お世話になります
状況
被相続人…甲
相続人…子A・子B・子C(配偶者なし)
甲が初代理事長を務め、現在は子Cが理事長に就いている社会福祉法人…Z会
土地X…月極ガレージで毎月一定の不動産収入があります。
ちなみに私の立場は子CおよびZ会の税理士です
甲の公正証書遺言の内容
「土地Xについては、Z会に遺贈する」
この遺言に不満を持った子Bが、勝手に手続きをとって、土地Xの所有権を子A・子B・子Cが1/3ずつの共有で登記し、
「この公正証書遺言は甲が認知症を患ってからのもので、子A・子Cが主導して作成したものなので無効だ」との主張で
子A・子C・Z会を被告として裁判を起こしました。
また、子A・子C・Z会側も、子B側に登記を無効とするよう主張しておりました。
裁判の結果は、子Bの主張は全く認められず、地裁判決・高裁判決・最高裁での棄却を経て、
子Bの敗訴が確定しましたが、3年以上経過してしまいました。
この間、土地Xから生じる収益については子Aが預かっている状況です。
質問
相続開始後、判決確定まで土地Xから生じた賃料はZ会に帰属するのでしょうか?
それとも未分割遺産から生じた賃料という事では法定相続割合に応じて子A・子B・子Cに帰属するのでしょうか?
よろしくお願いいたします
ご質問ありがとうございます。
弁護士法人ピクト法律事務所の永吉です。
1 ご質問と回答の結論
>相続開始後、判決確定まで土地Xから生じた賃料はZ会に帰属するのでしょうか?
>それとも未分割遺産から生じた賃料という事では法定相続割合に応じて子A・子B・子Cに
>帰属するのでしょうか?
相続開始後に生じた土地Xの賃料債権は、
すべてZ会に帰属します。
Z会から、A氏に対して、これまでの賃料を
請求することになります。
2 回答の理由
>裁判の結果は、子Bの主張は全く認められず、地裁判決・高裁判決・最高裁での棄却を経て、
>子Bの敗訴が確定しました
ということですので、甲の公正証書遺言は
初めから有効で、
甲が死亡した時点で、その効力を生じ、
土地Xの所有権は、Z会に帰属しています。
土地から生じる賃料は、
土地所有権者に当然に帰属します(民法206条)
ので、土地Xの賃料債権は、
相続開始以降に生じたものについては、すべてZ会に帰属します。
したがって、
相続開始後に生じた賃料については、
ABCのいずれも取得する権利を有しないので、
Z会としては、A氏に返還を求めれば足ります。
なお、おそらく先の訴訟手続の中で、
解消しているとは思いますが、
>この遺言に不満を持った子Bが、勝手に手続きをとって、
>土地Xの所有権を子A・子B・子Cが1/3ずつの共有で登記し、
この、土地Xの共有登記が、現状も続いているのあれば、
なるべく早く、Z会名義へと変更することをお勧めします。
遺贈による所有権の取得は登記がないと対抗できないため、
ABC(とくにBだと思います)が、土地Xについて、
自身の所有権移転登記を利用して、
第三者に売却し、移転登記をしてしまうと、
第三者に登記が移転した部分につき、
Z会はその第三者に所有権を対抗できず、
反射的に所有権を失うことになりかねないからです。
よろしくお願い申し上げます。