お世話になります。
以下のケースにおいて、社外監査役の要件は充足しますでしょうか?
将来のIPOを検討している会社の事例であり、会社法のほか、可能でしたら、東証の審査基準からのご意見も頂ければ幸甚です。
1.IPO準備会社A社の顧問として、会計・税務・財務(資本政策等)のアドバイスをしている税理士・公認会計士Xが監査役になるケース
(少なくとも監査役就任と同時に上記顧問契約を解除する必要がある、又は、IPO直前期の前に顧問契約を解除しておけばOK等顧問契約の解除のタイミングで結論が変わる場合には合わせてご教示頂ければ幸いです)
2.税理士Yは、現在IPO準備会社B社の社外監査役(要件充足)である(過去・現在、B社の顧問等はしておらず、監査役報酬のみ受領)。
この度、税理士Yは、B社の取締役であるZ(代表権はないが、持株比率(8%)第3位の株主)からZ自身の所得税の確定申告を依頼された(B社には当該事実は知らせていない)。
取締役Zの確定申告をすることにより、税理士YはB社の社外監査役の要件を充たさないことになるか?
(税理士報酬は、不相当に高額ではない前提)
よろしくお願いいたします。
ご質問、ありがとうございます。
弁護士法人ピクト法律事務所の永吉です。
1 ご質問①
>1.IPO準備会社A社の顧問として、会計・税務・財務(資本政策等)のアドバイスをしてい
>る税理士・公認会計士Xが監査役になるケース
>(少なくとも監査役就任と同時に上記顧問契約を解除する必要がある、又は、IPO直前期の前
>に顧問契約を解除しておけばOK等顧問契約の解除のタイミングで結論が変わる場合には合わ
>せてご教示頂ければ幸いです)
(1)会社法上の問題
監査役の独立性の担保という観点からは、
会計・税務・財務(資本政策等)のアドバイスを
しているXが監査役に就任できなのではないかという議論はありますが、
そうではないという解釈が会社法上は一般的です。
(2)上場基準について
上場まで考えると、どのタイミングでという
のは、実質的には難しい(ケースバイケース)問題です。
こちらは独立役員該当性の問題として
とらえる場合、
詳細な上場基準の引用は、かなり細かく
なるため避けますが、
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
b 当該会社から役員報酬以外に多額の金銭その他の財産を得ているコンサルタント、会計専門家又は法律専門家(当該財産を得ている者が法人、組合等の団体である場合は、当該団体に所属する者をいう。)
c 最近において次の(a)から(c)までのいずれかに該当していた者
(a) a又はbに掲げる者
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
等が考慮されます。
この「多額」ですが、現状の上場企業が
各自基準を設けておりますが、
個人として年間1000万円以上と
している会社が多いです。
この辺りは、1つの基準として考えて
も良いと思います。
独立性を疑われるという意味では、
できれば避けた方が望ましいですし、
少なくとも直前期には、顧問契約を
解除した方が良いと思いますが、
上場審査の段階で、過去に利害関係を有する者が、
監査役になっていたからと
いって、上場審査が通らないかというとそうでは
ないでしょう(そのような事案も知っています。)。
結局のところ、今の事業ステージによる
ところかと思いますし、財務状況や業務内容の健全性
がしっかり説明できるのであれば、
そこまで、重大な問題というわけでは
ないと思います(これがあったから上場できる
できないの問題ではないかと)。
それよりも、なぜその人が監査役に適任と
考えたのかという理由の方が重要だと思います。
もちろん、他の要素から悩ましい場合に、
理由にされることはありますし、
説明を求められることはあるのでしょうが、
しっかりと説明ができれば、そこで不利益に
なるとは個人的にはあまり思いません。
2 ご質問②〜
>2.税理士Yは、現在IPO準備会社B社の社外監査役(要件充足)である(過去・現在、B社の>顧問等はしておらず、監査役報酬のみ受領)。
>この度、税理士Yは、B社の取締役であるZ(代表権はないが、持株比率(8%)第3位の株
>主)からZ自身の所得税の確定申告を依頼された(B社には当該事実は知らせていない)。
>取締役Zの確定申告をすることにより、税理士YはB社の社外監査役の要件を充たさないこと>になるか?
>(税理士報酬は、不相当に高額ではない前提)
(1)会社法
これによって、法律上、社外取締役の要件を満たさない
ということはありません。あくまでも、会社には関係のない話です。
(2)上場基準等
あとは、仮に表にでた場合(でることはあまり想定できませんが)
取締役を監督する立場の者(監査役)が利害関係を持っていた
という意味で、倫理的に問題だと言われる可能性がないわけでは
ないですが、実際にしっかりと監査役に任務を果たせていれば
法的に問題になることはないでしょうし、支配株主ではないので、
このあたりも大きな問題になるわけではないと思います。
よろしくお願い申し上げます。
ご回答ありがとうございます。
(ご回答を頂いてから間が空いてしまい申し訳ありません)
質問①の上場基準についてですが、ケースバイケースである旨、良く理解できました。
先生のご回答を整理しますと、
(直前前期まで)
・「会計・財務・税務の顧問(コンサルタント)」と「監査役」を兼務
・両者の報酬合計年間500万円
(直前期)
・社外監査役(非常勤)のみ(常勤監査役は別の者が就任)
ということであれば、先生の感覚としては、問題になることはあまりないだろうというレベル感でしょうか?
度々申し訳ありません。
よろしくお願いいたします。
ご質問ありがとうございます。
弁護士法人ピクト法律事務所の永吉です。
1 ご質問
>(直前前期まで)
>・「会計・財務・税務の顧問(コンサルタント)」と「監査役」を兼務
>・両者の報酬合計年間500万円
>(直前期)
>・社外監査役(非常勤)のみ(常勤監査役は別の者が就任)
>ということであれば、先生の感覚としては、問題になることはあまりないだろうというレベ
>ル感でしょうか?
2 回答
そうですね。
ご指摘の通り、ケースバイケースではありますし、
会社と話し合って決定すべきだとは思いますが、
私の感覚値では、そのように思います。
よろしくお願い申し上げます。