相続

海外で生まれた相続人の特定について

永吉先生

海外に隠し子がいる場合の相続についてご質問させてください。

前提事項
・家族構成は、父、母、子(二人)
・父は、もしかしたら海外に隠し子がいるかもしれない

ご質問事項
・海外で出生された隠し子は、日本国籍の相続人と全く同じ(何も制限がなく)相続権を有するのでしょうか。
・海外で出生された隠し子は、父の戸籍をみればわかるのでしょうか。
・父がまだ生きているうちに、父には知られずに調べる方法はあるのでしょうか。

ご確認の程、よろしくお願い致します。

●●先生

ご質問、ありがとうございます。
弁護士法人ピクト法律事務所の永吉です。

1 ご質問①〜海外にいる隠し子の相続権

日本の法律上、相続に関しては、被相続人が日本人であれば、
日本法が適用されます。(法適用に関する通則法36条)

したがって、隠し子であろうと、外国人であろうと、
被相続人の子であれば、制限なく相続権を有する相続人となります。
(民法887条1項)

ただし、隠し子のケース(婚外子)
ですと認知の有無により、
法律上「子」といえるかが異なってきます。

なお、この隠し子が、認知されずに
父が死亡した場合、死後3年以内であれば、
死後認知請求ができます(民法787条)。

2 ご質問②〜海外にいる隠し子は父の戸籍を見ればわかるのか?

こちらは、ケースバイケースです。

(1)日本に出生届が出されている場合

外国で出生した子に関して、
日本大使館などを通じて、
出生届を出すとともに、国籍留保の意思表示をしていれば、
日本の戸籍に編成されることになります。

実務上は、国籍留保の意思表示に不備があった場合、
届出人に意思確認をし、追完してもらうなどするようです。

したがって、この場合には、
戸籍を見れば、出生した子の情報がわかります。

仮に後になって、日本国籍を喪失しても
除籍として処理されるため、やはり戸籍に情報があります。

(2)日本に出生届が出されていない場合

他方で、もとより外国籍を付与する
つもりである場合、

外国において出生届が受理され、
当該国の国籍を得ていれば生活上問題は生じないため、
実際には、日本へ出生届をしないことも考えられます。
その場合は、日本の戸籍には情報が記載されることはありません。

なお、「1」のとおり、婚外子でも、
認知をすれば、隠し子は父の「子」となりますが、
日本国籍の取得がなければ、戸籍には現れないでしょう。

3 ご質問③〜父には知られずに調べる方法

>父がまだ生きているうちに、父には知られずに調べる方法はあるのでしょうか。

日本の戸籍の取得に関しては、
戸籍謄本の交付請求は、父本人のみならず、
その戸籍に記載された母や子も可能ですので、
父に知られることなく取り寄せることはできます。

一方で、
戸籍に情報が記載されていない場合には、
出生国のあたりがつけば、
その国の戸籍もしくはそれに代わる証明書を取得して
調査することになりますが、国によって法制度が異なるため、
かなり複雑でかつ困難かと思われますし、

父とその他の相続人の関係について、
出生国は把握していないでしょうから、父に知られずに
調査というのは、一般的には困難だと思います。

対象の国の渉外相続を
専門に扱っている事務所などに
問い合わせてみても良いかと思います。

よろしくお願い申し上げます。