税理士法

税務相談の線引きをどう考えるべきか

よくある質問とも思うのですが、税理士法上、税務相談の線引きをどう考えれば
いいのか、個人的にはよく分からないです。例えば、

・ 専門家である税理士からの相談はいいのではないか
・ 専門家である税理士でも不可ではないか
・ 税務申告に関することはアウトだが、税務調査の相談はいいのではないか
・ 税務に関する著作で意見を受けるのはOKではないか etc

ざっくりこんな疑問があります。

どこまでが許容範囲なのか、教えていただけますと幸いです。

よろしくお願いいたします。

1 ご質問

>よくある質問とも思うのですが、
>税理士法上、税務相談の線引きをどう考えれば
>いいのか、個人的にはよく分からないです。例えば、
>・ 専門家である税理士からの相談はいいのではないか
>・ 専門家である税理士でも不可ではないか
>・ 税務申告に関することはアウトだが、税務調査の相談はいいのではないか
>・ 税務に関する著作で意見を受けるのはOKではないか etc

>どこまでが許容範囲なのか、教えていただけますと幸いです。

2 回答

税務相談の線引きはおっしゃる通り、
厳密に法律の通り運用がなされていない部分も
ありますし、最終的に社会的にどの程度まで許容されるのか
というのはかなり曖昧な点になります。

例えば、税理士でない方(事務所職員様等)が、
税務調査に対応する行為自体(これは税務代理の例ですが)も、

本来、
「税務官公署の調査若しくは処分に関し税務官公署に対してする主張若しくは陳述」
(税理士法第2条1項1号)にあたる行為かと思われますが、

現実には、行われているという実態があります。

逆に言えば、これを認めなければ、税理士の対応できる
時間との関係から、税務代理を前提とした税務調査の
実施ができなくなるという現実の要請から
国側も大きな問題として扱っていないものと思われます。

その他、同種の士業に関する法律である弁護士法でも、
例えば、会計士の方や税理士の方が、M&Aや事業承継
対策により報酬を受け取ることが、
会社法や民法に関する相談を含むものとなるので、
弁護士会の見解を前提にすると、
弁護士法違反ともとれますが、

法務省含め国がこの点を一般論として、
違法としているわけではなく、
特段問題ないものと扱っているもの
(もちろんケースによるところですが)と思います。

(弁護士法の細かい解釈論は割愛します。裁判例も
背景事情によりまちまちです。)

ですので、解釈者の立場、背景事情などから、
この辺りの解釈に、唯一絶対の解があるわけでは
ありません。

>・ 専門家である税理士からの相談はいいのではないか
>・ 専門家である税理士でも不可ではないか

条文上は問題があるように読めますが、

社会的にいうと、
例えば、弁護士が訴訟などをするケースで
大学教授等に相談をして意見をもらうことに対して、
対価を支払うこと自体は行われていますが、
問題がない行為とされているところがあります。

仮に、弁護士でない者が専門家である弁護士からの
法律相談に応じられないということになると
このような現実は弁護士法違反という
ことになってしまいます。

また、税理士法の趣旨は、
「申告納税制度の理念にそつて、
納税義務者の信頼にこたえ、租税に関する法令に規定された
納税義務の適正な実現を図ること」(税理士法1条)
にあります。

税理士へのアドバイスであれば、
最終的には税理士が行う納税者への
アドバイスに役立てる(利用するか否かも
税理士の判断)というところに
なりますので、上記の趣旨に反せず、
特段問題がないとも考えうる部分かと思います。

この辺りは、一概に明確な解があるわけでは
ありませんので、現状では、
各自の判断という部分が現実には残ります。
(裁判してみなくてはわからないが、
裁判になるとすれば刑事罰になるので、
上記の税理士法との趣旨の観点から警察が動くとも
思えませんので、はっきりすることはない
可能性が高いです。)

>・ 税務申告に関することはアウトだが、税務調査の相談はいいのではないか
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
税理士法2条1項3号
三 税務相談(税務官公署に対する申告等、
第一号に規定する主張若しくは陳述又は申告書等の作成に関し、
租税の課税標準等(省略)の計算に関する事項について相談に応ずることをいう。)
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

税務相談の対象ですが、
上記の「税務官公署の調査若しくは処分に関し税務官公署に対してする主張若しくは陳述」
も、「第1号に規定する主張若しくは陳述」として含まれます。

ですので、税務調査の相談だからOKとはならないものと
思います。

なお、「租税の課税標準等(省略)の計算に関する事項
について」とありますが、
税務調査の相談は、これにあたるものも多いと思われます。

この辺りは、相談内容と回答の仕方に依存する問題だと思います。

>・ 税務に関する著作で意見を受けるのはOKではないか

こちらについて、通達上は
「2-6 法第2条第1項第3号に規定する「相談に応ずる」とは、
同号に規定する事項について、具体的な質問に対して答弁し、指示し又は意見を
表明することをいうものとする。」

とされており、一般的にセミナーや書籍の出版等は問題
ないものとされています。

上記のご質問の趣旨がこのような意味であれば、
OKだとは思います。

こちらも個別具体的な質問内容と回答に依存する問題になります。

なお、これらの問題については、
背景事情や個別の質問内容に依存する部分が
大きいところになりますので、
具体例で明示されてもメールで十分な回答ができる
わけではないと思われます。

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