当社が顧問をしている税理士から質問を受けたので、
教えてください。
本MLは会員税理士の顧問先の法律相談と理解しているので、
私の質問の規約の対象内と考えました。
A支部で登録をしている甲税理士の仕事を
B支部で登録している乙税理士が
甲税理士の事務所内で手伝います(業務委託契約)。
手伝う内容は
(1)記帳代行、若しくは、入力データのチェック
または
(2)上記作業だけでなく、申告書の作成も含む
という2点で検討しているとのことです。
この場合、(1)だけであれば、
税理士法上の問題はないと理解しています。
ただし、(2)も行うとなると、
乙税理士は甲税理士の事務所内で行っているので、
税理士法違反となるでしょうか?
税理士法に定める業務を行うのに、
登録支部に紐づく場所の限定はないと理解していますので、
守秘義務に関する確認さえとれば、
甲税理士、乙税理士ともに問題ないと考えますが、
いかがでしょうか?
よろしくお願い致します。
ご質問、ありがとうございます。
弁護士法人ピクト法律事務所の永吉です。
なお、ご質問の範囲については、
末尾に記載します。
1 ご質問
>乙税理士は甲税理士の事務所内で行っているので、
>税理士法違反となるでしょうか?
>税理士法に定める業務を行うのに、
>登録支部に紐づく場所の限定はないと理解していますので、
>守秘義務に関する確認さえとれば、
>甲税理士、乙税理士ともに問題ないと考えますが、
>いかがでしょうか?
2 回答
まずは、税理士法への抵触についてと
懲戒の現実論を分けて回答します。
(1)2箇所事務所の禁止への抵触について
まず、その他の場所で開業をしている
乙税理士が、他の開業税理士(法人含む)
で業務を行うことについては、
2箇所事務所の禁止(税理士法40条3項)
に抵触するおそれがあります。
2箇所事務所の禁止の趣旨の1つとして、
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
税理士業務を行う事務所を1か所に限定することで
依頼者との法律関係を明確にすること
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
が挙げられますので、条文上の
甲の税理士事務所が乙の「税理士事務所」にも
該当するのかという点の認定は、
この点が重視されるでしょう。
実際には、
乙がその場所を使用している頻度(週1で手伝いに
いく程度なのか、基本的に甲事務所ので業務を
行うのか等)や名刺への住所記載、お客様の対応を
どこで行っているのか、などの事情から判断
されることになります。
特に甲・乙のお客様に対して、
乙が甲の事務所で働く税理士
という印象を与えるような働き方をしていると
抵触していると判断されるおそれが強いでしょう。
(2)署名・押印義務違反
こちらについては、これまでの税理士業界では
行なわれていますので、現実的に問題視されるかは別として、
税理士が、税務書類を作成した場合には、
実際に作成した税理士は、
税務書類に署名・押印する義務を負います
(税理士法33条2項)。
これは、税務の専門家として、
お客様等との関係性において、
誰が作成したのかを明確にするという趣旨の
公的な規制になります。
ですので、厳密な法解釈としては、
開業税理士(乙)が他の開業税理士(甲)
のお客様の申告書等の税務書類を作成した場合には、
乙も署名等をしなければならないことになります。
対応としては、乙は共同受任や復代理人に
なること等の対応が本来的には必要です。
ただし、この点についての
現状としては、
これをサービスとする大手税理士法人も
ありますし、これまでも行われてきた
ところですので、現実的に問題となる
おそれ自体は低いかと思います。
(3)懲戒について
懲戒については、当MLでも
これまで申し上げている通り、裁量処分となり、
違法であるからといって必ず
懲戒をされるわけではありません。
積極的におすすめすることはできませんが、
統計上、上記理由のみでは懲戒まではされない
ケースがほとんどではあると思います。
(4)当MLの質問範囲について
>当社が顧問をしている税理士から質問を受けたので、
>教えてください。
>本MLは会員税理士の顧問先の法律相談と理解しているので、
>私の質問の規約の対象内と考えました。
確かに形式的には、現状の規約等ですと、
そのご理解で問題ございません。
ただ、あまり限定等はしなくないのですが、
そのような方法を真正面から認めてしまうと
弊社へ有料で会員になっている税理士先生と
先生の顧問先の税理士の方との間で、不公平が生じて
しまいますので、弊社のサービスのあり方として
問題があるように思います。
(もちろん、御社と外注税理士さんとの関係の相談で
あれば、問題はないです。)
今後、規約等の改定等を検討したいと思います。
よろしくお願い申し上げます。