公正証書遺言と遺産分割協議書どちらが有効なのでしょうか?
今回公正証書遺言はありますが、遺贈の形で相続人以外に一部の財産が相続されるこ
とになっていますが、
その方ともちろん合意の上、遺産分割協議書を作成し、遺産分割する予定なのです
が、
この場合、その第三者の方は、遺言の放棄という形の書面の作成となり、遺産分割協
議書とは別の資料の添付が必要となるのでしょうか?
ご教授をお願いします。
>相続税申告の場合
>公正証書遺言と遺産分割協議書どちらが有効なのでしょうか?
>今回公正証書遺言はありますが、遺贈の形で
>相続人以外に一部の財産が相続されることになっていますが、
>その方ともちろん合意の上、遺産分割協議書を作成し、
>遺産分割する予定なのですが、この場合、
>その第三者の方は、遺言の放棄という形の書面の作成となり、
>遺産分割協議書とは別の資料の添付が必要となるのでしょうか?
2 回答
(1)特定遺贈と包括遺贈の見分け方
前提として、公正証書遺言の内容が、特定遺贈なのか、
包括遺贈なのかにより説明が異なってきます。
まず、相続人以外の第三者への財産の処分が
遺言に記載されているということですので、
遺言の内容は、法的には、「遺贈」である
ことになります。
遺贈には、ご存知の通り、特定遺贈と包括遺贈の
2種類あります。まず、いぞれの遺言なのかを
ご確認ください。
特定遺贈・・・ある財産を特定して第三者に遺贈するとされている場合
例:「A不動産を遺贈する」、「B株式を遺贈する」等
特定の財産についての記載か田舎です。
包括遺贈・・・相続財産の割合を指定して遺贈するとされている場合
例:「第三者に相続財産の1/5を遺贈する」等
(2)特定遺贈の場合
ア 遺産分割参加の可否
特定遺贈の場合には、
包括遺贈の場合と異なり、
相続人以外の第三者の場合には遺産分割協議に
参加することはできません。
あくまでも、
特定遺贈は特定承継であり
包括承継人としての相続人の地位を得るわけでは
ないからです。
(相続人に対する特定遺贈の場合には、
そもそも相続人の地位も有しているので参加している
だけです。)
イ 特定遺贈の放棄
特定遺贈の場合には、
遺贈の放棄はいつでも相続人に対して
行うことが可能です(民法986条1項)。
そして、放棄の効果は、相続開始時に遡ります(同条2項)ので、
遺贈の放棄があれば、相続人の遺産分割対象財産が増える
というのみです。
遺贈を受けたすべての財産を放棄するという
ことですと、そもそも相続税の課税対象になりませんが、
(証拠として、相続人には放棄書を作成し、郵送して
おいた方が良いでしょうが)
例えば、可分な財産(現金等)を1000万円のうち
500万円だけ放棄するという一部放棄も可能です。
ウ 書類について
特定遺贈を第三者が受けた場合には、
第三者として、遺贈を受けた事実を証明
するものは、特定遺贈を受けた遺言書という
ことになります。
上記のように一部放棄の場合には、
提出する遺言書の内容と申告における取得財産
が異なることになりますので、
放棄書もつけた方が良いでしょう。
なお、仮に一部を放棄するのと引き換えに
他の相続財産をもらうというような内容の合意を
相続人とする場合には、売買や交換と認定されることに
なるかと思います。
ただし、ケースによっては、
放棄は放棄で、他の相続財産をもらった点は、
贈与と認定されるおそれがありますので、
このようなことをしたいのであれば、
立場にもよりますが、単純に、遺贈を放棄するのではなく、
売買契約や交換契約としておいた方が無難かと思います。
(3)包括遺贈の場合
第三者に対して包括遺贈がされた場合、
当該第三者は相続人と同じ権利義務を負います(民法990条)。
したがって、
第三者も相続人と同様と扱われるので、
特定遺贈の場合と異なり、遺産分割に参加することができます。
書類としては、
・遺言書・・・遺産分割に参加する地位を有することの証明
・遺産分割協議書・・・承継する財産の証明
が必要となるでしょう。
なお、包括遺贈の場合には、
単純に放棄をするということですと、
相続人と同一の権利義務を有するため、
特定遺贈と異なり、
家庭裁判所に相続放棄の手続をとらなくてはなりません。
(もちろん、相続分の譲渡をすることは、相続人と同じく
放棄手続によらずとも可能です。)
よろしくお願い申し上げます。