会社法

役員重任登記を怠っていた場合の対処について

取締役(代表取締役のみ)の任期が10年の会社で、重任登記のタイミングから
約1年経過しているような状況で、その後の対処としては以下のどちらが
よいでしょうか?

・選任はしていたが登記を失念していたものとする(登記懈怠)
・選任自体を失念していたものとする(選任懈怠)

その他、考慮すべき事項等がございましたら、それらも含め、アドバイスを
いただけますと助かります。

よろしくお願いいたします。

1 ご質問①
(1)ご質問
>取締役(代表取締役のみ)の任期が10年の会社で、重任登記のタイミングから
>約1年経過しているような状況で、その後の対処としては以下のどちらが
>よいでしょうか?
>・選任はしていたが登記を失念していたものとする(登記懈怠)
>・選任自体を失念していたものとする(選任懈怠)

(2)回答

>重任登記のタイミングから
>約1年経過しているような状況

とのことですので、
任期満了時点において、再任の決議を行うことなく、
代表取締役が会社の業務執行を継続しているという前提で
回答します。

この場合、同族会社等では、
登記懈怠で処理するのことが一般的かと思います。

>・選任自体を失念していたものとする(選任懈怠)
>・選任はしていたが登記を失念していたものとする(登記懈怠)

いずれにしても、
100万円以下の過料の制裁を受ける可能性があります
(会社法976条22号、1号)が、
登記簿上、取締役の空白期間が
生じることが気持ち悪いため、
一般的にはそのようにされているものと考えられます。

確かに、登記懈怠の方法ですと、

議事録の日付を改変する行為は、
虚偽の議事録を作成して虚偽の登記申請行為を行うため
公正証書原本等不実記載罪にあたり得ますが、
実務上は、同族会社では問題が露見しないため
そのような処理となっているところです。
(特に代表が100%株主等であれば、
株主が過去の時点で同意していたともいえるため、
形式上も罪にすらならないでしょう。)

このあたりを、気にされるのであれば、
選任懈怠として扱っても良いかと思いますし、
実際に選任を懈怠していたのであれば、
より実態にあった方法にはなります。

なお、民事的には、選任懈怠としても、
今回の任期満了後の代表取締役が1名
ということですので、任期中と同様の権限を
有していたことになります(会社法346条1項、351条1項)ので、
いずれとしても問題はありません。

いずれの方法によるとしても、株主が
複数人いる場合には、株主総会を行った方が良いでしょう。
(日付をバックデートするか否かは、上記の通りです。)

2 ご質問②
>その他、考慮すべき事項等がございましたら、それらも含め、アドバイスを
>いただけますと助かります。

下記に過去の私のメルマガを引用します。
みなし解散等にならないように
ご注意いただければと思います。

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みなし解散制度と対応方法

税理士のための法律メールマガジン
2018年12月14日(金)
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おはようございます。
弁護士法人ピクト法律事務所の永吉です。

本年も12月12日(水)付けで
実行された「みなし解散」という制度ですが、

年数回程度ですが、
税理士の先生から法人が解散してますと
税務署から指摘を受けたという理由で
ご相談をいただくことがありました。

今後は、会社法の施行(平成18年5月1日)
時期との関係で、より問題化するケースが
増えるのではないかと懸念がありますので、

会社の「みなし解散制度」について、

今日は、制度の概要、なぜ今後増加が懸念されるのか
などを解説したいと思います。

1 みなし解散制度

税理士の先生がご想定している
いわゆる「休眠会社」とは異なるものですが、

みなし解散制度は、その名の通り、
国が会社法上の「休眠会社」を、解散したものと
する制度です。

この会社法上の「休眠会社」とは、
「最後に登記があった日から12年経過
した株式会社」(会社法472条)
を言います。

つまり、12年間登記手続きをしていないと
普通に事業を継続し、確定申告などを行って
いたとしても、

会社法上は、「休眠会社」となってしまい
みなし解散制度の対象となってしまいます。

そして、法務大臣が休眠会社に対して、
2ヶ月以内に登記所に事業を廃止していない
旨の届出をすべき旨を官報に公告した場合、

その届出か、新たな登記申請がなければ、
2ヶ月の期間満了時に解散されたものとみなされます。

平成26年度以降、
休眠会社の犯罪利用の防止などを
目的として、

毎年みなし解散が実施されることに
なりました。

例えば、今年も、
http://www.moj.go.jp/MINJI/minji06_00083.html
10月11日を基準日として、
12月11日までに届出がない場合には、
12月12日付で解散したものとみなされて
しまっています。

実際には、公告のみではなく、
通知書を発送してくれてはいますので、
ちゃんと気づいて、手続きを
すれば問題ありません。
通常は、役員登記などに問題があるで
しょうから、登記をするという対応になるでしょう。
(メルマガで取り上げる時期が遅くすみません。)

2 会社法の施行期との関係

会社法の制定により、取締役(2年)や監査役(4年)
の任期が10年まで延長することが
できるようになりました。

実際にも、2年間毎に登記をするのは
煩雑ですので、特に平成18年5月1日以降に
設立した会社は、10年としているケースが
多いと思います。

そして、
例えば、2年に1回の頻度で
登記をしていれば、登記の期限が守られて
いるかは別としても、

登記をしていないことにはまず気がつきます。

しかし、10年(または設立時から1度も)も
役員変更登記をしていないとなかなか
役員登記が必要ということに気づけず、2年
経ってしまうということは頻発すると思います。

そうすると、上記の通知で気付けなければ、
みなし解散となってしまうことになるです。

3 対応

対応としては、登記をちゃんとすること
になるわけですが、

仮にみなし解散となっても、法人格が
消滅するわけではありませんし、
清算中の会社になるということです。

ですので、事業の継続などをしている
場合、
会社法上は、みなし解散から3年以内であれば、
株主総会決議によって、株式会社の継続決議を
することが可能です(会社法473条)。

税務上は、釈迦に説法ですが、
みなし事業年度(法人税法14条1項22号等)
や清算中の会社の取引の有効性などについて
細い問題にも対処する必要があることになります。
(事業承継税制の打ち切り事由にもなります。)

今回のメルマガでは、
みなし解散制度と継続決議について、押さえていただければと
思います。