【概要】
私どもの法人顧客(美容室を数店舗経営)がM&Aを考えています。そして、ある公認会計士事務所に
コンサルを依頼しています。
今まで、顧客からの依頼がなかった(提案はしたのですが、別途有料となるため店舗別損益は結構ですとのこと)ので、店舗別の損益表は作成してきませんでした。
コンサル会社は、店舗別の損益を把握したいためか、当事務所が作成した会計データが欲しいと、昨日、顧客をとおして依頼がありました。
おそらく、先方で会計データを店舗別損益がわかるように加工し直すものと思われます。
公認会計士事務所ですから、同じ会計ソフトを持っているのだと思います。
私として、当初は、有料(コンサル会社が支払う条件)で、販売しても良いと考えていました。
本日、当事務所の担当者不在時に、コンサル会社から電話があったようです。
電話を取り次いだ者の報告によると、先方の態度が横柄で違和感を感じたとのことです。
(他者からデータを頂くのに、自分の所のクライアントの要望なのだから、もらえるのが当たり前のような態度)
【質問】
販売するに際して契約書を結んでからと考え直しました。
内容はどのように記載すべきでしょうか?
・著作権の件
・データ加工後の数値については、当事務所は責任はなし
・データの内容についての質問は受け付けない
などを考えています。
よろしくお願いいたします。
>私として、当初は、有料(コンサル会社が支払う条件)で、販売しても良いと考えていまし>た。
>販売するに際して契約書を結んでからと考え直しました。
>内容はどのように記載すべきでしょうか?
まず、前提として、今回の事案で、
顧客の情報(会計データ)を
税理士事務所がコンサル会社に有料で販売
するということについて、
法的な関係性を考慮した上で、どのような形に
した方が良いのかを決められた方が
よろしいかと思いますので、
長文になってしまい恐縮ですが、
以下、現状のコンサル会社の行為の法的意味等を
解説してから誰とどんな契約をすることが良いのかを
回答します。
2 回答
(1)現状のコンサル会社の行為の意味
ア コンサル会社の行為は誰の行為なのか
まず、現状、このコンサル会社は、
顧客から業務の委託を受けて、
コンサルティング等を行っているわけですが、
>当事務所が作成した会計データが欲しいと、昨日、顧客をとおして依頼がありました。
ということですので、
顧客の代行として、データを渡すように要求している
状態ということができます(あくまでも法的には
要求しているのは顧客になります。)。
したがって、現状の先生と顧客との契約内容として、
会計データの引渡しが含まれる場合には
このデータを渡さないということは
先生と顧客との契約上、先生の顧客に対する債務不履行
となることになります。
(もちろん、この場合でも、顧客との契約ですので、
顧客にしか渡さないという趣旨を伝えることは問題
ないです。)
ですので、まずは、現状の御社と顧客の契約内容を
確認する必要があるかと思います。
イ 先生と顧客の契約内容について
税理士業務に付随して会計データを保持する
契約の解釈ですが、
総勘定元帳などは、このような契約を締結している以上、
備え置きがなければ、いわゆる「青取り」対象になりえますので
何らかの形(印刷物なのかデータなのか)で、
引き渡す義務自体はあるでしょう。
しかし、
何らか形で、顧客側が備え置きができる状態
になっていれば足り、
先生が保持する会計データ自体については、
「契約書にデータを引き渡すことやデータが顧客に帰属する
という特段の記載がなければ、」
顧客に引き渡す義務まではないと考えてよいでしょう。
(2)誰と契約すべきなのか?
上記の通り、今回の問題は、
法的に分析すると
顧客自身に会計データを引き渡すか
どうかという点にありますので、
顧客に対して、
「現状の契約では、
会計データを引き渡す内容になって
いないため、
これを引き渡すのであれば、有料になりますよ」
と伝えて、顧客と契約をすることが本来の形
です。
どうしても、コンサル会社と契約をしたい
ということであれば、それも不可能では
ないですが、
税理士業務で知り得た情報(
匿名加工等もなし)を第三者に
販売する行為になりますので、
これを有料販売した等になると、
税理士法上、
守秘義務や信用失墜行為(税理士法37条)
等の問題が生じますので、
コンサル会社に有料で販売することについて、
顧客の同意を書面等で明確に取得しておく必要がある
でしょう。
ただし、
コンサル会社が有料で買い取るとしても、
コンサル会社がそのフィーを顧客に請求
する(コンサル会社と顧客との契約内容
にもよりますが、実費等として、請求できる
類型になっているケースが多いかなとも
思います。)
こと自体は防げませんので、最終的な
負担者が誰になるか自体は定かには
なりません。
この辺りを顧客との今後の関係性を
含めてどのように考えるかに
なるかと思いますが、
変にコンサル会社という第三者を間に入れるよりも、
先生と顧客の契約として、金銭を受け取る
方が、話がこじれず良いのではないかと個人的には思います。
(3)契約書の内容について
契約内容については、
おっしゃる通り、先生のご指摘の部分が重要かと
思います。
>・著作権の件
著作権の対象は、
思想又は感情の表現で創作性があるものに限られるため、
単なる会計データには著作権は生じません。
>・データ加工後の数値については、当事務所は責任はなし
>・データの内容についての質問は受け付けない
●記載例
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
第●条 甲(先生)は、●●(顧客名)(以下、「本件顧客」)に
関する会計データを現状有姿の状態で乙(コンサル会社)に引き渡す義務のみを
負うものとし、乙に対して本データ等に関する
問い合わせ対応等その他一切の義務を負わない。
第●条 甲は、本件顧客に関する会計データ及びこれを基礎として作成された
二次制作物につき、一切の責任を負わないものとする。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
ただし、この条項を入れたとしても、
データ内容(会計処理の内容)については、
先生と顧客との間で顧問契約がある以上は、
その契約から
顧客の立場からの問合せについては、回答しなければ
ならないことになります。
これを防ぎたいということになると、
顧客との顧問契約等の内容を変更する必要が
ありますが、会計データの中身について
一切回答しないという顧問契約にするというは
税理士として活動している以上、現実的には
難しいかと思います・・・
以上からも、コンサル会社からの
問合せを受けたくないということであれば、
先生と顧客との間で、直接契約をした上で、
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
会計データに関する問い合わせについては、
乙(顧客)が直接、甲(先生)に問い合わせる
ものとし、甲は、第三者(乙の委託を受けた者も
含む。)からの問合せに対応する義務がないことを
確認する。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
というような規定を置き、コンサル会社から
問合せには対応しないことを明確にして
おいた方がよいかと思います。
よろしくお願い申し上げます。
先程、お客さん(A社とします)の代表取締役に電話を致しました。
やはり、A社のM&A案件で、コンサル会社(仲介するのかもしれませんね)は、A社の美容院の店舗別の損益がわからないと、
買い手に高く売ることができないから、会計データをメールで欲しいとのことでした。
やはり、会計データを加工するのでしょう。総勘定元帳などの紙ベースでは加工しにくいですから。
一度、A社、コンサル会社(公認会計・税理士事務所ですが)、私の3者が集まり、具体的に何をしたいのかを
確認しようかと思っています(なんとなくはわかっていますが)。
さて、永吉さんには、コンサル会社との契約ではなく、A社との契約を勧めて頂きましたが、
私としては、コンサル会社とも契約書を交わした方が良いのかなと感じている次第です。
A社とだけ契約を交わしても、結局A社からの質問はなく、コンサル会社が質問してくると予想できるからです。
なぜなら、A社には会計の知識がないので質問のしようがないからです。
A社からの質問は断れないとしても、結局、「コンサル会社と直接やりとりしてくれ」となり、なし崩し的に
質問がくるかもしれないと感じています。経験上から感じることです。
例えば、お客さんがご自身で決算書を銀行へ提出すると、決算書の内容の質問は銀行からきます。
これでは、他者の仕事のために、私どもの業務が停滞します。
【質問1】
以下のような内容でいかがでしょうか?
1.A社と関係
合意書を作成する。内容は以下の通りです。
・顧問先の会計データを第三者に提供することになるので、守秘義務の解除について、A社から承諾を得る。
・会計データの所有権は●●事務所にあるが、有料で販売する承諾を得る。
・コンサル会社の会計データ利用によって、A社に損害が生じても、●●事務所への請求は放棄すること。
2.コンサル会社との関係
もちろん、こちらとも合意書を交わします。
・会計データの所有権は●●事務所にあること。
・会計データの内容に関する真実性は保証しないこと。(瑕疵担保責任の免除です)
・会計データを店舗別損益に加工するにあたり、疑問点が生じた場合は、コンサル会社とA社がやりとりすることは妨げないが、●●事務所への質問は受け付けないこと。
・会計データの利用についてA社及びコンサル会社に損害が生じても、●●事務所への請求は放棄すること。
【質問2】
データの要求者は、法律的は、コンサル会社かと思っていましたが、A社になるのでしょうか?
【質問3】
データの有料販売は、顧客の同意を得れば、税理士法の問題は生じないと
思いますが、再度、いかがでしょうか?
よろしくお願いいたします。
>やはり、会計データを加工するのでしょう。総勘定元帳などの紙ベースでは加工しにくいで
>すから。
>A社からの質問は断れないとしても、結局、「コンサル会社と直接やりとりしてくれ」とな
>り、なし崩し的に質問がくるかもしれないと感じています。経験上から感じることです。
>例えば、お客さんがご自身で決算書を銀行へ提出すると、決算書の内容の質問は銀行からき
>ます。
>これでは、他者の仕事のために、私どもの業務が停滞します。
はい。これらの点について、
●●先生のご質問と私の最初の回答
の前提は、認識の相違はないと思います。
最初の回答で先生とA社と契約の際に
(別料金で会計データを渡す契約の条件)
>~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
>会計データに関する問い合わせについては、
>乙(顧客)が直接、甲(先生)に問い合わせる
>ものとし、甲は、第三者(乙の委託を受けた者も
>含む。)からの問合せに対応する義務がないことを
>確認する。
>~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
という規定を置いたのは、
第三者(銀行やコンサル会社)との
直接のやり取りには対応しない、
つまり、契約の範囲外ですので、
対応しません(銀行やコンサル会社からの問合せが
あった場合、拒否すれば良いだけ)
ということが言えるようにしたものです。
対応をして欲しい場合は、別途A社からの
有料の依頼が必要という意味です。
ただ、先生としては、コンサル会社
に販売をしたいということですから、
以下は、それを前提に再度の質問に回答します。
いただいている
ご質問1〜3が全て相互に関連しますので、
A社とコンサル会社との契約の分類の中で、
各質問について回答します。
1 A社との関係
>合意書を作成する。内容は以下の通りです。
>・顧問先の会計データを第三者に提供することになるので、守秘義務の解除について、A社
>から承諾を得る。
>・会計データの所有権は●●事務所にあるが、有料で販売する承諾を得る。
>・コンサル会社の会計データ利用によって、A社に損害が生じても、●●事務所への請求は
>放棄すること。
(1)税理士法との関係(ご質問3)
>・顧問先の会計データを第三者に提供することになるので、守秘義務の解除について、A社
>から承諾を得る。
>・会計データの所有権は●●事務所にあるが、有料で販売する承諾を得る。
>データの有料販売は、顧客の同意を得れば、税理士法の問題は生じないと
>思いますが、再度、いかがでしょうか?
最初の回答の通り、
~~~~~抜粋~~~~~~~
コンサル会社に有料で販売することについて、
顧客の同意を書面等で明確に取得しておく必要がある
でしょう。
~~~~~~~~~~~~~~~~
明確に書面で取得していれば、
税理士法上は問題ないでしょう。
(2)会計データの所有権?について
>・会計データの所有権は●●事務所にあるが、有料で販売する承諾を得る。
所有権は物に対する権利ですので、
会計データ自体にはそもそも「所有権」
というものが観念できません。
仮にA社にも、今後会計データ自体は利用
させないというご希望の場合には、
以下のような禁止条項をつけるしか
ないかと思います。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~
【A社】は、【コンサル会社】より、
会計データの引き渡しを受けてはならず、
会計データを利用する場合には、
別途、【先生】と合意の下、【先生】から
引き渡しを受けるものとする。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~
(3)問合せ等について(ご質問2と関連)
コンサル会社に販売するとしても、
A社との間で、
>~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
>会計データの内容に関する問い合わせについては、
>乙(顧客)が直接、甲(先生)に問い合わせる
>ものとし、甲は、第三者(乙の委託を受けた者も
>含む。)からの問合せに対応する義務がないことを
>確認する。
>~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
と同様の規定は入れておいた方が良いでしょう。
>【質問2】
>データの要求者は、法律的は、コンサル会社かと思っていましたが、A社になるのでしょう
>か?
結局のところ、コンサル会社が独自の地位で
会計データの要求ができるのか?問合せができるのか?
という話と、
A社の業務受託者(≒使者)として
会計データの要求ができるのか?問合せができるのか?
は別の問題です。
つまり、法的にいうと、
①コンサル会社がA社に会計データの要求や会計処理内容について
問合せをし、
②A社が先生に会計データの要求や会社処理内容について
問合せをするというところで、
(コンサル会社→A社→先生)
②の部分をA社から委託を受けたコンサル会社が
事実上の行為として行っているに過ぎないという
ところです(法主体はA社)。
したがって、
コンサル会社と
>・会計データを店舗別損益に加工するにあたり、疑問点が生じた場合は、コンサル会社とA
>社がやりとりすることは妨げないが、●●事務所への質問は受け付けないこと。
という契約をしたとしても、
この条項では
コンサル会社独自の地位による
問合せは防げても(こちらはそもそも現状で防げているものです。)
A社(A社の業務受託者としてのコンサル会社)の問合せを防ぐ
には、A社と合意をする必要があります。
したがって、A社の業務受託者としてのコンサル会社からの
事実上の問合せを防ぐためには、
A社との間でも直接問合せ以外は認めない合意を
しておくと良いでしょう。
会計データ自体をA社には渡さないという前提
ですと、以下のような内容がよいかと思います。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
【A社】の会計処理の内容に関する問い合わせについては、
【A社】が直接、【先生】に問い合わせる
ものとし、【先生】は、第三者(【A社】の委託を受けた者も
含む。)からの問合せに対応する義務がないことを確認する。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
(4)免責条項
>・コンサル会社の会計データ利用によって、A社に損害が生じても、●●事務所への請求は
>放棄すること。
問題ないです。
2 コンサル会社との契約
>・会計データの所有権は●●事務所にあること。
>・会計データの内容に関する真実性は保証しないこと。(瑕疵担保責任の免除です)
>・会計データを店舗別損益に加工するにあたり、疑問点が生じた場合は、コンサル会社とA
>社がやりとりすることは妨げないが、●●事務所への質問は受け付けないこと。
>・会計データの利用についてA社及びコンサル会社に損害が生じても、●●事務所への請求>は放棄すること。
(1)会計データの所有権?について
>・会計データの所有権は●●事務所にあること。
上記と同様に、会計データには
所有権はありません。
コンサル会社には、データを有償で引き渡す
ことが前提でしょうから、そうすると
利用目的等で制限を加えることになります。
例えば、以下のような記載です。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
【コンサル会社】は、会計データから知り得た
情報を、【A社のM&A】以外の目的で使用しては
ならず、当該目的が達せられた時点で、当該会計データを
破棄するものとする。また、事前に
【先生】の書面による同意を得た場合を除き、
当該会計データをA社及び第三者に提供してはならない。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
※【A社のM&A】の箇所は、実際の利用
目的に合わせて、規定してください。
細かければ細かいほど、利用範囲は限定されます。
(2)瑕疵担保
>・会計データの内容に関する真実性は保証しないこと。(瑕疵担保責任の免除です)
最初の回答の
>~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
>第●条 甲(先生)は、●●(顧客名)(以下、「本件顧客」)に
>関する会計データを現状有姿の状態で乙(コンサル会社)に引き渡す義務のみを
>負うものとし、乙に対して本データ等に関する
>問い合わせ対応等その他一切の義務を負わない。
>~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
の前半部分です。
(3)問合せ
>・会計データを店舗別損益に加工するにあたり、疑問点が生じた場合は、コンサル会社とA
>社がやりとりすることは妨げないが、●●事務所への質問は受け付けないこと。
上記最初の回答の後段部分になります。
(4)免責
>・会計データの利用についてA社及びコンサル会社に損害が生じても、●●事務所への請求
>は放棄すること。
問題ないと思います。
よろしくお願い申し上げます。
会計データ自体に「所有権」というものが観念できませんとのことですが、
会計データに対して私が持っている権利はどのように考えればよろしいでしょうか?
何も権利がないとは思いませんが・・・。
例えば、ある企業が持っている「顧客情報」「購買動向の情報(何曜日の何時にどのような商品が売れやすい)」など
ライバル企業にとっては有用な情報となると思いますが、それらの電子データに対する権利はどのようなものなのでしょうか?
今回の契約書に記載する文言のためにお聞きする次第です。
よろしくお願いいたします。
>永吉さん、ご回答ありがとうございます。
>会計データ自体に「所有権」というものが観念できませんとのことですが、
>会計データに対して私が持っている権利はどのように考えればよろしいでしょうか?
>何も権利がないとは思いませんが・・・。
今回のような知的財産権(著作権等)の
保護の対象とならないものについては、
「所有権」のように法律上認められる
「物権権的な」権利はありません。
以下を権利と呼ぶかどうかは別として、
現状の先生の権利?としては、
1度目の回答の通り、
データ形式で保存されたものを引き渡す
義務を先生が負っているわけではないので、
引渡しさないことやその引渡しに際して条件
(対価なども含む)を
つけることができるという意味で、
債権的な権利があると表現するのであればそのように
なります(あくまでも義務を負っておらず、
渡すなら条件をつけることができるという意味なので
通常はこれを「権利」とは呼ばないかと思いますが)。
そして、契約条項で、引き渡すデータの利用条件を定め、
引き渡した後のデータについて、
先生から相手方に対して、利用に関する義務を
課すことにより、その保護を図ることができます。
したがって、1度目、2度目の回答では
~~~~~~~~~~~~~~~~~~
【A社】は、【コンサル会社】より、
会計データの引き渡しを受けてはならず、
会計データを利用する場合には、
別途、【先生】と合意の下、【先生】から
引き渡しを受けるものとする。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
【コンサル会社】は、会計データから知り得た
情報を、【A社のM&A】以外の目的で使用しては
ならず、当該目的が達せられた時点で、当該会計データを
破棄するものとする。また、事前に
【先生】の書面による同意を得た場合を除き、
当該会計データをA社及び第三者に提供してはならない。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
といったような規定をご提案した次第です。
つまり、義務違反があった場合には、
義務違反を理由として損害賠償を請求できる、
データ利用の目的が終了した時点で削除を請求できる
ようにしておくという趣旨です。
なお、下記の不正競争防止法で保護される
データというものも存在しますが、
こちらはデータの「内容」についてのもので、
データ「形式」が保護されるものではありません。
今回のケースでは、データの内容(会計処理の内容)は、
A社にそもそも開示されている(というよりも、A社に
関するデータ)のですので、
「秘密管理性」という不正競争防止法で保護される
要件を満たしません。
例えば、下記の購買情報を「購買した人」が、
第三者に伝える(どこどこで何を買った等)のは自由ですよね?
ということと同じです。
2 ご質問2~いただい例について~
>例えば、ある企業が持っている「顧客情報」「購買動向の情報(何曜日の何時にどのような
>商品が売れやすい)」など
>ライバル企業にとっては有用な情報となると思いますが、それらの電子データに対する権利
>はどのようなものなのでしょうか?
こちらについても、上記と同様です。
ですので、企業が第三者に
これらの情報を提供する時には、秘密保持契約等で、
データ利用についての範囲を限定したり、
目的が達成された後にどのような処理(破棄する等)
をするかを定めているのです。
なお、上記のようなデータを不正取得されて
しまった(従業員によるデータの引き抜きと
ライバル会社への提供のようなケース)
ですと、
不正競争防止法2条4号や5号などの「営業秘密」
に該当すれば、強い保護が受けられるということがあります。
(データ利用の差し止め請求、損害賠償における
「損害」額の推定などや刑事罰あり)
ただし、「営業秘密」といえるためには、
秘密管理性や非公知性などの厳しい要件が
必要になり、裁判で認められるかどうかが
不確かであるため、契約書で定めるということになります。
(従業員のデータの引き抜きとの関係では、
服務規程や営業秘密取扱規程等)
データの法的性質は特殊なもので、
その権利関係については、
感覚論と法律論がズレやすいところですので、
より深く理解したいということであれば
無料相談をご利用いただけると
図などを書きながら説明できるかとは
思います。
よろしくお願い申し上げます。