いつもお世話になっております。
税理士の●●です。
以下の点について教えて頂ければと思います。
租税特別措置法第37条の12の2第10項では、「第五項の規定の適用がある場合における国税通則法の適用については、…」と規定されています。
また租税特別措置法第37条の12の2第5項では、「…その年の前年以前三年内の各年において生じた上場株式等に係る譲渡損失の金額
(この項の規定の適用を受けて前年以前において控除されたものを除く。)を有する場合には…」と規定されています。
この「国税通則法の適用については…」という文言は更正の請求や修正申告にもかかってくるかと思います。
1.これらの規定を設けている趣旨を教えて頂けますか。(その年の前年以前三年内の各年において生じた上場株式等に係る譲渡損失の金額になぜ限定しているのか。)
2.「本年分の上場株式等に係る譲渡損失の金額」に誤りがある場合にはどのような取り扱いになりますか。
3.これらの規定が適用され国税通則法(修正申告や更正の請求)が適用される範囲は、上場株式等に関する申告書への記載事項全てになるのか、
あるいは上場株式等に係る譲渡損失の金額に限定されますか。
ご質問、ありがとうございます。
弁護士法人ピクト法律事務所の永吉です。
1 ご質問①〜3年限定の趣旨〜
>1.これらの規定を設けている趣旨を教えて頂けますか。
>(その年の前年以前三年内の各年において生じた上場株式等に係る譲渡損失の金額に
>なぜ限定しているのか。)
一般的な趣旨の説明としては、
金融所得の一体課税の推進の流れの中で、
株式等に係る譲渡損失に係る金額については、
なかったものとされた(措置法37条の10第1項後段)
ものの、
譲渡代金と譲渡時期を当事者間で恣意的に
決定しうる一般株式等と異なり、
上場株式等による損失が生じた場合
の納税者の担税力の減少を
考慮できないという弊害
(また個人株主の市場離れの弊害)があるため、
損失が生じた納税者への
課税上の配慮として、
政策的に3年は繰越を認めることと
されているなどと説明されます。
(DHC所得税法7267の25等)
(金子「租税法」22版P267以下)
この説明を前提とすると、
むしろ、本来は認められないものを
3年は例外的に繰越を認めるという
納税者有利に政策的配慮をしている
ということになるかと思います。
2 ご質問②〜「本年分〜譲渡損失の金額」に誤りがある場合~
>2.「本年分の上場株式等に係る譲渡損失の金額」に誤りがある場合には
>どのような取り扱いになりますか。
ご質問の趣旨を諸々検討しましたが、
過去の繰越の適用等ではなく、単純に
修正申告・更正の請求対象年の誤りがあった場合
ということでよろしかったでしょうか。
その場合には、
措置法37条の12の2第10項の読替えは、
国通法2条6号ハの「純損失等の金額」の定義のうち、
(1)の「又は雑損失の金額」とあるものを
「若しくは雑損失の金額又は租税特別措置法第37条の12の2第6項
(上場株式等に係る譲渡損失の繰越控除)に規定する上場株式等に係る譲渡損失の金額」
と読替えているのみ(「純損失等」の範囲の拡張)ですので、
当年分の誤りについて、
通常通り、更正の請求や修正申告をすれば
良いと考えられます。
3 ご質問③〜記載範囲について〜
>これらの規定が適用され国税通則法(修正申告や更正の請求)が適用される範囲は、
>上場株式等に関する申告書への記載事項全てになるのか、
>あるいは上場株式等に係る譲渡損失の金額に限定されますか。
これらの規定が適用される前提だとしても、
上記読替えでは、
上記の通り、「純損失等の金額」の範囲が広くなって
いるのみですので、
国通法が適用される範囲ということであれば、
譲渡損失の金額に限定されるわけではありません。
よろしくお願い申し上げます。