登場人物
私(長男)
弟(次男)
私の両親
大叔父
私の父方の大叔父に、私の両親が普通養子として入っております。
大叔父の妻は既に亡くなっており、また大叔父の両親も亡くなっております。
ちなみに、大叔父には普通養子以外の子供は、元々おりません。
現在、この大叔父は認知症により判断能力がないのですが、認知症になる前に、
「大叔父が亡くなったら、全財産を養子(私の父又は母)に渡す旨」の遺言書を作成しておりました。
私の父は、今年の1月に亡くなりましたので、現在養子としては私の母のみとなります。
以上の前提の場合、大叔父が仮に亡くなった場合の法定相続人は、誰になるのでしょうか。
気になるところは、養子(私の両親)の子である私と弟は、大叔父が亡くなった場合、私の父の代襲相続人として、法定相続人となるのかどうか、です。
よろしくお願い致します。
ご質問、ありがとうございます。
弁護士法人ピクト法律事務所の永吉です。
「1」でご質問に回答したのち、
「2」で、遺言との関係において
大叔父の財産は誰に帰属することになるのかを
解説します。
1 ご質問〜私と弟が代襲相続人として法定相続人となるか?
(1)ご質問と回答の結論
>私(長男)
>弟(次男)
>私の両親
>大叔父
>私の父方の大叔父に、私の両親が普通養子として入っております。
>大叔父の妻は既に亡くなっており、また大叔父の両親も亡くなっております。
>ちなみに、大叔父には普通養子以外の子供は、元々おりません。
>以上の前提の場合、大叔父が仮に亡くなった場合の法定相続人は、
>誰になるのでしょうか。
>気になるところは、養子(私の両親)の子である私と弟は、
>大叔父が亡くなった場合、私の>父の代襲相続人として、法定相続人となるのかどうか、
>です。
大叔父と父の養子縁組のタイミングと
私・弟が生まれたタイミングに
よることになります。
①養子縁組→②私・弟出生の場合
には、私と弟は代襲相続人として、
法定相続人になります。
①私・弟出生→②養子縁組の場合
には、私と弟は、代襲相続人にはならず、
法定相続人になりません。
なお、私と弟の出生時期に応じて、
個別に判断することになります。
(2)回答の理由
代襲相続が発生するには、
被相続人(大叔父)の子(父)が先に
死亡しただけではなく、
その子の子(私)が「被相続人の直系卑属」
であることが必要となります(民法887条2項但書)。
そして、私と弟が被相続人(大叔父)の
「直系卑属」にあたるかは、
大叔父と父の養子縁組が、
私と弟が生まれる前になされていたかによることになります。
(大判昭7年5月11日)
つまり、
大叔父と父の養子縁組がなされた後に、
私及び弟が生まれていれば、代襲相続人と
なり、法定相続人となります。
一方で、大叔父と父の養子縁組がなされる前に、
私及び弟が生まれていれば、代襲相続人とは
ならず、法定相続人となりません。
2 大叔父の財産はどうなるのか?
(1)私と弟が法定(代襲)相続人の場合
この場合、実際の遺言の記載内容や遺言作成の経緯からの
遺言の合理的意思解釈の問題となります。
例えば、誰それという特定がなく
単に「養子」と記載されているのみの場合で、
この遺言は、相続開始時に養子であったものに
すべての財産を与えると評価できるのであれば、
母が全ての財産を取得するとなると考えられます。
一方で、母に1/2、父に1/2等になっている
場合には、
包括遺贈または相続させる旨の遺言の場合でも、
父が取得する予定だった部分の遺言の効力は
原則無効となるとされていますので、
(民法994条1項、最高裁平成23年2月22日)
父の相続する予定だった1/2は、
遺言がない状態(遺産共有の状態)
になり、遺産分割の対象となります。
そして、この遺産分割において、
母への遺贈等については、持戻し免除の意思表示がない限り、
特別受益の持戻しの対象となり、
相続分の計算をすることになります。
その結果、父が取得する予定であった1/2については、
私と弟で、1/2ずつとなるはずですので
結局、
母1/2、私1/4、弟1/4
の割合で遺産分割をすることとなります。
遺言が不明確な場合には、
遺産分割で
相続人全員の合意でするか、
最終的には
裁判所に判断を仰ぐことになります。
(2)私と弟が法定(代襲)相続人ではない場合
この場合、遺言の効力をどのように解しても、
私の母が、大叔父の全財産を取得することになります。
よろしくお願い申し上げます。