。
2.返還した場合、遺産から差し引くことができる債務に該当するということでいいでしょうか。

よろしくお願いします。

●●先生

ご質問、ありがとうございます。
弁護士法人ピクト法律事務所の永吉です。

既に受け取った
遺族年金の返還義務がそもそもあるのかという
点については、事実婚が発覚したことが理由かと
思われますが、

その点については、返還義務がある前提で
回答します。

1 ご質問①~相続人に返還義務があるのか~

まず前提として、

>相続の場合は返却で、贈与の場合
>は、返却する必要がなく税務署の判断です」と言われたそうです。

の意味ですが、
母親が、内縁の夫に金銭の贈与をしていた場合には、
母親の遺族年金の返還義務とは関係なく純粋に「金銭」を
贈与したという意味で、受贈者は返還の義務はなく、
相続人であれば、母親の返還義務を相続するため、
返金する義務があるという趣旨かと思われます。

ですので、贈与か相続かというよりは、
相続人は返還義務を承継しているということを言っているのでしょう。

>内縁の夫が返さない場合は、相続人に返還義務が生じるのでしょうか。

まず、
>内縁の夫が包括受遺者
とありますので、内縁の夫が母親から
包括遺贈を受けたという意味かと思います。

包括受遺者の内縁の夫は、
相続人と同一の権利義務を有します(民法990条)
ので、相続人が本来の相続人と2名ということになります。

ただし、対国(債権者)との関係では、
包括受遺者以外の相続人に対して、法定相続分に
よる請求ができることになります。
(遺言者(債務者)の一方的な行為により、
法律で定められた請求できる範囲が異なる
のはおかしいという理由で、そのように
解されてます。)

したがって、今回のケースで、
仮に包括受遺者である夫が返還しなければ、
その他の相続人の法定相続分(つまり全額)、
国は、その他の相続人に返還を請求できる
(返還債務を負う)ことになります。

なお、仮に他の相続人が国に金銭を返還した場合には、

その他の相続人と包括受遺者の負担割合は、遺言の
内容によることになります。

仮に、全財産を内縁の夫に対して、包括遺贈させる
遺言の場合には、負担割合10割になりますので、
他の相続人は、全額内縁の夫に請求できます。

2 ご質問②~相続債務該当性~

>返還した場合、
>遺産から差し引くことができる債務に該当するということでいいでしょうか。

返還の有無に関わらず、
返還債務自体は、相続開始時に負担して
いますので、

遺産から差し引くことができます。

なお、税務申告上、債務控除できるのか
という意味でも同様です。

その他の相続人と包括受遺者の
債務控除の割合は、債権者へ返還債務を
負う金額ではなく、

上記のその他の相続人と包括受遺者
の「負担割合」によることとなります。

よろしくお願い申し上げます。