税理士法 税理士賠償責任

顧問契約の解除

永吉先生

いつも大変お世話になっております。税理士の●●です。

【前提】

お客様(9月決算法人、年1回)と以下の顧問契約書(一部抜粋)を
交わしています。

「第9条 契約期間及び解除
本契約期間は、受任期間から平成31年12月31日までとする。ただし、
同期間終了の1月前までに、甲乙いずれか一方から相手方に対し、
本契約を延長しないという旨の意思表示がない限り、自動的に1年間
延長されるものとし、以後もその例による。
また、請求書発行後6月経過しても支払がないときは、顧問契約は自
動的に解除されるものとする。」

お客様は経営が苦しく、前期の顧問料の一部支払いが滞っています。
去年の11月に請求書を出した後、今年の2月と5月に3万円づつ入金
がありました。残りは約8万円です。

【質問】

貸倒れる可能性が高いので、9月決算前に顧問契約を解除したいと考
えています。
契約書の「6月経過しても支払いがないとき」は、全額の支払がないとき
のつもりでしたが、お客様はそういうふうには理解していないと思います。

11月の請求書発行後6月を経過しても全額の入金がないことを理由に
契約を解除することは可能でしょうか。

よろしくお願いいたします。

●●先生

ご質問、ありがとうございます。
弁護士法人ピクト法律事務所の永吉です。

1 ご質問

>貸倒れる可能性が高いので、9月決算前に顧問契約を解除したいと考
>えています。
>契約書の「6月経過しても支払いがないとき」は、全額の支払がないとき
>のつもりでしたが、お客様はそういうふうには理解していないと思います。

>11月の請求書発行後6月を経過しても全額の入金がないことを理由に
>契約を解除することは可能でしょうか。

2 回答

(1)債務不履行による解除について

>「請求書発行後6月経過しても支払がないときは、顧問契約は自
>動的に解除されるものとする。」

と契約書に記載があるということですが、
この条項の解釈としては、6月経過の支払いが
ない場合には、当然に契約が終了することを定める
ものであり、

一般的な債務不履行による解除を制限するものでは
ないと考えられます。

「全額の入金がないこと」を理由とするかは
さておき、

昨年の11月の請求書に対して、半分以下の入金しか
されていないということですと、

民法541条に基づき、
相当期間(1~2週間程度)を定めて、
その期間内に支払うように通知した上で(催告)、
それでも残額の支払いがなければ、
解除をすることができると考えられます。

ただし、期間内に支払いがある場合には、
この民法541条を根拠とすると解除できなくなる
というデメリットはあります。

(2)委任契約の解除について

原則として、委任契約は、いつでも当事者が
解除することができます(民法651条第1項)。

上記の契約書の記載は、この解除方法を制限するものでも
ないと考えられます。

ただし、こちらの解除については、
相手方に不利な時期に解除をし、損害を
生じさせた場合には、
損害賠償責任を負うとされています。

しかし、9月決算とすると、
決算・申告まで、まだ時間的な猶予がありますので、
「不利な時期」とは判断されない可能性が高いです。

(3)まとめ

過去の対価を払ってもらえれば、続けても良い
と考えるのか?それとも過去の対価を払ってもらった
としても、契約を終了させたいのかにより、
両者を使い分けることになるかと思います。

なお、関係性にもよるところかと思いますが、
金銭の支払いがないため、解約させて欲しいと
伝えて、了承がもらえるのであれば、
その方法(合意解約)が一番良いとは思います。

よろしくお願い申し上げます。