株式の譲渡制限でお教え下さい。
A社長が叔父さんから自社株1万株を購入致しました。
譲渡日は2016.3.20です(決算日は3.31)。
ところが取締役会での譲渡承認は4/4になっています。
代金の振込みも4/4です。
この場合所有権自体は3/20に移動していると考えて宜しいでしょうか?
(会社は承認していないので、A社長は会社に対しては所有権を主張できないが…)
質問の背景は、もし3/20に所有権が移転しているとすれば
売買価格算定の基準が、2015.3.31の決算に基づいて算定したものとなり
4/4に所有権が移転しているとすれば
算定基準は2016.3.31の決算に基づいたものとなる…..と言うことです。
(実は2015.3.31決算ベースの算定価格の方が低いと言う背景もあります)
お教え戴ければ幸いです。
ご質問、ありがとうございます。
弁護士法人ピクト法律事務所の永吉です。
1 ご質問
>A社長が叔父さんから自社株1万株を購入致しました。
>譲渡日は2016.3.20です(決算日は3.31)。
>ところが取締役会での譲渡承認は4/4になっています。
>代金の振込みも4/4です。
>この場合所有権自体は3/20に移動していると考えて宜しいでしょうか?
>(会社は承認していないので、A社長は会社に対しては所有権を主張できないが…)
>質問の背景は、もし3/20に所有権が移転しているとすれば
>売買価格算定の基準が、2015.3.31の決算に基づいて算定したものとなり
>4/4に所有権が移転しているとすれば
>算定基準は2016.3.31の決算に基づいたものとなる…..と言うことです。
>(実は2015.3.31決算ベースの算定価格の方が低いと言う背景もあります)
2 回答
譲渡承認のない株式の譲渡の効力については、
争いがあるところですが、
法律的には、契約当事者(A社長と叔父さん)
間では、合意した時点で効力が生じるが、
譲渡承認がない場合には、会社に対しては、
譲渡の効力が生じないというのが一般的な解釈です(相対的有効説)。
(つまりは、登記のような対抗要件の問題ではなく、
ある一面では有効ですが、ある一面では無効という
考え方です。)
>ところが取締役会での譲渡承認は4/4になっています。
>(会社は承認していないので、A社長は会社に対しては所有権を主張できないが…)
こちらについては、
4月4日に譲渡承認がなされていることから
会社は承認しているが、
3月20日から4月4日の間は、
>(会社は承認していないので、A社長は会社に対しては所有権を主張できないが…)
という趣旨でよろしかったでしょうか。
この前提で回答します。
会社法上の当事者間の売買価格については、
合意した金額となります。
合意した金額について、高いか低いかを
後に評価する際に、当事者の譲渡時か、
譲渡承認時、どちらかという明確なものはないのですが、
前期の決算ベースで判断する(評価する)という
方法を利用する前提ですと、
当事者が合意した際に確定した決算を前提に
金額を算定しているはずだという経験則が
働きますので、
当事者の譲渡時を基準とする方が
合理的であると思われます。
なお、ご質問の趣旨が、
会社が承認をしてくれないため、
会社または買取人の指定などの請求を会社が受けた際の
売買価格算定の基準金額ということですと、
最終的には合意や裁判所への申立てで
価格を決定しますが、
仮に合意がまとまらず、
両者が裁判所への申立てをしなかった場合に
確定される金額は、
会社が、会社または指定買取人による
買取の通知を行う時点での、
一株当たり純資産額となります
(会社法141条1項、142条1項、
同規則25条1項、6項)。
よろしくお願い申し上げます。