不動産 民法 借地借家法

借地権のみの売買

永吉先生、お世話になっております。

現在、相続の案件にて被相続人Aが筆頭株主(会長職、代表権無)の
同族法人Bとの不動産売買で下記のことをご質問させていただきたく
メール致しました。

(平成30年12月ごろ)
土地 被相続人A 購入
建物 新規建物 被相続人Aと同族会社Bと共有名義で取得

その後、法人Bが被相続人Aよりこの土地の店舗敷地部分(法人Bの持分に相当する)
の「借地権のみ売買契約」(平成31年2月)で取得したと処理(法人Bの会計処理)が
なされております。
このような場合「借地権」のみ(借地権付き建物でなく 今回のように建物を別業者で
取得し権利のみ)と売買は有効でしょうか?

宜しくお願い申し上げます。

ご質問、ありがとうございます。
弁護士法人ピクト法律事務所の永吉です。

1 ご質問

>(平成30年12月ごろ)
> 土地 被相続人A 購入
> 建物 新規建物 被相続人Aと同族会社Bと共有名義で取得

>その後、法人Bが被相続人Aよりこの土地の店舗敷地部分(法人Bの持分に相当する)
>の「借地権のみ売買契約」(平成31年2月)で取得したと処理(法人Bの会計処理)が
>なされております。
> このような場合「借地権」のみ(借地権付き建物でなく 今回のように建物を別業者で
>取得し権利のみ)と売買は有効でしょうか?

2 回答

(1)借地権の譲渡(売買)の可否

まず、民法上、借地権のみの譲渡も
認められます。

厳密には、土地の賃借人の地位の譲渡という
ことになります。

(2)今回の事例について

ただし、今回の事例は、
Aが土地の所有者である点に特殊性があります。

本来、土地の所有者が賃借権を自らに設定する
と、民法の混同(権利義務者が同一)
により借地権は即座に消滅します。
(なので、設定できない。)

しかし、ご存知の通り、
分譲マンションに自ら住む等
その借地権を他の者と共に有することに
なるときに限り、自ら借地権を有するとされています。
(借地借家法15条)

おそらく、
・新規建物がAとBの共有となっていること
・この土地の店舗敷地部分(法人Bの持分に相当する)
の「借地権」

ということからすると、売買というよりは、
土地上にAとBの建物の持分割合に応じた
借地権を各々設定したということになるのでは
ないかと予想されます。

つまり、「売買」と表現されていても、
これは「借地権の設定」と評価されるものなのでは
ないかと思います。

この場合、この契約で支払われた金額は、
売買の対価というよりは、借地権設定に対する権利金
的な性質を有するものかと思われます。

ただ、結局のところ、この「売買契約」
とされているものが、実際にはどのように
評価される内容の契約なのかによるところなので、
契約書の記載や建物の形状などから、
見てみないと正確なところはわかりません。
(理論上は、一部単独の賃貸借と一部単独の使用貸借
というようなこともあり得ることはありえますので)

もし、より正確にということでしたら、
契約書などを拝見してアドバイスすることも
可能ですので、会員様の無料相談をご利用ください。

よろしくお願い申し上げます。