条件付遺贈または停止条件付遺贈、負担付遺贈の違いを分かりやすく教えていただけると
助かります。
相談内容は、
遺言書を作成する予定の人A(女性)に子供Bはいましたが、未婚のまますでに亡くなって
しまいました。Aのご主人もすでに亡くなられています。
このままですとAが亡くなるとAの兄弟が相続人になります。
Aの家は地主家系で不動産が多くあります。
現時点でAの夫の親族は法律的には相続することはできないですが、
親戚周りからの圧力で新家ではあるけど〇〇家に不動産を戻してほしいという意見がでています。
Aのご主人が家督相続で引き継いだため、Aのご主人の兄弟はまだ健在ですが、相続していない状態です。
Aのご主人が亡くなった際にAとその子Bが相続しましたが、子Bの方が母より早く亡くなって
子Bにつけていた財産をAが相続しました。
相談者Aについては、相続人ではないけど、近くに夫の兄弟がまだ健在で、近しい人は近くに
いないため、自分の将来の面倒などを見てくれるなら夫の兄弟の子に遺言にて
不動産を遺贈していもいいと考えています。
現時点で、誰かを養子縁組するつもりはありません。
遺言書は記載したけど、面倒を仮に見てもらえなければAの思ったこととは異なるので、
Aの面倒を見たのなら不動産を遺贈するという内容の遺言書を作成していきたいと考えています。
この内容はどのような文書がいいでしょうか、また有効なのでしょうか?
面倒の度合いや面倒を見たかどうかの判定は遺言執行者が判断するのか?
面倒の度合いを具体的に記載しないと判定は困難なような気がします。
どのように文書を入れたらよさそうか、アドバイスをいただけると助かります。
>条件付遺贈または停止条件付遺贈、負担付遺贈の違いを分かりやすく教えていただけると
>助かります。
「条件付遺贈」とは、ある事実(条件)が
達成された場合に、遺贈の効力(財産の承継)
が発生または消滅する遺言をいいます(民法985条2項)。
そして、条件が達成された場合に、
遺言の効力が「発生」するのが「停止条件付遺贈」
遺言の効力が「消滅」するのが「解除条件付遺贈」
といいます。
Aの面倒を見たことを条件に遺贈の効力が発生する
というのは、「Aの面倒を見る」という条件を満たせば、
遺贈の効力を発生させるものなので、
「停止条件付遺贈」となります。
これに対して、「負担付遺贈」とは、
受遺者に一定の義務(負担)を課してする遺贈をいいます。
負担付遺贈は、条件付遺贈と異なり、
「負担」を履行するかしないかに関係なく
遺贈の効力(財産の承継)は発生するものです。
負担を履行しなくても、
遺贈の効力が消滅するわけではありません。
停止条件付遺贈と負担付遺贈の大きな違いは、
停止条件付遺贈は、「条件」が達成されなければ、
遺贈の効力(財産の承継)が発生しないのに対し、
負担付遺贈は、「負担」として負わされた義務を
果たすかどうかに関係なく、遺贈の効力が生じる
という点にあります。
また、「負担」については、遺贈の効力(財産の承継)
を前提に、一定の義務(負担)を課すものですので、
論理的に相続開始後に義務を負わせるものと
なります。
なお、受遺者が「負担」を履行しない場合には、
相続人からの履行の催告や裁判所への
遺言取消請求(民法1027条)によって対処されます。
2 ご質問②~条件付遺贈の記載について~
>遺言書は記載したけど、面倒を仮に見てもらえなければAの思ったこととは異なるので、
>Aの面倒を見たのなら不動産を遺贈するという内容の遺言書を作成していきたいと考えています。
>この内容はどのような文書がいいでしょうか、また有効なのでしょうか?
ご相談者様のAとしては、
「Aが死亡した時までAの面倒を見たことを条件に、
初めて遺贈の効力を発生させる」とお考えかと思いますので、
今回のケースは停止条件付遺贈に該当します。
ただ、先生もご懸念されているとおり、
どのような場合に条件が達成され
遺贈の効力が生じたのかが客観的に
明らかでないと、遺贈の効力が生じたのかどうかが
はっきりせず、紛争の火種となります。
したがって、実務上「面倒を見る」というような
抽象的な条件をつけて、停止条件付遺贈を行うことは
紛争予防という観点からすると避けた方がよいところです。
もっとも、今回のご質問を見ると、
ご相談者様Aとしては、財産が誰に承継
されるかということよりも、
「面倒を見てもらうこと」自体に目的があり、
遺贈するというのは、これを行ってもらうための手段と
いう位置づけなのかな、と思います。
後に争いになる可能性がある程度残っても、
面倒を見てもらうことを重視したい
というご意向であれば、停止条件付遺贈とするという
選択肢もありかと思います。
そもそも、条件を守らなければ、
財産を取得できない停止条件とすることは、
義務を履行させるという点では、
強力な意味を持つからです。
ただし、「Aの面倒を見る」ことの詳細を
ある程度遺言で定めておいた方がよいです。
「面倒を見る」という内容は、
ご要望に応じて様々かと思いますが、
少なくとも、以下のような具体性は
持たせておいた方がよいかと思います。
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(ご要望に応じてカスタマイズしてください)
(文例)
遺言者は、○○が、次の事項を行ったときは、○○に対し不動産を遺贈する。
・遺言者が死亡するまで同人と同居し、世話をし、扶養する。
・遺言者の老人ホーム等への施設入居等が必要な場合は、Aの同意を得て、
この手続等をなすこととし、その施設費等を負担する。
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これでも抽象的な面は否めないのですが、
プラスして、遺言は撤回できるため、
しっかりとやってくれなければ撤回することになる
旨も受贈者に伝えておくことも良いでしょう。
3 ご質問③~条件が達成されたかどうかを判断するのはだれか?~
>面倒の度合いや面倒を見たかどうかの判定は遺言執行者が判断するのか?
遺言執行者が指定されている場合、遺贈にかかる
不動産の登記申請は、遺言執行者と受遺者が共同して行う
こととなります(不動産登記法60条)。
そういう意味では、条件が達成されたかどうかの判断は
一次的には遺言執行者が行うことになります。
(遺言執行者が条件達成されていないと考えれば、
登記申請をしないということになるでしょう)
また、登記手続において、条件が成就したか否かを
法務局の審査官も判断することになります。
(基本的には、登記は形式審査なので、
申請の際に、条件が満たされている旨を記載をしておけば、
通してくれるのが通常かとは思います)
そして、最終的に、遺贈の効力が争われた場合には、
裁判所にて判断することになるため、
最終の判断権者という意味では、裁判所ということになります。
よろしくお願い申し上げます。