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解約の意思表示方法の指定が有効であるか

永吉先生

いつも大変お世話になっております。
税理士の●●でございます。

前提条件:

A社(委託者)からB社(受託者)に業務委託を行っており、
実際の依頼量による従量制の料金のほか、
基本料金が取り決められております。

契約書には解約意思の通知方法として所定のWEB上の解約フォームによる解約以外
受け付けないという記載があります。

A社は元請けであるZ社からの再委託としてB社に委託していましたが、
Z社からA社への依頼が1月に終了、
A社からB社への解約の連絡(Eメール)が4月、
解約フォームによる申請がされないとして料金を請求され続け、
解約フォームにより申請を行ったのが7月、という時系列です。

なお、本件委託契約は顧問契約の様に質問や相談を内容とするものではなく、
制作作業をアウトソースし納品してもらう性質のものです。

ご質問:

上記の場合、A社が支払うべき基本料金は何月分までと
なりますでしょうか。
(解約の意思表示方法を拘束する契約は有効でしょうか。)

例えば弁護士の顧問契約の様に、実際に質問や相談がなくても
その期間の顧問をしていたという事実に基づいて報酬を請求できる場合もあると
思いますが、
実作業が発生していた1月までの料金しか支払わないとA社が主張することは可能でしょうか。

ご確認を宜しくお願い申し上げます。

●●先生

ご質問ありがとうございます。
弁護士法人ピクト法律事務所の永吉です。

1 ご質問に対する回答

>上記の場合、A社が支払うべき基本料金は何月分までと
>なりますでしょうか。
>(解約の意思表示方法を拘束する契約は有効でしょうか。)

>例えば弁護士の顧問契約の様に、実際に質問や相談がなくても
>その期間の顧問をしていたという事実に基づいて
>報酬を請求できる場合もあると思いますが、
>実作業が発生していた1月までの料金しか支払わないと
>A社が主張することは可能でしょうか。

判決まで行った場合の形式的な結論としては、

基本料金として月額で定められている部分は
解約フォームによる解約が成立するまで
支払わなければならないとなる可能性が高いと思います。

ただし、争いになった場合の落とし所としては、
解約の連絡があった4月までというところなのか
と思います(おそらく、裁判になっても、裁判所から
そのような内容での和解を進められると思われます。)。

2 回答の理由

(1)基本料金と従量課金について

>A社(委託者)からB社(受託者)に業務委託を行っており、
>実際の依頼量による従量制の料金のほか、
>基本料金が取り決められております。

実作業が1月までしかなかったということであれば、
2月以降に依頼・作業がない以上、
従量制の料金が付加されるいわれがないのは、
ご指摘の通りです。

しかし、基本料金については
基本料金を払っている期間は、
いつでも依頼を受けて作業をしてもらうことができる地位
などに対する対価の性質を持っていると考えられます。

弁護士の顧問契約も似たような考えに基づいています。

すると、契約が継続している間は、
基本料金の支払は継続しなければならないことになります。

(2)解約方法の拘束の有効性

>契約書には解約意思の通知方法として所定の
>WEB上の解約フォームによる解約以外
>受け付けないという記載があります。

解約をするにあたって、
その方法を限定することは、
法律上、一般的に規制されるものではありません。

その方法が、あまりにも現実的ではなく、
事実上解約をすることができないような条項になっていれば、
信義則違反などを理由に無効となる場合もあります。
(また、消費者側であれば、消費者契約法の観点から
無効となりやすいでしょう。)

web上の解約フォームによる解約のみしか受け付けないという点
については、B社における解約状況の把握の面からも
合理性がないとまではいえず、
また、事実上解約が制限されるような場合でもないため、
このような合意が、契約段階ですでにされているのであれば、
有効となる可能性が高いです。

7月の解約フォームによる解約申請までは
AB間において解約の合意がされておらず、
契約が継続していると判断される可能性が高いでしょう。

ただし、争いになった場合の落とし所としては、
解約の連絡があった4月までというところなのか
と思います(おそらく、裁判になっても、裁判所から
そのような内容での和解を進められると思われます。)

よろしくお願い申し上げます。