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措置法の特例選択の有無について

租税特別措置法の適用を受ける場合における
納税者の選択について教えて下さい。

1.租税特別措置法には選択規定が複数ありますが、この「選択」というのは、金額の未記入などがあった場合、どこまで記載されていると選択したことになるのでしょうか。
小規模宅地の特例を例にすると、特例の適用を受ける土地の所在地が記載されていればよいのか、あるいは特例の適用を受ける金額も含めて全ての事項が記載されていないと選択したことにならないのか。

2.租税特別措置法の「選択」の解釈について、争った判例等をご存知でしたら教えて頂ければと思います。

3.1に関連して、租税特別措置法の選択規定で記載すべき金額の一部に記入もれがあった場合、更正の請求の事由に該当するのでしょうか。
 (例1)小規模宅地の特例で特例の適用を受ける土地の所在地は記載されているが金額の記載がなかった。
 (例2)株式の譲渡所得で証券会社は記載されていたが金額欄に記載がなかった。

お手数をおかけしますが宜しくお願い致します。

1 ご質問①~選択規定の「選択」について~

>1.租税特別措置法には選択規定が複数ありますが、この「選択」というのは、金額の未記
>入などがあった場合、
>どこまで記載されていると選択したことになるのでしょうか。
>小規模宅地の特例を例にすると、特例の適用を受ける土地の所在地が記載されていればよい
>のか、
>あるいは特例の適用を受ける金額も含めて全ての事項が記載されていないと選択したことに
>ならないのか。

この選択をしたか否かについては、
当該申告行為が客観的に
各条文の要件を満たしていると評価できるか
というところになります。

ご指摘の小規模宅地の特例を前提にすると
措置法69条の4第6項が下記になります。

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
第1項の規定は、同項の規定の適用を受けようとする者の
当該相続又は遺贈に係る相続税法第27条又は第29条の規定による
申告書(これらの申告書に係る期限後申告書及びこれらの申告書に係る修正申告書を含む。次項において「相続税の申告書」という。)に第1項の規定の適用を受けようとする旨を
記載し、同項の規定による計算に関する明細書その他の財務省令で定める書類の添付がある場合に限り、適用する。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

つまり税法上は、
・小規模宅地の特例の適用を受ける旨の記載
及び
・措置法施行規則23条の2第8項に規定する書類の添付
http://elaws.e-gov.go.jp/search/elawsSearch/elaws_search/lsg0500/detail?lawId=332M50000040015#5210
なお、上記の添付書類の一部として、
措置法施行令第40条の2第5項各号に掲げる書類
http://elaws.e-gov.go.jp/search/elawsSearch/elaws_search/lsg0500/detail?lawId=332CO0000000043#7776

がある場合に限り、選択したと評価されることになります。
実務上は、第11表の付票1に記載する方法によるかと
思います。

これを前提にすると、

>特例の適用を受ける金額も含めて全ての事項が記載されていないと選択したことにならない
>のか。

あくまでも評価の問題になりますが、
例えば、金額の記載が全くないものですと
上記添付書類の価額計算に関する「明細書」の
実質を有していないと考えられ、適用が
ないということになるかとは思います。

ただし、実務上は、ここまで厳格な運用が
なされているのかというと疑問はあります。

記載がなくても
第11表の付票1の提出があれば、
形式的には一応「明細書」と記載のある
書類が提出されていますので、それで
よしとされている可能性もあるかと思います。

その場合は、未記載の箇所を0との記載として、
更正の請求を認めるという理論構成をするものと
思われます(課税標準をいくらにしているのかという
点に依存しますが)。

この点については、
金額を記載していないものを
私自身、拝見したことがないので、
なんともというところです。

2 ご質問②~裁判例等について~

>2.租税特別措置法の「選択」の解釈について、争った判例等をご存知でしたら教えて頂け
>ればと思います。

今回のご質問の参考になるかはわかりませんが、
措置法26条の診療報酬の所得計算の特例
について、

確定申告書の「事業種目」欄に「医師」と記載されてはいるが、
「措置法第26条第1項」を適用した旨の記載がどこにもなく、かつ、
同法条を選択した旨を裏付けるに足りる書類(収支明細書)等も申告の際に
提出していなかつたという事実関係のもと、

「医師」と記載されていれば、当然同条を選択したと言えると
納税者が主張した事案で、

「特例適用条文」欄に租税特別措置法26条1項の
文言の記載がない場合には、
確定申告書上同法条の適用を選択した旨の記載があつたもの
と同視することができないとされたものがあります
(横浜地裁昭和52年8月3日(その後、東京高裁昭和54年6月27日、
最高裁昭和55年6月5日で確定))。

3 ご質問③~記載漏れと更正の請求~

>3.1に関連して、租税特別措置法の選択規定で記載すべき金額の一部に記入もれがあった場合、更正の請求の事由に該当するのでしょうか。

記入に誤りがあったというケースでは、
計算に誤りがあるということで、
条文上、何かしらの適用額の制限が
ない限り、更正の請求の事由に該当することになるかと思います。

この辺りは、上記の添付書類の「明細書」等と評価
できるだけの記載があったのかという点に依存するかと思います。

>(例1)小規模宅地の特例で特例の適用を受ける土地の所在地は記載されているが金額の記
>載がなかった。

上記質問①のように明細書の実質がないと評価
されるのであれば、適用の選択がされていないと
されますので、更正の請求事由には該当しないと思われます。

なお、上記の通り、実務上は、第11表の付票1の提出があれば、
形式的には一応「明細書」と記載のある書類が提出されて
いますので、更正の請求を認めている可能性はあります。

>(例2)株式の譲渡所得で証券会社は記載されていたが金額欄に記載がなかった。

例えば、上場株式等に係る譲渡損失の損益通算及び繰越控除を
受けられるのかというようなケースでいうと、

措置法37条の12の2第3項
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
第一項の規定は、同項の規定の適用を受けようとする年分の確定申告書に
、同項の規定の適用を受けようとする旨の記載があり、かつ、上場株式等に係る譲渡損失の金額の計算に関する明細書その他の財務省令で定める書類の添付がある場合に限り、適用する。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

措置法規則18条の14の2第2項
http://elaws.e-gov.go.jp/search/elawsSearch/elaws_search/lsg0500/detail?lawId=332M50000040015#1752

こちらは明確に括弧書きで損失の金額の記載があるものに
限るとされていますので、

金額の記載があって初めて選択があったと
法的には評価できるかと思います。

そのように考えた場合、更正の請求はできない
ということになるかと考えられます。

ただし、実務上は、上記と同様にここまで
厳格に運用がなされているのかというと疑問があるところです。
こちらも損失0の記載があったものとして、
更正の請求が認められる余地は実務上はあるかと思います。

よろしくお願い申し上げます。