会社法

取締役会書面決議による監査役の異議の対象

永吉先生

お世話になります。

いわゆる取締役会書面決議の根拠条文である会社法370条に「監査役設置会社にあっては、監査役が当該提案について異議を述べたときを除く。」という規定があります。

ここでいう「監査役が当該提案について異議を述べたとき」とは、以下のいずれをいうのでしょうか?

①決議の対象となる議案(例えば、重要な借入の実行についての議案)そのものについての異議を述べたとき(監査役として当該借入実行に賛同できない場合)
②(当該議案の是非はともかく)書面決議とすることに異議を述べたとき(例えば、監査役として議案自体の是非は判断できないが、取締役会を開催して議論をして決定すべきと考える場合)

実務上いずれの解釈でも大差はないと思われ、お手数おかけして申し訳ありませんが、念のため、法律的にはいずれの趣旨なのかをご教示頂ければ幸いです。

よろしくお願いいたします。

●●先生

ご質問、ありがとうございます。
弁護士法人ピクト法律事務所の永吉です。

1 ご質問及び回答の結論

>いわゆる取締役会書面決議の根拠条文である会社法370条に「監査役設置会社にあって
>は、監査役が当該提案について異議を述べたときを除く。」という規定があります。
>ここでいう「監査役が当該提案について異議を述べたとき」とは、以下のいずれをいうの
>でしょうか?

>①決議の対象となる議案(例えば、重要な借入の実行についての議案)そのものについて
>の異議を述べたとき(監査役として当該借入実行に賛同できない場合)
>②(当該議案の是非はともかく)書面決議とすることに異議を述べたとき(例えば、監査
>役として議案自体の是非は判断できないが、取締役会を開催して議論をして決定すべき
>と考える場合)

監査役は、①及び②の両ケースにつき、
異議を述べることができます。

2 回答の理由

「当該提案について」異議を述べたとき
という文言から解釈して、
370条が想定しているのは、一次的には、
①のケース(決議の対象となる議案に異議がある場合)です。

したがって、①のケースについて、
監査役は異議を述べることができます。

また、賛成・反対の結論は措くとしても、
議論のプロセスが重要ですし、
慎重な議論を経なければ、賛成・反対の意見を
決めることもできないというケースもある
ことから、監査役の監督責任の履行を担保するため、

書面決議ではなく、取締役会を実際に開催して
議論すべきと考える場合にも、監査役は、
370条にいう異議を述べることができると
解されています。

したがって、②のケースにおいても、
監査役は異議を述べることができます。

よろしくお願い申し上げます。