【前提】
事務所として使用している法人様からのご相談です。
通常の賃貸借契約により、事務所を借りているのですが、
管理会社より、以下の内容の連絡がありました。
①2年~2年半後に建物の明渡しをしてほしい。
②更新後の契約は定期借家契約にしてほしい。
③将来立退く場合の、こちらの希望金額を提示してほしい。
今回の契約更新の時期は2月末になっております。
※
立退きについては、
最終的には合意する前提でいるのですが、
少しでも多くの立退料を頂きたいと考えております。
【質問】
定期借家契約での更新はありえないですが、
今回の2月の更新契約の際の注意点等がありましたら、
教えて頂けますでしょうか。
>定期借家契約での更新はありえないですが、
>今回の2月の更新契約の際の注意点等がありましたら、
>教えて頂けますでしょうか。
2 回答
(1)契約の更新に関する借主の権利
ご承知のとおり、定期借家ではない
通常の賃貸借契約では、
契約を更新できるのが原則となっています。
契約更新を拒絶にするには、
借主側において正当な理由が必要で、
これはなかなか認められません。
>①2年~2年半後に建物の明渡しをしてほしい。
>②更新後の契約は定期借家契約にしてほしい。
についても、当然ですが、
このような要望に応じる必要はなく、
従前と同様の内容(契約期間も同様で、
おそらく2年間かと思います)で、
契約更新をするようにすればよいと思います。
(2)契約更新の方法について
賃貸借契約を更新する場合、
以下の3つの方法があります。
①自動更新
②合意更新
③法定更新(借地借家法に基づく更新)
①自動更新は、契約書に、
「期間満了の6か月以上前に、契約を更新しない旨の通知をしない限り、同一条件にて契約が更新される」
というような条項がある場合に、
この条項に基づいて、契約が更新されるものです。
このような条項があれば、
特に契約更新手続をしなくても、
さらに同一期間、延長されることになりますので、
特に契約書を締結しなおすというようなことも
必要ありません。
おそらく、事業用の事務所の場合、
この自動更新条項が入っている
ケースがほとんどかと思われます。
②合意更新は、お互いの合意により、
契約をし直すケースで、あらためて
契約書を締結しなおすことになります。
この方法で更新を行う場合には、
新しい契約書が従前の内容と同内容に
なっているかどうか、ご確認ください。
こちらに不利な条項が入っていたりすれば、
修正を申し出るか、締結しないという選択肢もあります。
自動更新条項がないケースで、合意更新をしないと、
次にあげる「法定更新」となります。
③法定更新は、借地借家法により、
契約が更新されたものとみなされる制度です。
期間満了の6か月前までに、貸主から、
契約を更新しない旨の通知をしない場合には、
従前と同一の条件で、賃貸借契約が
更新されたものとみなされます。
(借地借家法26条1項)
ただし、法定更新では、更新後の賃貸借の
期間が、定めのない契約となってしまい、
貸主から、6か月前までの予告による
解約申入れができてしまいます(借地借家法27条1項)。
貸主からの解約申入れは、契約の更新拒絶と同様に、
正当な理由がないと認められないため、
実際は、期間の定めがない契約となっても、
貸主からの解約申入れが認められることは
そうそうなく、それほどの不都合はありません。
(期間の定めがなく不明確になってしまう点で、
少し気持ち悪いという程度でしょうか)
したがって、契約更新の方法としては、
・自動更新であれば、それがベスト
・自動更新条項がなければ、合意更新で従前と同内容で合意する
・これが無理であれば、法定更新でもやむを得ない
というところかと思います。
まずは、賃貸借契約書に自動更新条項が
あるかどうかご確認ください。
(3)立退料を提示するかどうか
>③将来立退く場合の、こちらの希望金額を提示してほしい。
現時点で、立退きを前提とした交渉を
行いたい理由(早く立退料をもらって、
移転しないなど)
ということであれば、
提示してもよいと思いますが、
そうでなければ、現時点で示す必要はないでしょう。
立退料の交渉上も、今後ある程度の間までは、
立ち退きの意向については明言せず、
後まで粘った方が、立ち退き料が
上がるケースが多いと思います。
(もちろん、個別のケースによるので、
絶対ではないですが)
ですので、契約更新をした後、少し期間が空いて、
相手が再度、立ち退きを持ち掛けてきたタイミングぐらいで、
本格的な交渉をはじめてもよいかと思います。
その際は、物件にもよりますが、
弁護士などをご活用された方が
金額は大きくなるかと思います。
よろしくお願い申し上げます。