相続 遺言 遺産分割

遺言書の記載とその解釈

永吉先生、いつもありがとうございます。
●●です。

まだ相続はおきてはいないですが、遺言書に記載のある内容の取扱いについて
教えてください。

質問1

第10条に
遺言者は、遺言者の有する現金及び金融資産を次の者に次のとおり相続させる。
Aに金****万円
Bに金****万円
Cに金****万円
Dに金****万円
と記載がありましたが、
相続が起きた時は、法律的にはどうなるのでしょうか?
ABCDはすべて相続人です。
ただし、腹違いの子供もいるので将来、もめるかもしれません。

金額がずばり記載されているんですが、ぴったりとなることはありえないと思われます。

第12条に
遺言書は、第1条から第11条までに記載した財産を除いた遺言者の有する一切の財産を、
前期Aに相続させる。
とその他の記載はあります。

1.預金と株式などが相続開始時に遺言書に記載されていた金額より多い場合
2.ありえないですがぴったりの場合
3.預金と株式などが相続開始時に遺言書に記載されていた金額より少ない場合

質問2
現金及び金融資産を次の者に次のとおり相続させる。

文章は、金額の記載はあるけど、どの財産とは特定していないため、
特定遺贈とはならなくて、金額の記載はあるけど、包括遺贈みたいになり、
話し合いでもらう財産を決めて、遺産分割協議書の作成が必要になるのでしょうか?

現状にてまだご健在なので、変更したほうがいいならアドバイスをください。

●●先生

ご質問ありがとうございます。
弁護士法人ピクト法律事務所の永吉です。

1 ご質問①~遺言の解釈~

>遺言者は、遺言者の有する現金及び金融資産を次の者に次のとおり相続させる。
>Aに金****万円
>Bに金****万円
>Cに金****万円
>Dに金****万円
>と記載がありましたが、
>相続が起きた時は、法律的にはどうなるのでしょうか?

第10条のような記載がある場合に、遺言の内容として、
どのように解釈されるかという問題です。

他の財産についての他の条項等により、
解釈に幅がでると思われます。

① 当該具体的な金額を各人が相続する
② 当該金額に応じて案分した額で各人が相続する

の2パターンがあると考えられます。

>1.預金と株式などが相続開始時に遺言書に記載されていた金額より多い場合

①であれば、残余額については12条で捕捉されることになるでしょう。
②であれば、あくまでも10条の範囲で現金金融資産は処理されます。

>2 ありえないですがぴったりの場合

いずれの解釈でも疑義は出ません。

>3.預金と株式などが相続開始時に遺言書に記載されていた金額より少ない場合

①で解釈すると、だれがいくら取得できるのかが一義的に明らかではありません。
(Aから順になくなるまで割り当てるのかなど)

②で解釈すると、現金・金融資産全体について、
案分で計算したうえで割り当てることになります。

現金金融資産について、変動があることは当然ですので、
10条を増減いずれの場合についても統一的に解釈される
可能性が高く、②の解釈が取られる可能性が
比較的高いでしょう。

ただし、解釈が不明確ですので、
特に
>腹違いの子供もいるので将来、もめるかもしれません。
ということであれば、

その趣旨を明らかにした形で記載し直した方が良いでしょう。

なお、上記の「現金」が預金をさしている場合や
金融資産が株式等である場合には、
本来、これらは相続人の共有財産になりますので、
金額でわけられるものではありません。

上記記載でも、合理的な意思解釈として、
預金や金融資産を現金化した上で、上記の通り
分ける(分け方が①なのか②なのかは別として)
という換価清算型の相続させる旨の遺言だと
解釈できるかと思いますが、

作り直すということであれば、このあたりも
明確にした方が良いでしょう。

2 ご質問②

>文章は、金額の記載はあるけど、どの財産とは特定していないため、
>特定遺贈とはならなくて、金額の記載はあるけど、包括遺贈みたいになり、
>話し合いでもらう財産を決めて、遺産分割協議書の作成が必要になるのでしょうか?

まず、相続人への承継の場合で、
「遺贈」という言葉が使われていないので、
特定遺贈や包括遺贈ということはないでしょう。

そして、上記通り、現金が預金をさしていたり、
金融資産が株式等の場合には、

換価清算型の相続させる旨の遺言となり、
あらためて遺産分割協議書の作成は不要かと思います。

ただし、実際に金融資産等を相続人全員で売却する
というのは、困難だと思いますので、

遺言執行者の指定をしておき、遺言執行者が
換価し、分配する形とした方が良いでしょう。

よろしくお願い申し上げます。