不動産 民法 所得税

売買と一部解除が繰り返された?場合の不動産の譲渡経費について

 平成28中に甲(売主)が土地を売却したのですが、その土地の境界に境界物が存在し
その境界物を近隣所有者が撤去する合意がなされている事を条件に乙(買主)との売買が成立していた。
 その後平成29年中に契約成立後も境界物が存在していたため、その境界物が存在する敷地のみ売買契約を解除することに合意し、
分筆され(登記上は合意解除による所有権抹消)、その部分だけ所有権が甲に戻りました。
 その時に合意書が作成され、「本件土地の所有権抹消抹消登記手続きに必要な一切の書類の引渡を受けるのと引き換えに
甲は乙に150万円を支払う」という文書となっています。(実質、分筆された土地の価格)
 さらに平成30年中にその境界物が撤去されたことを理由に再度甲乙間で売買契約(売買価格150万円)が成立しました。

この場合
1.分筆された部分については売買が成立しなかった処理をするのでしょうか?
  (当初の売買価格の減少という事で減額更生が必要か?)
2.合意事項という事で当初の売買はそのままで甲が支払った150万円は
 30年中に売却した土地(150万円)の譲渡経費として処理できるでしょうか?
 (譲渡経費とならないのであれば概算経費5%で譲渡の申告?)

私個人としては28年の確定申告の更正の請求をし、
30年の分については5%の概算経費で譲渡の申告をしようと思ってるのですが・・・

問題となる点は合意文書により支払った150万円の扱いだと思います。
ご教示よろしくお願いいたします。

土地についての表記は以下の通りとします。
・平成28年の契約対象の土地:A土地
・A土地のうち、平成29年に所有権抹消登記がされた土地(境界物の敷地):B土地
・A土地のうち平成29年に所有権抹消登記がされたなかった土地:C土地
(※A土地=B土地+C土地という関係)

いただいたご質問の内容への回答の
理由を詳細にするとなると、
民法や租税法の基礎概念に遡って、
説明する必要があり、論文のように
なってしまいますので、以下、前提をおきます。

◯甲(売主)の譲渡所得の問題。

◯下記の条件(近隣所有者との合意)は、
H28の契約時に達成されておらず、
契約書では、このA土地全体の所有権移転の条件となっている。
>その土地の境界に境界物が存在し
>その境界物を近隣所有者が撤去する合意がなされている事を
>条件に乙(買主)との売買が成立

◯通常の更正の請求と後発的事由に基づく更正の請求の関係
については、現在の通説的見解だと思われる無制限説を前提とする

1 ご質問①~H28年確定申告について~

>分筆された部分については売買が成立しなかった処理をするのでしょうか?
>(当初の売買価格の減少という事で減額更生が必要か?)

(1)結論

先生のご想定の通り、更正の請求をする
ことになるものと思います。

(2)理由

H28年中のA土地の売買契約については、
条件が、A土地全体についている以上、契約書の
定め方もありますが、停止条件が付されているものとも
評価できます。

そうすると、民法上は、条件成就前なので、この年の
所有権移転の効力がないものとも考えられるのですが、

所得税法上は、収益認識基準において、
発生主義を採用しており、この発生主義の
基準として、権利確定基準を原則にしつつも、
管理支配基準を補充的に利用するという考え方が
判例の考え方です(金子租税法22版P293以下等参照)

ので、所得税の収益認識の視点からすると、
A土地について、所有権が移転しているのと同様の状態
ということになります。

一方で、H29年中にB土地のみ分筆の上、
所有権抹消登記手続きをした上で、B土地の
対価であった150万円を返金しているという
ことですので、

H28年のA土地にかかる取引のうち、
B土地の対象部分の土地の売買について、

経済的実質が消失したと評価できますので、
更正の請求をすることになると考えられます。

なお、その場合、H28年の申告については、
B土地の対象面積分の取得費なども更正の
請求において、算定しなおすことになります。

2 ご質問②~合意解除の150万円は取得費となるのか~

>合意事項という事で当初の売買はそのままで甲が支払った150万円は
>30年中に売却した土地(150万円)の譲渡経費として処理できるでしょうか?
>(譲渡経費とならないのであれば概算経費5%で譲渡の申告?)

(1)結論

150万円については、H28年分の更正の請求で
税務上は評価されていますので、H30年B土地売買の
取得費にはなりません。

ただし、概算取得費5%となるわけではなく、
H28年の申告の際のB土地相当分の面積の取得費を
計上することになると考えられます。

なお、そもそもH28年申告の際のA土地の取得費を、
概算取得費5%としているのであれば、先生の
おっしゃる通りになるかと思います。

(2)理由

H28年分の更正の請求を行う際には、
B土地相当分の面積について、

上記の通り、取得費を修正することに
なるかと思います。

そして、所得税法上は、
更正の請求が認められる以上、
H28年分の当初からC土地の
売買であったと評価するという
ことになりますので、

B土地の取得費は、
A土地の取得費のB土地面積対応部分
となるかと思います。

よろしくお願い申し上げます。