会社法

みなし解散の登記後3年が経過した場合の取扱い

表題の件について、ご教示頂ければ幸いです。

ある法人が、休眠会社・休眠一般法人の整理作業の対象となったため、
みなし解散の登記が行われ、その後さらに3年が経過し、
登記記録が閉鎖されてしまいました。

この度、許認可などの都合でこの法人の登記記録を復活し、
継続したいと希望しています。

(質問1)
法務局の窓口では、継続登記はできない旨の説明を受けたそうなのですが、
本当に救済措置は存在しないのでしょうか。
また、継続登記ができないとする法令上の根拠は何処にあるのでしょうか。

(質問2)
みなし解散の登記後3年が経過し、登記記録が閉鎖されたた法人というのは
法律上どのような位置づけとなるのかについて、ご教示頂ければ幸いです。

(質問3)
滞納税金や債務がある場合には登記記録が閉鎖されたからといって
その支払義務が免除されるわけでは無いかと思います。
一方で、何らかの資産(預金や不動産、知的財産権や許認可)がある場合に
おいても、その手続や権利行使に支障をきたすものと思います。
本件のようなケースでは、今後どのような対応が想定されるのか
ご助言頂ければ幸いです。

1 ご質問①~救済措置等~

>法務局の窓口では、継続登記はできない旨の説明を受けたそうなのですが、
>本当に救済措置は存在しないのでしょうか。
>また、継続登記ができないとする法令上の根拠は何処にあるのでしょうか。

(1)回答の結論

残念ながら、法律上、
以前の状態(事業活動ができる法人)への復活
ということへの救済措置はありません。

そして、
登記は、会社の実態を公示するためのものです。
したがって、継続の登記の前提としては、
会社継続の実体法上の効果が生じている必要があります。

なお、詳細は回答の理由をご覧いただきたい
のですが、登記のみ入れるという方法論が
理論上ないわけではないと考えられますが、

犯罪行為に該当するのと、それでも
登記されるのみで、法律上、
以前の状態に戻るわけではありませんので、
専門家から積極的にアドバスできること
ではないように思います。

(2)回答の理由

まず、
みなし解散の効果が生じると(会社法472条)、
その名の通り、実体法上、会社は解散したものとして扱われ、
清算手続きを開始しなければならないことになります(同475条1号)。

ただし、ご存知の通り、解散によって、
株式会社は直ちに法人格を失うものではありません。

解散後も清算が結了するまでは、
清算に必要な範囲で会社は法人格を有する
ことになり、清算中の会社(会社法476条)
として存続します。

他方で、みなし解散によって解散の効果が生じた後も、
3年以内に株主総会の特別決議をすることにより、
株式会社を継続することができます(同309条2項11号、473条)。

継続することにより、
株式会社はそれ以降、
解散前と同様の権利能力を取り戻し、
事業を継続していくことができるようになります。

裏を返せば、
>みなし解散の登記が行われ、その後さらに3年が経過し、
ということであれば、

3年以内に株主総会特別決議を
経ていないため、継続決議をすることが
不可能になっているため、

この清算中の会社が、事業活動が
できる以前の状態に復活するという
ことが不可能という状態になっています。

そして、登記は、
会社の実態を公示するためのものですので、
同様に継続登記が不可能になるということです。

登記申請手続上は、
継続登記の申請には、
継続の特別決議をした株主総会議事録を
添付する必要があり(商登法46条2項)、
決議を経ていない以上その議事録を添付することは
できないので、申請が却下される(同法24条8号)
という流れになります。

逆にいえば、今からバックデートにより
特別決議の議事録を作成して、
継続登記の申請をすれば、

登記上は、申請が許可される可能性がないわけでは
ありません(経験はありません)。

しかし、

継続の効果が生じていないのに、
継続したと虚偽の申立をし、
これを登記させることは不実の登記であり、
公正証書原本不実記載罪(刑法157条1項)に
該当する行為になります。

特に一度、閉鎖している登記を
戻すという過程や登記申請のタイミングが
不自然なため、法務局がすんなり
認めるとも思えず、問題が露見する可能性が
高いです。

また、登記が入ったとしても、
(登記が入れば誰も何も言わない
という可能性が高そうですが)

上述の通り、法律上、
清算中の会社であることは
変わりがありません。

ですので、専門家のお立場
からこのような行為のアドバイス
をするというのは、やめた方が
良いかと思います。

2 ご質問②~法律上の位置付け~

>みなし解散の登記後3年が経過し、
>登記記録が閉鎖されたた法人というのは
>法律上どのような位置づけとなるのかについて、
>ご教示頂ければ幸いです。

上述の通り、清算中の会社または法人
ということになります。
(通常の解散決議後の会社と同様です。)

つまり、清算に必要な範囲でのみ
権利能力を有し、存続しています。

したがって、もともと会社が有していた財産は
継続して会社に帰属していますし、

消滅時効により債務消滅の効果などが生じない限り、
会社の債務も消滅していないことになります。

3 ご質問③~今後について~

>本件のようなケースでは、今後どのような対応が想定されるのか
>ご助言頂ければ幸いです。

清算中の会社などと同様に
清算手続を行い清算結了させる
ことになります。

つまり、清算人が就任の上、
会社の財産を換価し、債権者に
分配することになります。

余りがあれば、株主に分配する
という流れになります。

仮に債務超過の状態ですと、
通常の清算結了はできませんので、

特別清算または破産手続を
行う必要があります。

手続の流れは、私の
こちらの記事をご参照ください。
https://zeirishi-law.com/kashidaole/houtekiseiri/1

なお、実務上は、
解散後、手続の費用などが
ないことを理由に、放置されている
法人なども多く存在します。
(債権者や株主が何も言わなければ
問題になりませんので、放置されている
ということです。)

よろしくお願い申し上げます。