お世話になります。
簡単な質問になりますが、よろしくお願いします。
会社法423条1項の損害賠償債務は、商法522条ではなく、民法167条1項により、権利行使できるときから10年と理解しています。
(商法旧266条1項5号の損害賠償債務につき判断した判例の存在)
2020年4月1日に施行される債権法改正につき、会社法423条1項の損害賠償債務についても、民法167条改正の影響を受け、
実質的に短期消滅時効(5年)に該当してしまうと理解してもよいのでしょうか。
プラスα
未払残業債務についても2年から5年になると理解してよいでしょうか。
よろしくお願いします。
ご質問、ありがとうございます。
弁護士法人ピクト法律事務所の永吉です。
1 ご質問①〜取締役の会社法423条の損害賠償債務について
>2020年4月1日に施行される債権法改正につき、
>会社法423条1項の損害賠償債務についても、民法167条改正の影響を受け、
>実質的に短期消滅時効(5年)に該当してしまうと理解してもよいのでしょうか。
そもそも商法522条の適用がないというのが
従来の判例の考え方でしたが、
民法改正で、そもそも商法522条自体も廃止されますので、
民法の規律によることになります。
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新民法第166条 債権は、次に掲げる場合には、時効によって消滅する。
一 債権者が権利を行使することができることを知った時から5年間行使
しないとき。
二 権利を行使することができる時から10年間行使しないとき。
2 ……省略……
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これが新しい民法の規律ですが、
売掛金や貸付金であれば、契約上当然に発生
する債務ですので、上記第1号の「知った時」と
評価できるので、5年と考えていただいて
問題ないです。
ただ、会社法423条の損害賠償債務の場合には、
会社が、この「知った時」がいつかは、
任務懈怠の内容により、ケースバイケースかと思います。
上記の第2号で仮に会社が知らないままの場合でも、
これまで通り、10年の時効にかかるという整理となっています。
会員の皆様に配布した
私の書籍の「民事・税務上の時効解釈と実務」でも、
P12〜14にも記載がありますので、
よろしければご覧ください。
2 ご質問②〜未払残業代について
>未払残業債務についても2年から5年になると理解してよいでしょうか。
現状、成立している法律からすると
労働基準法の改正は確定していないので、2年のまま
ということになります。
労働基準法は、民法の特別法として、
民法の規定に優先して適用されます。
したがって、上述の債権法改正による影響はなく、
改正後も賃金債権の消滅時効の期間は変わりません(同書籍P32〜参照)。
ただ、従来から民法改正に合わせて、
5年とすべきだという議論があり、改正民法施行までに
法改正をしようという流れはあります。
一部報道等ではもう確定的というようなニュアンスで語られる
ものも多いですが、改正されるのか、時期はいつか
についても、まだわからないという状況です。
以下のURLにおいて、
上記変更に関する議事録などが公開されていますので、
ご興味があれば、ご覧ください。
https://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/other-roudou_503103.html