お世話になっております。
<前提事項>
飲食店を展開するB法人(代表取締役が100%出資)が、単独株式移転により持株会社(A法人)を設立し、A法人の完全子法人になる予定です。
その際、A法人はB法人の管理業務全般(経理、総務、ワイン輸入業務等)を行う予定ですので
B法人は、その業務についてA法人を相手方とする業務委託費を計上したいと考えております。
<ご質問>
・B法人がA法人に支払う業務委託費が、税務上否認されないようにするために、最低限しておくべきこと(例えば、契約書に織り込んだ方がいい項目や契約以外にした方がいいこと)をご教示頂きたいです。
・また、業務委託費の金額について、合理的な計算方法がありましたらご教示頂きたいです。
何卒、よろしくお願い致します。
ご質問ありがとうございます。
弁護士法人ピクト法律事務所の永吉です。
1 ご質問①〜業務委託費として認められるための対策
>・B法人がA法人に支払う業務委託費が、
>税務上否認されないようにするために、
>最低限しておくべきこと
>(例えば、契約書に織り込んだ方がいい項目や契約以外にした方がいいこと)をご教示頂き
>たいです。
親子会社間の業務委託取引が
否認されないかについては、
結局のところ、
①業務委託の実態があるか、
②その対価が適正か(質問②参照)
の2点がポイントになります。
契約書があれば良いというものでは
ありませんが、
これまでの私が経験している
不服申立や税務訴訟からすると、
契約書で行う業務が明確にされており、
その契約書記載通りの業務実態があるのか
というところがポイントになっている
かと思います。
ですので、業務委託契約書の委託業務を
できる限り細く定めた方が良いとは思います。
(もちろん、限界があるので、できる限り
ということになるのでしょうが。)
そして、できる限り細かく定めた業務を
実際にA法人(Aが給与を支払っている
従業員が行っている等)の実態がある
のであれば、否認リスクは小さくなるでしょう。
2 ご質問②〜業務委託費の合理的な計算方法
こちらについては、
答えがあるわけではありませんが、証拠を
残すという観点からは以下が考えられます。
(1)第三者との取引を基準とする
この業務を本当に第三者に外注(例えば、経理であれば、
記帳代行会社または税理士の先生)
した際の見積りをもらって、その金額を
根拠とするという方法は考えられると思います。
ただ、実際には総務やワイン輸入業務などについては、
この見積りが取れるのか?という問題はあります。
どこまでリスクをヘッジするかになりますが、
見積書をもらえる業務については、
見積書をとって保存しておき、
見積書にある業務でも、この金額がかかるので、
それ以外を含むこの業務委託費をこの金額で設定している
等説明できれば、一定の合理性はあります。
(2)実費等をもとに判断する
実際に対象業務をA法人が行う際に、
必要となる人件費や場所代(賃料等)を考慮して、
業務委託費を決めるという方法です。
もちろん、Aがその業務を行うための
費用(実費)に近ければ
近いほどリスクは低くなりますが、
別会社として委託を受けて業務を
行うわけなので、この実費を超える
請求だから否認されるというわけでは
ありません。
リスクを小さくするという視点からは、
どのような理由で、実費を超える金額を
算定したのかという合理的理由を
説明できるようにしておくというところです。
この辺りは、B法人単体ではできない理由や
業務内容からしての付加価値等、個別事情に
よるところです。
裁判や不服審査まで行くようなケースですと、
その合理性を厳密に審査すると思いますが、
調査段階で考えると、一定の説明ができれば
更正されるリスクはかなり低くなるとは思います。
(もちろん、業務実態があることが前提です。)
このあたりは、事実評価の問題であり、
水ものといえば水ものですので、
税理士の先生のお立場からは、
このような取引の場合、一定程度
否認されるリスクがあることをお伝え
された上で、依頼者様にご意思決定
いただくという形になるでしょう。
よろしくお願い申し上げます。