株式 会社法

譲渡制限株式の譲渡承認機関が「当会社」の場合

譲渡制限株式の譲渡承認機関が「当会社」と登記されている場合、
「当会社」の定義を定款で確認する旨を以前に教えて頂きました。

ただ、定款を見ても「当会社」と書いてある場合、
この「当会社」の定義はどのように考えればいいのでしょうか?

また、登記を直した方がいいのでしょうか?

なお、これに該当する会社が数社ありましたが、
いずれも有限会社です。

よろしくお願いします。

1 ご質問①〜承認機関の定めが定款にもない場合~

>譲渡制限株式の譲渡承認機関が「当会社」と登記されている場合、
>「当会社」の定義を定款で確認する旨を以前に教えて頂きました。
>ただ、定款を見ても「当会社」と書いてある場合、
>この「当会社」の定義はどのように考えればいいのでしょうか?

この場合には、
定款の「当会社」は、理論上

・取締役会設置会社→取締役会の承認
・それ以外→株主総会の承認

となります。

ご存知の通り、
会社法により、譲渡制限株式の譲渡を
承認する機関が法定されており、

取締役会設置会社の場合には取締役会、
非設置会社では株主総会が承認機関となります
(会社法139条1項本文)ので、

「当会社」のみの定めのケースは、
会社法139条1項ただし書きの別段の
定めのないものとして法定通りと解釈されること
になります。

なお、株式会社の場合には、
実務上定款まで確認し、承認機関の記載がない
ものをこれまで見たことがありませんでしたが、

有限会社ですと
ご指摘の通り、そのような記載になっている
可能性が高いですね。
(理由は「3」参照)

2 ご質問②〜登記を直した方が良いかどうか~

まず、定款の必須事項と、登記事項ですが、
発行する全部の株式の内容として
譲渡制限が付されていること自体(会社法107条1項1号)
になります(同法911条3項7号)。

したがって、会社の認識及び運用と
上記承認機関に乖離がなければ、
登記を直すことが必須ではありません。

なお、認識及び運用が異なる場合には、
定款変更ののち、登記を直した方が良いでしょう
(下記の通り、有限会社の場合には、株主総会しか
理論上ありえないので、このようなことは
あまり想定できないかと思います。)。

3 ご質問③〜有限会社にこのような記載が多い理由~

平成17年の会社法改正前の有限会社は、
「会社法の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律」
(通称「会社法整備法」)2条により、
現在は特例有限会社として
会社法上の「株式会社」とみなされていますが、

・特例有限会社の全部の株式には当該特例有限会社の承認を要する旨
・当該特例有限会社の株主が譲渡により取得する場合においては
当該特例有限会社が承認したものとみなす旨の規定(株主間の譲渡の場合はみなし承認)

があるものとみなされます(会社法整備法42条4項、同法9条1項)。

なお、譲渡制限株式であること自体と
このみなし承認は、有限会社であり続けるので
あれば、変更することはできません(同法9条2項)。

つまり、株主間譲渡の場合、
みなし承認が絶対になりますので、
相続などで株式が分散すると、
会社としては、特定の株主に対して、他の
株主が株式譲渡することは自由という少し危険な
状態ということになります。

この譲渡制限に関する登記は
登記官により職権で行われて(整備法136条16項)
おり、

職権登記にかかる登記記載例では、
「当会社の株式を譲渡により取得することについて当会社の承認を要する。
当会社の株主が当会社の株式を譲渡により取得する場合においては当会社が承認したものとみなす。」
とされていますので、このような登記になっている
かと思います。

定款の変更などの手続きがなければ、
会社法施行前の定款のままなことが多い
(旧有限会社のまま)と思いますので、

株主総会や取締役会などの具体的な承認機関
の定めはされていないでしょう。
(そもそも株主総会や取締役会というものが
なかった時代の定款のままということに
なりますので。)

なお、特例有限会社では、
会社法整備法17条1項で、
特例有限会社で設置できる株主総会以外の機関は
監査役に限定されているため、

定款に記載がなければ、
特例有限会社の定款において、譲渡制限株式の
譲渡承認機関が「当会社」とされている場合には、

株主総会が承認機関となることになります。

よろしくお願い申し上げます。