知的財産法

著作権契約書に記載される作曲者実名について

合同会社Wは、F局テレビ番組のBGM制作業務を受託しており、
F局系列の音楽出版社であるF社と次の形態で
多数の著作権契約を締結しております。

●著作権者 合同会社W
●作曲者実名 O氏(Wの代表社員)

今回、F社の上層部では、O氏一人に多額の著作権印税が
計上されていることが問題視されているようで、

F社の担当者からWに、
次のような相談を持ち掛けられております。

著作権契約書に記載される作曲者実名を、
O氏一人ではなく、複数の人間に振り分けてもらって、
作曲者一人当たりの著作権印税を目立たなくしたい、という趣旨の相談です。

複数の人間としては、
Wの系列別法人でBGMの作成業務をしているA氏、B氏、C氏を予定しております。
A,B,Cは、Wの業務には関与しておりません。

もちろん著作権者はWですから、
著作権印税の支払先は全てWですので、
支払先の変更といった問題は生じないのですが、

仮に、F社担当者からの要請に応じて、
このような(虚偽の)契約書の作成に応じた場合のリスクについてご教示ください。

私見では、
著作権者がWであることの前提として、
O氏からWに著作権が譲渡されているという事実関係がありますので、

今後は、A,B,C各人からWへの著作権譲渡契約を締結して、
著作者人格権を行使しない特約を入れておけば、
実務的には、特に問題は生じないのかな、とも考えております。

どのような対処が望ましいか、
ご教示頂ければ助かります。

1 ご質問

>今後は、A,B,C各人からWへの著作権譲渡契約を締結して、
>著作者人格権を行使しない特約を入れておけば、
>実務的には、特に問題は生じないのかな、とも考えております。

>どのような対処が望ましいか、
>ご教示頂ければ助かります。

2 回答

A、B、Cが実際に作曲していないのであれば、
WとF社との間での契約書に、
作曲者として表示されたとしても、
実際に著作者になる(著作権が生じる)わけではありません。

ただ、契約書に、作曲者として記載されることにより、
A、B、Cがあたかも、作曲者(著作者)で
あるかのような外観が生まれてしまいます。

裁判では、証拠から事実を認定するため、
A、B、Cが著作者であるような証拠となる
ものを作成するのは、控えられた方がよいのでは
ないかと思います。

A、B、Cが自己が著作者であるなどと主張し、
後の争いの種になりかねません。

どうしても、F社の要請に応じなければ
ならないというような立場にあるのであれば、
最低限、これを打ち消す証拠を作成しておくべきです。

先生ご指摘の
>今後は、A,B,C各人からWへの著作権譲渡契約を締結して、
>著作者人格権を行使しない特約を入れ

というのは、そもそも、
A、B、Cが著作者であることを
前提として、その著作権を
Wに譲渡するものなので、
真実と合致しておらず、
適切ではないと思います。

それであれば、真実は、
A、B、Cは、作曲に携わっておらず、
著作者ではない旨を確認させるような書面を、
A、B、Cに作成してもらい、

仮に、A、B、Cが自己の著作権を
主張してきた際の反論材料として、
残しておくという方がよいのではないかと思います。
(なぜ、真実は作曲者でもないのに、
契約書に作曲者として表示することになったのか
という経緯も併せて記載しておいた方が
この確認書の信用性も上がるので、
よいと思います)

ただ、いずれにせよ、
このような虚偽の内容の契約書を作成することにより、
紛争の種になりかねませんし、
そもそも、F社がこのような要請をしてきている
理由も理解しがたいところです。

こちら側でリスクを引き受けてまで、
対応する必要はないのではないかと思います。

よろしくお願い申し上げます。