会社法 税理士法 税理士賠償責任

顧問税理士が監査役へ就任する是非

事実
15年くらい関与している顧問先(取締役設置会社)より、監査役の退任に伴い、
顧問税理士である私に新たに監査役に就任してもらえないか?
との相談がございました。

質問
監査役は初めてなのですが、そもそも税理士が監査役になるのは法的に好ましく無いのでしょうか?

また税理士法的にも問題がないのでしょうか?

出来ればやるべきでないとするリスクなどありますでしょうか?

または、特に就任しても問題無いでしょうか?

基礎知識が乏しく申し訳ございません。
宜しくお願い申し上げます。

1 ご質問①~会社法上の問題点~

>監査役は初めてなのですが、そもそも税理士が監査役になるのは法的に好ましく無いのでしょうか?
>または、特に就任しても問題無いでしょうか?

顧問税理士が監査役になることが、
会社法335条2項の兼任禁止規定に抵触するかは
一応、疑義があるところですが、

一般的には、
抵触しないと解釈されるものと思われます。
(ただし、個別的に実質から継続的な従属関係があるのかを判断するという説もあります。)

ただし、顧問税理士の地位と監査役の地位
で板挟みになるケースはあります。

つまり、(法律の建前上)監査役は取締役を
厳しく監督・監視する立場にあります。

一方で、顧問税理士の立場としては、
代表取締役の意見を最大限尊重する立場には
ありますので、監督・監視し、
指摘が事実上しにくいというケースで
ご相談を受けたことがあります。

例えば、監査役の任務遂行の過程で、
顧問税理士であるという立場ゆえに、
監査役としての責務を全うしきれず、
会社に損害を与えてしまう場合などでは、
損害賠償責任を負う可能性があります。

つまり、監査役となる以上は、
会社の判断や取締役の疑わしい行動に対しては、
厳しく対処する必要があります。

会計士の先生が監査役の場合で、
代表取締役が不正に資金を流出させるおそれが
あったケースで、社外監査役として、反対意見書など
の提出をしていましたが、

当該代表の解職や取締役解任決議を目的とする
株主総会の招集を勧告する義務などがあり、
善管注意義務違反があったと
されたものもあります(大阪地裁平成25年12月26日)
ので、会計士や税理士等の専門家の先生のケースですと
裁判所はなかなか厳しい判断をすることがあるなという
印象です。

なお、もちろん責任限定契約は
締結しておいた方が良いでしょう。

また、監査役の業務を会計監査に限定
することで、業務監査までの責任を負わない
ように対処された方がリスクは小さくなります。

このあたりは、会社さまとのお付き合いも
長いということで、

どのような方が取締役なのかを見極めて
ご意思決定をされた方が良いかと思います。

2 ご質問②~税理士法上の問題点~

>また税理士法的にも問題がないのでしょうか?

税理士法上は、会社法のような
利益相反についての規定はありません。

顧問税理士であることにより知りえた情報などを、
監査役の立場として利用することなどは、
守秘義務違反になるということは
理論上はあり得るのでしょうが、

実際には、どのような立場で得た情報かの
切り分けは難しい上、その点は会社も承認して、
顧問契約兼監査役というポジションを認めて
いたということでしょうから、あまり
お気になさらなくても良いかと思います。

よろしくお願い申し上げます。