国税通則法 税務調査

質問応答記録書の開示請求

永吉先生、教えてください。

以前、質問応答記録書を税理士がいないところで作成、押印されてしまったものにつき、
後で開示請求し、開示された事案を研修で習いました。

当社においても新規のお客様につき、同じ状況が起きているのですが、
質問応答記録書の開示請求は「法的に」正しい手続きであり、
可能なのでしょうか?

なお、国税内部の資料に次のとおり、記載されています。

「質問応答記録書」は、税務職員が納税者などから聴取した内容を記録した書面であり、
課税訴訟の証拠とする場合には、真正に成立したものと推定される公文書です(民事訴訟法228②)。

これを踏まえ、公文書の開示請求ができるものなのかを教えてください。

よろしくお願いします。

http://www.soumu.go.jp/main_sosiki/gyoukan/kanri/jyohokokai/kaiji.html

●●先生

ご質問、ありがとうございます。
弁護士法人ピクト法律事務所の永吉です。

1 ご質問

>当社においても新規のお客様につき、同じ状況が起きているのですが、
>質問応答記録書の開示請求は「法的に」正しい手続きであり、
>可能なのでしょうか?

2 回答

質問応答記録書は、
税務署の職員が税務調査における調査対象者の供述を
録取した書面であることから、
「自己を本人とする保有個人情報」にあたる範囲で
行政機関の保有する個人情報の保護に関する法律12条1項に基づく
開示請求によって、質問応答記録書の開示請求が可能です。

ただ、
相続税や所得税などに関するものであれば、
基本的に質疑応答記録書の内容は、
「自己を本人とする保有個人情報」に該当する
箇所が多いと思いますが、

法人の場合には、「個人」情報ではないため、
法人の立場としては請求できません。

この場合、法人の代表個人が、自分の供述が
記載された質問応答記録書として、
同条に基づき請求することになりますが、

法人に関する部分については、
黒塗りが多く役に立たないことも多いです。

「平成29年6月30日付 質疑応答記録書作成の手引」においても、
質問応答記録書につき、上述の開示請求が行われた場合には、
「なお」書きで、原則的に開示されると記載されています。

以下、該当部分の引用です。
——————
問43 回答者や税理士から質問応答記録書の写しの交付を求められた場合、どの
ように対応すべきか。
(答)
質問応答記録書は、調査担当者と回答者の応答内容を記録し、調査関係書類とするた
めに調査担当者が作成した行政文書であり、回答者や税理士に交付することを目的とし
た行政文書ではないことから、調査時に写しを交付してはならない。
同様に、質問応答記録書を撮影させてはならない。
また、作成途中の質問応答記録書(署名・押印前のもの等)についても、写しを交付
してはならない(撮影させてはならない。)。

なお、個人情報保護法に基づき、回答者等が「質問応答記録書」の開示請求を行った
場合には、原則として、開示されることとなるが、あくまで別手続であるから、上記の
とおり対応する。
——————

なお、情報公開法(行政機関の保有する情報の公開に関する法律)
3条1項に基づく開示請求を行う方法も考えられますが、
質疑応答記録書は、個人情報及び法人その他の団体に
関する情報(同法5条1号、2号)にあたり不開示と
なりますので、こちらを根拠とすることはできません。

よろしくお願い申し上げます。