相続 遺言

遺言執行者に対する報酬の減額交渉方法について

●遺言執行者に対する報酬の減額交渉方法について

<前提>

創業者が、
創業者が代表であった同族会社の顧問弁護士を遺言執行者とする
遺言書(公正証書)を過去に作成していた。
(証人の1人は、顧問弁護士の息子さんです)


創業者が死亡したため、相続人(後継者)が遺言書を確認すると、
以下の文言の記載があった。

第〇条
遺言執行者に対する報酬は、遺産総額の9%(プラス消費税)とします。

<質問>

上記の条文内容ですと、
遺言執行者に対する報酬は多額になってしまうため、
相続人は、減額交渉したいと思っております。

遺言執行者に対する報酬の減額交渉方法として
何かいい方法はありますでしょうか?
(相対での交渉~裁判)


創業者の死亡後、弁護士さんとの顧問契約は、
もともと解除する予定であったため、良好な関係の継続は求めておりません。

宜しくお願い致します。

1 ご質問

>第〇条
>遺言執行者に対する報酬は、遺産総額の9%(プラス消費税)とします。

>上記の条文内容ですと、
>遺言執行者に対する報酬は多額になってしまうため、
>相続人は、減額交渉したいと思っております。

>遺言執行者に対する報酬の減額交渉方法として
>何かいい方法はありますでしょうか?
>(相対での交渉〜裁判)

2 回答

下記の通り、遺産の総額にもよりますが、
遺産総額の9%(プラス消費税)
というのは一般的に高いイメージです。

ただし、詳細は下記の通りですが、
法的には、遺言で指定がある以上、
相続開始と同時にその効力が生じますので、
これを覆すことは難しいです。

下記の一般的な報酬基準を示して、
減額交渉をするという方法は1つあるとは
思いますが、先方の弁護士次第という
ところです。

(1)一応の報酬基準について

日弁連の(旧)日本弁護士連合会報酬等基準によれば、
遺言執行の場合の基準は、以下のように規定されています。

【基本】
経済的な利益の額が300 万円以下の場合:30万円
300 万円を超え 3000 万円以下の場合:2%+24万円
3000万円を超え3億円以下の場合:1%+54万円
3 億円を超える場合:0.5%+204万円

http://www.miyaben.jp/consultation/pdf/expenses_kijun.pdf
の【裁判外の手数料】のうち、「5」参照

この基準は、平成16年4月1日に
弁護士報酬が自由化される以前の規定です。
このため、報酬につき強制力を持つものではありませんが、
現在の弁護士報酬の一応の目安となっています。

このため、今回問題となる
>第〇条
>遺言執行者に対する報酬は、遺産総額の9%(プラス消費税)とします。

との定めによる報酬が、
上述の旧規定よりも高額であることを
理由に、顧問弁護士と交渉することになるか
と思います。

なお、仮にあまりにも高額過ぎるという
ケースですと、信義則等(民法2条)
の適用の可能性もなくはないのですが、

法理論上は、遺産についての被相続人が
定めた内容ですので、裁判等で勝訴できる
見込みは薄いです。

(2)遺言執行者解任の申立てについて

他の手段としては、相続人は、家庭裁判所に対して、
「任務を怠ったときその他正当な理由があるとき」は、
家庭裁判所に対して解任請求ができるとされています(民法1019条)。

このため、
遺言執行者が、
相続財産目録の交付、事務処理状況の報告などの業務を怠った場合や
不完全な相続財産の管理を行った場合

相続人と遺言執行者と感情的な対立があるにとどまらず、
遺言執行者が特定の相続人の利益を図り、
公正な遺言の執行が期待できない事情がある場合などには、
遺言による遺言執行者の解任を家庭裁判所に対して
請求することができるとされています。

ただし、執行者の報酬が高いという理由のみでは、
「正当な理由」が認められるのは難しいところです。

こちらについては、交渉の材料として、
解任の申立ても検討していますと伝え、

面倒なことに巻き込まれるくらいであれば、
報酬を減額してあげようかなと先方の
弁護士に考えさせるという程度の
意味合いになるかと思います。

よろしくお願い申し上げます。