民法 税理士賠償責任

納税管理人の法的責任の範囲について

●納税管理人の法的責任の範囲について教えて頂けますでしょうか。
 (下記のケース及びその他一般的な責任について)

<前提>


海外投資家の日本国内所有不動産の
確定申告書の作成を受任している税理士が、
納税管理人に就任している。


海外投資家が、2個以上の国内賃貸不動産を所有している前提で、
・1個の不動産は賃貸のため不動産所得の申告を受任
(非居住者のため源泉所得税が徴収されている)

・もう1個の不動産は無償で知人に利用させている等の理由で
 不動産所得の申告は受任されていない
(実際は有償で賃貸しているような雰囲気です)

<質問>

前提のケースにおいて、
確定申告書の作成を受任している税理士兼納税管理人の
法的責任の範囲について教えて頂けますでしょうか。

宜しくお願い致します。

1 ご質問①~税理士兼納税管理人の責任~

(1)ご質問
><前提>
>①
>海外投資家の日本国内所有不動産の
>確定申告書の作成を受任している税理士が、
>納税管理人に就任している。

>②
>海外投資家が、2個以上の国内賃貸不動産を所有している前提で、
>・1個の不動産は賃貸のため不動産所得の申告を受任
>(非居住者のため源泉所得税が徴収されている)

>・もう1個の不動産は無償で知人に利用させている等の理由で
> 不動産所得の申告は受任されていない
>(実際は有償で賃貸しているような雰囲気です)

><質問>

>前提のケースにおいて、
>確定申告書の作成を受任している税理士兼納税管理人の
>法的責任の範囲について教えて頂けますでしょうか。

(2)回答

上記の前提のもとでは、
当該税理士は、納税管理人としての責任のほかに、
当然、税理士としての責任を負っていますので、

専門家責任レベルの善管注意義務を負うことに
なります。

>・もう1個の不動産は無償で知人に利用させている等の理由で
> 不動産所得の申告は受任されていない
>(実際は有償で賃貸しているような雰囲気です)

つまるところ、
結論として、この不動産についても、
申告が必要な状況で、

通常の税理士であれば、怪しいと
容易に認識できる状況下においては、
申告が不要である根拠を調査・確認する
義務を負っていることになります。

仮に、そのような調査や確認を怠った場合には、
加算税等の部分について、損害賠償をする義務が
生じることになります(なお、依頼者側が隠して
いたという事情があるので過失相殺(被害者側の
過失を考慮)はありますが、どの程度隠していたか等
によることになります。)

なお、税理士の懲戒事由(税理士法45条2項)にも該当します
が、ただ、怪しい程度ですと、実際に懲戒されるかという
と可能性は低いでしょう。

2 ご質問②~納税管理人(税理士ではない)の責任~

納税管理人の事務範囲としては、

・ 国税に関する法令に基づく申告、申請、請求、届出
その他書類の作成ならびに提出
・ 税務署長等(その所属の職員を含む。)が発する書類の受領
・ 国税の納付および還付金等の受領

が挙げられます(国通法117条、国基通117条関係)
https://www.nta.go.jp/law/tsutatsu/kihon/tsusoku/09/01/117.htm#a-02

こちらは、税理士でない者が選任されることも
可能です。税理士法との関係では、
「業とする」(税理士法2条)わけではない場合には、
税理士法に違反するものではないと
されています。

つまりは、反復継続する意思(この場合は複数人から継続的に)
で、納税管理人の事務を行う
ことは税理士法に違反しますが、家族や仲の良い友人などに
お願いするというケースでは税理士法に反するものではないと
されています。

そして、これらの税理士ではない者が納税管理人となった
場合には、税の素人であり、税理士と異なり、
上記のような高度な義務は負いません。

つまり、

>・もう1個の不動産は無償で知人に利用させている等の理由で
> 不動産所得の申告は受任されていない
>(実際は有償で賃貸しているような雰囲気です)

ということであったとしても、
確認や調査することを期待することが
そもそもできませんので、

税理士兼納税管理人と異なり、
損害賠償等の責任を負うことは
ないと考えられます。

よろしくお願い申し上げます。