消費税の還付申告にあたり審査資料として、
会計事務所から税務署に売買契約書と
金額の変更に伴う覚書を提出したところ、
印紙の貼り漏れを指摘され、印紙税の調査に移行し過怠税を徴収されました。
税務顧問契約書には、下記の通り記載しています。
1.税務に関する委任の範囲は次の項目とする(不服申立て及び訴訟を除く)。
(1)甲の法人税、事業税、住民税、消費税の「税務代理」並びに「税務書類作成」 (2)甲の「税務相談」
(ご質問事項)
顧問先は専門家(税理士)として資料提出前に未然に防ぐべきであり、
過怠税を弁償してほしいと暗にほのめかしており、
こちらも請求があった場合には、全額ではないにしろ、
ある程度柔軟に対応しようと考えてはいるのですが、
そもそも論として、本件について税理士の賠償義務はありますでしょうか。
>消費税の還付申告にあたり審査資料として、
>会計事務所から税務署に売買契約書と
>金額の変更に伴う覚書を提出したところ、
>印紙の貼り漏れを指摘され、印紙税の調査に移行し過怠税を徴収されました。
>そもそも論として、本件について税理士の賠償義務はありますでしょうか。
今回の事例では、税理士の先生が
損害賠償責任を負う可能性は低いと思います。
仮に認められるとしても、過失相殺などで、
1割程度でしょう。
2 回答
(1)損害賠償についての法律構成
未納付申出書を提出すれば、
過怠税は「印紙税額+印紙税額の10%」となるところ、
本件では
印紙税調査に移行している
ということですので、
過怠税は、「印紙税額+印紙税額の2倍の額」を
徴収されていると思われます。
損害賠償を法的に請求するとすれば、
税理士の先生が、
依頼者に対し印紙税の未納付があることを
確認し、申出書を提出するように助言する義務が
あったのに
これを怠ったことにより、
本来徴収を免れることができた
印紙税額1.9倍の額を損害として
請求するというということになる
かと思います。
(2)確認し助言する義務があったか否か
税理士の先生が負う善管注意義務の対象は、
具体的に委任を受けた事項及びそれに付随する事項
まで含まれ、
専門家責任の観点からこの付随する事項が
広範囲になります。
ただし、税理士法上の税理士の
独占業務(税理士法2条1項括弧書き)
として、印紙税は含まれていない上、
今回の顧問契約書は、
>税務顧問契約書には、下記の通り記載しています。
>1.税務に関する委任の範囲は次の項目とする(不服申立て及び訴訟を除く)。
>(1)甲の法人税、事業税、住民税、消費税の「税務代理」並びに「税務書類作成」
>(2)甲の「税務相談」
となっているとのことで、
特段、印紙税のアドバイス等は含まれていません。
仮に契約書で定めていないとしても、
事実認定により業務範囲に含まれると認定される
ことがありますが、
(そうならない対策は、会員特典の顧問契約書の
説明書等をご覧ください。)
印紙税に関しては、独占業務でもないため、
特段付随する事項が広く解されるわけではないと思われます。
「消費税の還付申告」は具体的に委任を受けた
事項であり、印紙税の未納付について説明助言する義務が、
「消費税の還付申告」に付随する事項といえるとの
主張も考えられなくはないですが、
そもそも、過怠税が発生する直接の原因は、
売買契約書ないし覚書の「作成時」に印紙の貼付を
忘れたこと(印紙税を納付しなかったこと)にありますし、
調査の端緒にはなったのでしょうが、
実際に調査が入ったことについてまで、
法的に税理士の先生の責任とまでは言えないと
思われます。
今回の売買契約書や覚書の作成に関与
ないし印紙税の課否判断の個別的な相談も
受けていないということだと思いますので、
税理士の責任(賠償義務)とはいえない
可能性が高いと思います。
(3)仮に認められた場合
確かに、
「売買契約書」という印紙の要否判断が
容易な類型ではある点が気になりますが、
仮に責任が認められるとしても、
税理士の先生の損害への寄与は小さく
1割程度だと思われます。
よろしくお願い申し上げます。