・Aが経営している月極駐車場にBが水上バイクを保管するために賃貸借契約を締結しました。
・1年ほど前からBと連絡がとれず、その間、毎月の駐車料金の支払いもなされていません。
・Bの自宅や勤務先にも連絡をしたのですが勤務先は既に退職しており本人とも連絡がまったくとれません。
このような場合、水上バイクを撤去するにあたりどのように対応するのが望ましいか教えて頂ければと思います。
>・Aが経営している月極駐車場にBが水上バイクを保管するために
>賃貸借契約を締結しました。
>・1年ほど前からBと連絡がとれず、
>その間、毎月の駐車料金の支払いもなされていません。
>・Bの自宅や勤務先にも連絡をしたのですが
>勤務先は既に退職しており本人とも連絡がまったくとれません。
>水上バイクを撤去するにあたり
>どのように対応するのが望ましいか教えて頂ければと
>思います。
2 回答
(1)裁判所の手続によらない場合の注意点
ア 民事上の問題
まず、水上バイクの所有権は依然として
所有者であるBに帰属しています。
このため、
Aが勝手に水上バイクの売却や廃棄を行った場合、
Bから不法時行為責任を追及されるリスクがあるため、
注意が必要です。
(なお、法律上は、Bの同意がなければ、
この債務は、Aから駐車料金との相殺はできません。
ただし、現実的に揉めた場合に、民事の問題について、
駐車場料金と水上バイクの価格がつり合っていれば、
Bの同意のもと相殺することにはなるのかと思います。)
イ 刑事上の問題
仮に、勝手に撤去した場合、
売却ですと窃盗罪、
廃棄ですと器物損壊罪になります。
ここについては、相手が悪いのになぜ?
と思われるところもあるかもしれませんが、
日本の法制度は、自力救済の禁止(自力での
復讐等を禁止)を大原則としてますので、
やむをえないところです。
(2)裁判所に提起するべき訴訟について
このようなリスクを避け、適法に水上バイクを撤去するためには、
以下のとおり裁判所での手続を経る必要があります。
まず、Aは、Bに対して、
Bが未払いの駐車料金の支払を求める訴訟及び駐車場の明渡しを求める訴訟を
提起します。
なお、AB間における賃貸借契約は存続した状態ですので、
契約書上の無催告で解除できる旨の規定により賃貸借契約を解除する旨を
裁判所に提出する訴状に記載することが必要です。
>・1年ほど前からBと連絡がとれず、その間、毎月の駐車料金の支払いもなされていませ
>ん。
>・Bの自宅や勤務先にも連絡をしたのですが勤務先は既に退職しており本人とも連絡がまっ
>たくとれません。
とのことですので、訴訟を提起し、訴状を送達する際に、
自宅へ送ったとしても、訴状を受け取らない、または
すでに転居していて届かないという可能性もあります。
その場合には、Bの住所調査を行ったうえで、
それでも住所が判明しないのであれば、調査報告書を作成のうえ、
公示送達という方法(裁判所に訴訟提起の事実を掲示し、
送達したこととする方法)で、
Bに対して訴状を送達することを求めることになります。
(3)勝訴判決後の手続について
ア 水上バイクの価値が高い場合
裁判所で勝訴判決を得て、その判決をもとに、
駐車場に置かれている水上バイクについて、
動産執行の申立てを行います。
この申立てを行った場合、
裁判所の執行官が水上バイクを差し押さえたうえ、
売却し、Aは、売却代金から未払いの駐車料金の
返済を受けることになります(民事執行法123条、134条)。
また、執行官が水上バイクの売却に要した費用も
ここから支払われることになります。
なお、水上バイクの売却価格が手続費用の額を超える見込みがないときには、
この方法が利用できないことになります(民事執行法129条)。
イ 水上バイクの価値が低い(又はない)場合
他にも、駐車場の明渡しの強制執行の申立てを
行うという別手段があります。
この場合も裁判所の執行官が、
水上バイクを撤去し、売却します。
もっとも、この方法による場合は、
売却代金から執行官が売却保管に要した費用を控除し、
残金は供託されてしまうため、
未払いの駐車料金の回収はできないこととなります
(民事執行法168条)。
ウ 水上バイクの価値が現状わからない場合
上記ア、イの手続はどちらか一方しか申し立てられない
性質のものではないため、水上バイクの価値が未確定の場合には、
両方の申立てを行っておけばよいでしょう。
よろしくお願いいたします。