初めて質問させていただきます。
税理士の●●です、宜しくお願いいたします。
【質問内容】
代表取締役である父が未成年の子(5歳)に資本金500万円、5月締7月申告現在債務超過の
法人の株式(普通株式)の全部を債務超過であるうちに贈与してしまいたいが可能か?とのこと
(取締役1人の法人)
今回の場合は株式全部での質問ですが5歳の子(あるいは未成年)に50%超の株式を所有させることに
問題は無いのでしょうか?
また問題ないとした場合に株主総会開催(議事録作成含む)にあたって注意すべきことは
どのようなことが考えられるでしょうか?
●●
ご質問、ありがとうございます。
弁護士法人ピクト法律事務所の永吉です。
1 ご質問①~未成年者への株式の贈与について
>代表取締役である父が未成年の子(5歳)に資本金500万円、
>5月締7月申告現在債務超過の法人の株式(普通株式)の全部を
>債務超過であるうちに贈与してしまいたいが可能か?
未成年者への贈与の方法ですが、
5歳ということですので、
親権者2名(父と母がいれば)
が子の法定代理人として、
贈与契約書を締結すればよいでしょう。
法的な理由は、当メールの末尾に
私のメールマガジンを引用します。
なお、今回は親権者である父自身が贈与する
ということかと思いますが、
この点についても、子に利益を与えるだけの贈与
であれば、利益相反とはならないと解されています。
なお、
☆【特典】業務書類雛形等のダウンロードできる会員様マイページ
https://mm.jcity.com/mypage/login/pctlaw
にも、未成年者への贈与のひな型もありますので、
ご参考になさってください。
2 ご質問②~問題点
>今回の場合は株式全部での質問ですが5歳の子(あるいは未成年)に50%超の株式を所有
>させることに問題は無いのでしょうか?
親権者の「財産管理」(民法824条)の
一内容として、議決権行使が、法定代理人にも認められる
というのが、現状一般的な見解となっています
ので、
法律で特段禁止されるものでは
ありませんが、
子が成人した際等に子が議決権を行使すれば、
父が役員を解任されたり、
役員報酬を子が決めることができるという状況に
なります(親の収入を子が決めるという状況)
ので、この会社を長期的に経営していくこと
を考えるとあまり良い方法ではないという点はあります。
3 ご質問③~議決権行使の注意点
5歳ということですと、
現実的に株主総会に出席し議決権を行使することは、
不可能かと思います。
親権者の代理行使ということになると思います。
「なお、株主【子の名前】の議決権行使は、
【子の名前】の法定代理人である【父の名前】・【母の名前】が
代理した。」
とご記載いただければと思います。
一応、
管理実態が父が株主であった際と変わらない
として、名義株だとされるリスクがないわけでは
ないので、
上記の贈与契約書とこの議事録の記載により
あくまでも父は、子の代理人として議決権行使
しているに過ぎない点を明確にしておいた方
が良いでしょう。
以下、「1」に関するメールマガジンの引用です。
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未成年者への贈与契約の2つの締結方法
税理士のための法律メールマガジン
2018年2月9日(金)
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
●●さま
おはようございます。
弁護士法人ピクト法律事務所の永吉です。
税理士の先生から多くご質問を受ける事項
として、贈与契約があります。
特に、未成年への贈与の場合で、
年齢が1桁など判断能力が十分でない
ケースでご相談されることが多いです。
つまりは、幼年の未成年には、
いわゆる
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
「意思能力」
・・・自分の行為の結果を判断することが
できる能力(契約の意味を理解できる能力)
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
がないため、
契約自体ができるのかという
質問になるかと思います。
このご相談には、まず贈与契約の締結
方法には、
1 親権者が、未成年を代理して契約を締結する
(法律行為をする)方法
2 未成年者自身が、贈与契約を締結する
(法律行為をする)方法
という2つがあるという
点を押させていただければと思います。
以下、各方法を解説します。
1 親権者が、未成年者を代理して契約を締結する方法
まず、親権者が未成年者を代理して
契約を締結する場合、
あくまでも、贈与契約という法律行為をするのは、
未成年者ではなく、親権者になります。
そうすると、「意思能力」は、そもそも法律行為を
行うために必要な能力になりますが、
未成年者は、法律行為を行っているわけでは
ないため、
この方法であれば、未成年者が幼いことは
契約の成立の妨げにはなりません。
なお、この方法は、父母が婚姻中の場合は、
原則として父母が共同して行うことになります
(民法818条3項)。
2 未成年者自身が、贈与契約を締結する方法
未成年者自身が法律行為を行う場合には、
「意思能力」に加えて、「行為能力」
というものも問題になります。以下
詳しく見ていきます。
(1)意思能力
この方法をとる場合には、未成年者自身が
法律行為を行うことになるため、未成年者
自身に意思能力が必要ということになります。
意思能力が未成年者に備わっていない法律行為
は無効となりますので、贈与契約が無効となる
おそれがあります。
では、どの程度で、意思能力があると判断される
かというと、未成年者の意思能力の有無は、
年齢で一律に決まるものではなく、
契約内容の複雑さや、金額の大きさ、
契約により未成年者に不利益があるか、
など、様々な要素を考慮して判断されます。
(もちろん、個人の能力によるところもあります。)
ただし、一般的な年齢の目安でいえば、
7歳くらいから徐々に意思能力が備わりだす
と言われています。
負担付ではない単純な贈与で、
、未成年者に不利益がない
(くれるからもらったという程度の内容)
ということであれば、
契約類型上は、意思能力が認められやすいですし、
7歳で意思能力が認められた裁判例などもあります
ので、
このぐらいの年齢を目安にしていただくという
ところかと思います。
(2)行為能力
行為能力とは、単独で法律行為を有効に行う
ことができる能力、というように説明されます。
わかったようでわからない説明ですが、
要は、「未成年者」や「成年被後見人」
など、各取引ごとに「意思能力」が認められるか
どうかは厳密には、わからないケースが多いので
制度として、このような方々による
単独の法律行為は取消すことができる
ようにしましょうというものです。
そして、未成年者自身が法律行為を
行う場合には、
民法5条1項本文で法定代理人(親権者)
の同意が必要とされています。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
(未成年者の法律行為)
第5条 未成年者が法律行為をするには、
その法定代理人の同意を得なければならない。
ただし、単に権利を得、又は義務を免れる
法律行為については、この限りでない。
2 ~以下省略~
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
しかし、民法第5条1項の「ただし」以下を
見ていただきたいのですが、
「単に権利を得~る法律行為については
この限りでない。」とされています。
未成年者への単純贈与の場合には、
これに当たりますので、意思能力
さえ備わっていれば、親権者の同意は
不要ということになります。
3 まとめ
以上、未成年者への贈与契約の
締結方法としては、2つの方法が
あります。
「2」の方法では、未成年者に
意思能力があるかどうかという点に
事実認定が入るため、一定のリスクがある
関係で、
「1」の方法をとることが最も安全です。
ただし、家庭環境などの事情によっては、
「1」の方法をとることが難しいケースも
ありますので、その際は、「2」の方法
について検討するという流れになるでしょう。