解散予定会社(以下A社)の代表取締役(半数の株式を所有)が体調を崩し
法人の解散清算を検討しています。
状況的に、早期の清算を希望されているため
回収期限の長い手形をB社に買い取ってもらう場合、
保証債務の関係上手形が決済されるまで清算できないのでしょうか。
なお、A社B社共にそれぞれ同族会社であり、A社株式の半数をB社代表取締役兼筆頭株
主が所有しています。
よろしくお願い致します。
>解散予定会社(以下A社)の代表取締役(半数の株式を所有)が体調を崩し
>法人の解散清算を検討しています。
>状況的に、早期の清算を希望されているため
>回収期限の長い手形をB社に買い取ってもらう場合、
>保証債務の関係上手形が決済されるまで清算できないのでしょうか。
この「保証債務」というのは、
手形の裏書をした者(譲渡者)に生じる
担保責任という趣旨かと思いますので、
その前提で回答します。
結論としては、下記の「2(2)」の
「無担保」裏書きをすることにより、
リスク回避をしながら
早期の清算手続が可能と考えられます。
2 回答
(1)手形の裏書債務を残したままの清算結了の可否
会社の清算手続は、大まかには、
以下のようになります。
①解散決議(清算中の会社として、法人格は存続)
↓
②会社財産の換価
↓
③債権者への弁済
↓
④残余財産の株主への分配
↓
⑤清算事務の結了(法人格消滅)
そして、④残余財産の株主への分配は、
③会社のすべての債務を弁済した後でなければ、
行うことはできないとされています(会社法502条本文)。
したがって、債務の弁済をしなければ、
最終的には、清算事務を結了することはできません。
ここで問題となるのは、手形の裏書によって、
会社が負っている担保責任が、ここにいう債務に
あたるかどうかという点です。
手形の裏書による担保責任は、
本来の債務者である振出人が、満期日に
支払いを拒絶した場合や、満期前でも、
弁済できないことが確実であるというような事情が
ある場合にのみ、弁済の義務を負うという
潜在的なものです。
もっとも、現実にこのような事態になれば、
支払債務を負うことになってしまうため、
ここにいう債務にあたるという解釈が
ないわけではありません。
また、この裏書による債務をなきものとして、
清算手続を進め、結了の登記まで至ったとしても、
裏書による支払債務が現実化すれば、
清算は結了していなかった(法人格は存続していた)
ということになり、清算手続が終了していることを
理由に、支払いを拒絶することはできません。
そうすると、会社は、株主に分配した残余財産の
返還を受け、これを原資に、債務の弁済をしなければならず、
結局は、手続のやり直しになってしまいます。
(現実問題としては、手形が円滑に支払われる見込みであれば、
このような事態が生じる可能性は低いとは思いますが)
したがって、他に方法があるのであれば、
手形の担保責任を残したまま
清算手続を進めることは得策ではないと考えます。
(2)現実的な対応策
一般論としては、上記のとおりですが、
今回は、そもそも、手形の裏書による担保責任を
負わないようにすることができる方法がありますので、
これによって解決されるのがよいのではないかと思います。
具体的には、A社がB社に裏書をする際に、
「無担保」などの文言を手形に記載して裏書することで、
裏書人であるA社は、裏書による担保責任を
負わなくなります。
これは、手形法15条1項が
裏書人は「反対の文言」がない限り担保責任を負う
旨の定めをしていることから認められており、
「無担保裏書」と呼ばれるものです。
このようにすれば、A社は、裏書による
担保責任を負いませんので、
上記の心配はなくなります。
通常、無担保裏書だと、手形の譲受人は
難色を示すと思いますが、
今回の譲受人であるB社とA社の関係からすると、
無担保でも、引き受けて
くれるのではないかと思われます。
よろしくお願い申し上げます。