相続 贈与 株式 遺留分

相続人以外に対する生前贈与と遺留分

推定相続人以外に自社株式を生前贈与した場合の
遺留分の減殺請求等についてお教えください。

贈与者:100%同族株主兼代表取締役(以下、社長)
受贈者:専務取締役(以下、専務)

専務は社長の内縁の妻の連れ子で社長との血縁関係はありません。
社長は専務へ自社株式及び自宅の贈与を検討しています。
社長には、推定相続人が存在します。

この場合、相続開始前1年より前に行われた贈与で被相続人と受贈者の双方が
遺留分権利者に損害を与えることを知っていた場合には遺留分の減殺請求の対象に
なるかと思います。
具体的に「遺留分権利者に損害を与えることを知っていた場合」とはどのような
場合が該当するのでしょうか。

今回検討事案である贈与について、1年を経過後に相続開始があった場合
減殺請求の対象になるでしょうか。

よろしくお願い致します。

1 ご質問

>この場合、相続開始前1年より前に行われた贈与で被相続人と受贈者の双方が
>遺留分権利者に損害を与えることを知っていた場合には遺留分の減殺請求の対象に
>なるかと思います。
>具体的に「遺留分権利者に損害を与えることを知っていた場合」とはどのような
>場合が該当するのでしょうか。

まず、判例において、
「遺留分権利者に損害を与えることを知っていた場合」
(現行民法1030条)とは、

①当事者双方(贈与者及び受贈者)が贈与当時、
贈与財産の価額が残存財産の価額を超えることを知り、
かつ、
②将来相続開始までに被相続人の財産に何らの変動も
ないであろうこと、少なくともその増加がないであろ
うことを予見していた

場合をいうと解釈されています。
(大審院昭和判決11年6月17日)

上記①及び②に該当する具体的な事実としては、
「贈与財産の全財産に対する割合だけではなく、
贈与の時期、贈与者の年齢、健康状態、職業などから
将来財産が増加する可能性が少ないことを認識してなされた
贈与であるか否かによるものと解すべき」とされています。

例えば、病気の場合、かなりの高齢の場合、
年金生活で、将来財産が増加する見込みがない
ような状況ですとこれに該当することになります。

>今回検討事案である贈与について、1年を経過後に相続開始があった場合
>減殺請求の対象になるでしょうか。

この場合、自社株式及び自宅の価額の合計が、
社長の総財産に対して占める割合が大きいほど
遺留分侵害の認識があったと推認されます。

一方、自社株の贈与をしても、
会社の取締役をやめずに、
社長には、贈与後も継続した収入源があれば、
遺留分侵害の認識がなかったと推認される事情です。

結果論はおくとして、
取締役としての収入が多額であり、
それが継続するような年齢や状況等であれば、

現時点で、株式及び自宅の価額が総財産に
対して大きな割合を
占めるとしても、遺留分侵害の認識があったとは
推認されにくいのではないかと思います。

よろしくお願い申し上げます。