特別受益の訴えと遺言書等の法律関係が良く分からないので
教えて下さい。
例えば、
1 遺言書において、各相続人の取得財産の記載あり
2 相続財産の総額が少ないため、特別受益が生前あったとして、
ある相続人が別の相続人に対して特別受益の有無で争う
といった場合、仮に特別受益があると認められた場合、民法的には
どのような取扱いになるのでしょうか?素人考えだと、以下のような取り扱いになるのか、とも思うのですが。
1 当初の遺言は有効であるものの、遺留分減殺請求のように一部財産を引き渡す
2 当初の遺言はあるものの、相続人が合意していないことになるため、協議が整うまでは未分割となる
3 それ以外
特別受益があることを前提とした解説はネットに多くありますが、特別受益で争う場合の取扱いがよく分かりません。とりわけ、以下のように特別受益のみは裁判で争えないとする解説もあり、どのようになるのか分かり兼ねるところです。
https://www.nagoyasogo-souzoku.com/jueki-and-kiyo/decision/
分かりづらい質問ですいませんが、よろしくお願いいたします。
ご質問ありがとうございます。
弁護士法人ピクト法律事務所の永吉です。
1 ご質問
>特別受益の訴えと遺言書等の法律関係が良く分からないので
>教えて下さい。
>例えば、
>1 遺言書において、各相続人の取得財産の記載あり
>2 相続財産の総額が少ないため、特別受益が生前あったとして、
>ある相続人が別の相続人に対して特別受益の有無で争う
>といった場合、仮に特別受益があると認められた場合、民法的には
>どのような取扱いになるのでしょうか?素人考えだと、以下のような取り扱いになるのか、
>とも思うのですが。
>1 当初の遺言は有効であるものの、遺留分減殺請求のように一部財産を引き渡す
>2 当初の遺言はあるものの、相続人が合意していないことになるため、協議が整うまでは
>未分割となる
>3 それ以外
2 回答
(1)特別受益の争い方について
まず、ある相続人が特別受益を得ていることだけを
確認する判決を求めることはできないとされています。
特別受益は、
①遺産分割対象財産について相続分をどのように計算するか(民法903条)
という問題と
②遺留分侵害額請求の侵害額をどのように計算するか
という問題の中で生じる概念で、
特別受益に基づく請求権?が
認められるものではありません。
そして、相続人の特別受益の有無を確定するだけでは、
結局遺産分割や遺留分侵害額請求の最終的な解決に
ならないため、特別受益を確認する判決はできないと
されているのです。
そのため、特別受益の有無や額は、
遺産分割調停や、遺留分侵害額請求訴訟において
争うことになります。
これが、特別受益だけでは争えないということの趣旨です。
(2)ご質問の想定を前提とした取り扱い
前提として、
>1 遺言書において、各相続人の取得財産の記載あり
の趣旨は、相続時の被相続人の財産について
すべての財産の帰属が、「相続させる旨」の遺言等
により確定している(その権利が相続とともに、当然に移転
している)ということかと思います。以下、その前提で回答します。
●①遺産分割対象財産について相続分をどのように計算するか(民法903条)
との関係
遺産分割は、遺産共有となっている財産を
どのように分配するのかを決めるものですので、
相続人の全員の合意がない限り、
上記の遺言を前提とすると遺産分割対象財産はない
ということになります。
そうすると、結局のところ、
①遺産分割対象財産について相続分を
どのように計算するか(民法903条)という問題
は生じません。
つまり、遺言により、財産の帰属が確定しているので、
民法903条における相続分の計算というものが
でてきませんので、
あとは、遺留分の問題となります。
●②遺留分侵害額請求の侵害額をどのように計算するかとの関係
上記のように遺言や生前贈与で財産の帰属者が確定
していたとしても、
相続人には、最低保障ともいえる遺留分が認められます。
そして、その計算方法として、特別受益相当の財産額が、
計算の対象となりますので、
遺留分を侵害しているということであれば、
遺留分侵害額請求をするということになります。
>1 当初の遺言は有効であるものの、遺留分減殺請求のように一部財産を引き渡す
>2 当初の遺言はあるものの、相続人が合意していないことになるため、協議が整うまでは
>未分割となる
>3 それ以外
ですので、この中でいうと
「3 それ以外」となると思います。
よろしくお願い申し上げます。