相続 役員報酬 会社法 法人税

形式的には役員ではないものに対する死亡退職金について

先日、社長のご子息が急逝されました。
役員登記はしておりませんが、社長の片腕として約30年経営に携わっておりました。
会社として死亡退職金を支給する予定ですが、税法上の役員(みなし役員)として
役員退職規定に準じた額を損金経理しようと思いますが、商法上の役員ではないため規定に準ずることは出来ないと聞きました。
この場合、ご子息の最終給与×勤続年数×功績倍率で算出した金額が認められるでしょうか?
それとも該法人の従業員の退職金相場が基準になってしまうでしょうか?

 よろしくお願いいたします。

1 ご質問

>会社として死亡退職金を支給する予定ですが、税法上の役員(みなし役員)として
>役員退職規定に準じた額を損金経理しようと思いますが、商法上の役員ではないため規定に
>準ずることは出来ないと聞きました。
>この場合、ご子息の最終給与×勤続年数×功績倍率で算出した金額が認められるでしょうか?
>それとも当該法人の従業員の退職金相場が基準になってしまうでしょうか?

2 回答

(1)役員退職金規程と会社法との関係(前提)

会社法上は、
取締役への退職金の支給には
金額等について株主総会決議が必要な一方で、

従業員に対する給与は、
代表取締役の経営判断により金額を
決定することができます。

確かに、一般的な役員退職金規程に
ついては、会社法上の取締役等に適用される
ものとして定められているものですが、

定めなければ退職金を
支給できないというものではありません。

(2)過大役員報酬(法人税34条2項)との関係

役員退職金規程は、
恣意性のない支給であることを基礎付ける
証拠になるものであって、

役員退職金規程の対象(会社法上の役員)で
はなかったからといって、
それに準じた支給が過大役員報酬になる
というものではないと思いますので、

それに準じること自体ができないという
ことでは税法上はないと思います。
(下記の裁決例もそれを前提に
しているものと思われます。)

現状、みなし役員に該当することを前提にすると

結局のところ、過大役員退職金に該当するか否かは、

法人税法施行令70条2号に定められた
事情から不相当かで判断されます。

実務的には、ご指摘の功績倍率法で判断
されますが、

みなし役員の場合には、

持株割合の問題だけでなく、
「経営に従事しているもの」(法人税法2条15号、施行令7条)
という事実認定の問題となります。

会社法上の役員ではないということになると

この役員としての勤続年数を
いつからカウントするのかという点が、
明確でないため、注意が必要かと思います。

この点は、調査に備えてできる限り
証拠などを整備しておくことが重要かと思います。

登記上取締役でない配偶者が、その後取締役となった
ケースの勤続年数について争いになった、
参考になる裁決例として平成22年4月6日
(TAINSコードF0-2-372)があります。

原処分庁は、登記上取締役となってからの
17年を主張し、納税者は役員就任前も
みなし役員に該当するから通算して32年
を適用すべきと主張していた事例です。

この裁決では、
会社が設立された当時から、
「従業員の労務管理、監督官庁等の折衝、官工事等
の指名願い、取引先との交渉等のほか、
代表者に代わっての対外折衝、事務所及び工場の移転や
組織変更など請求人の重要事項の決定に大きく関与していた」

と評価でき、これが他の従業員の供述とも
一致しており、
「役員就任前と後を通じて実質的に
請求人の経営上主要な地位を占めていたとみるべき」

として、32年の勤続年数を認めています。

(3) みなし役員とは評価できないケース(または期間)

みなし役員ではないと評価されてしまったケース等
ですと、社長のご子息ということですので、

法人税法36条の「不相当に高額」とされるかで
損金算入の可否が変わってきます。

その場合には、
重要な役割を担っていたということで、
通常の従業員とは著しく異なる点を主張して、

その金額(または一部)に合理性がある
と主張・立証していくことになるでしょう。

よろしくお願い申し上げます。