労働法

無断欠勤者の退職意思表示確認

社会保険に加入している従業員が無断欠勤を続けており、
その状態が2ヶ月経過しようとしています。

会社としては、出社を促す連絡はもちろん、自宅に訪問するなど接触を
試みていますが、一切の連絡を絶たれている状態です。

なぜ無断欠勤を続けるのか、今後継続勤務する意思があるのかについて、
確認ができないため対応に困っています。

無断欠勤が数ヶ月継続した段階で、懲戒解雇することも検討していますが、
会社都合退職(解雇)を行わないことを条件とする金融機関からの融資があるため
ご本人から退職の意思表示をしてもらうのがベストと考えています。

また、社会保険料(厚生年金・健康保険)の本人負担分について、
会社が立て替えている状態であり、回収も危ぶまれる状態です。
本人の退職意思表示が未確認であり、懲戒解雇していない状況下においては
勝手に資格喪失届を提出することはできません。

このような状況下において、取りうる法的手段としてはどのような選択肢があるか
ご教示頂ければ幸いです。

1 ご質問①~金融機関との融資の関係~

>無断欠勤が数ヶ月継続した段階で、懲戒解雇することも検討していますが、
>会社都合退職(解雇)を行わないことを条件とする金融機関からの融資があるため
>ご本人から退職の意思表示をしてもらうのがベストと考えています。

(1)雇用契約終了の方法

ご質問の状況において、
解雇の選択肢を除けば、
雇用契約を終了させる方法としては、

①合意退職(退職届)をとりつける
②就業規則に基づく自然退職の扱いとする

の選択肢があるかと思います。

①合意退職について

本人にこれだけ接触を試みられているにも
かかわらず、未だに連絡がつかないという
状況からすれば、現実的ではないかもしれません。

身元保証人がいるのであれば、
こちらに連絡して、本人と連絡をとれるよう
調整してもらうのも一案かと思います。

なお、退職の意思表明がとれるのであれば、
「退職届」などの書面で残る形で残しておいてください。

②就業規則に基づく自然退職について

まずは、就業規則の内容をご確認ください。

「無断欠勤後、本人と●ヶ月以上連絡がとれないときは、
退職したものとみなす」

というような条項が入っていることもあります。

就業規則に自然退職の規定があり、
かつ、その条件を満たすのであれば、
退職したものとみなし、法的には退職した
扱いとすることが可能です。

なお、資格喪失届において、
自然退職の規定により退職扱いとする
ことも可能と考えられますが、

これは、イレギュラーな扱いで、
運用に幅があると思われるため、
管轄の年金事務所に一応事前確認を
入れられた方がよいでしょう。

(2)金融機関との関係

ア 自然退職の場合

具体的には、金融機関との契約書の
文言をご確認いただきたいですが、

解雇以外であれば
問題ないということでしたら、
②の自然退職の場合には、
問題がないことになります。

イ ①と②が難しい場合

一方、①と②の方法では
難しい場合には、

雇用契約を終了させるには、
解雇するしか方法はないです。

この場合、金融機関に個別承認を
もらう形をとる方法も、あるかと
思います。

金融機関が解雇をしないことを
条件としている趣旨ですが、

一般的には、
解雇が無効になり
簿外債務が残るおそれや整理解雇などするような
ケースの回収のために定められているという
ところが強いでしょう。

そして、
2か月も無断で欠勤し、接触を試みても
一切連絡がつかないという状況からすると、
法的には、解雇できる可能性が高いです。

また、今後、無断欠勤期間が延びるほど、
解雇が有効になる可能性も高まります。

解雇が無効に
なることはないという根拠や資料をもとに
個別的に条件発動をしないように金融機関と
合意をするということになるでしょう。

上記の趣旨から、
感覚的には、しっかりと説明して説得すれば、
金融機関としては納得しない話ではないでしょう。

2 ご質問②~社会保険料の立替分の回収について~

>また、社会保険料(厚生年金・健康保険)の本人負担分について、
>会社が立て替えている状態であり、回収も危ぶまれる状態です。
>本人の退職意思表示が未確認であり、懲戒解雇していない状況下においては
>勝手に資格喪失届を提出することはできません。
>このような状況下において、取りうる法的手段としてはどのような選択肢があるか
>ご教示頂ければ幸いです。

従業員の給与が発生しておらず、
会社が立て替えた社会保険料を
給与から控除できないのであれば、
従業員本人に請求する(支払ってもらう)ことになります。

身元保証人がいるのであれば、
身元保証契約に基づいて、身元保証人に
請求できる可能性もあります。

ただし、訴訟になった場合には、
最終的には、身元保証人が責任を負う額を
限定される可能性もあります(身元保証法5条)。

従業員本人(または身元保証人)が任意に支払わない
ということになれば、訴訟をして、
支払いを強制するしかありません。

ただ、金額としては比較的少額かとも
思いますので、訴訟をする時間的、
金銭的コストの方が大きく、
あまり現実的ではないかも知れません。

よろしくお願い申し上げます。