【前提条件】
母:甲 相続人:子A 子B
(まだ、甲は健在なので、相続は発生していません。)
もともと甲とAは、甲名義の土地、建物(店舗兼住宅)で
同居していましたが、不仲のため、甲が家を出ました。
この店舗は、甲が80%、Aが20%の株式を持つ株式会社
が経営しており、代表取締役は、Aです。
甲名義の土地、建物で、Aとその家族は今も事業を行い、
居住しています。
Bは甲が家を出たことをきっかけに、Aとその家族に
不信感を持っており、今、付き合いはありません。
甲は、おそらく遺言を残し、全財産をBに引き継ぐだろうと
Aは考えています。
Aが代表を務める法人に関連する甲の相続財産は、
土地と店舗兼住宅、法人の株式、法人への貸付金1,000万円です。
(現在、株式の評価額は0円です。)
【質問】
1.甲が遺言を残して亡くなった場合、Aは、遺留分を
店舗兼住宅の建物と土地、株式を優先にもらいたいと考えています。
昨年の民法の改正で、「遺留分権利者及びその承継人は、
受遺者又は受贈者に対し、遺留分侵害額に相当する金銭の
支払を請求することができる。」となりましたが、これは、
「金銭でしか請求できない。」という意味でしょうか?
遺留分権利者は、遺留分侵害額をすべて金銭で請求すること
ができるようになったことは理解できるのですが、。いくつか
のサイトで、「金銭でしか請求できない」との記載がありました。
「何で弁済するか?」というのは、どちらに決定権があるので
しょうか?
2.この店舗兼住宅が建っている土地に、Aが代表である法人の
借入について、根抵当権が設定されています。
この土地をBが相続した場合、この根抵当権はどうなりますか?
3. いろいろと事情があり、先方と話すことは出来ない状況ですが、
そういう状況の中で、今、やっておいた方がいいことはありますでしょうか?
(ざっくりとした質問で、申し訳ないです。)
よろしくお願いいたします。
>昨年の民法の改正で、「遺留分権利者及びその承継人は、
>受遺者又は受贈者に対し、遺留分侵害額に相当する金銭の
>支払を請求することができる。」となりましたが、これは、
>「金銭でしか請求できない。」という意味でしょうか?
>「何で弁済するか?」というのは、どちらに決定権があるので
>しょうか?
相続法改正(2019年7月1日以降の相続に適用)により、
金銭請求しか認められないことになります。
ですので、Aの立場から株式や事業用財産を優先的に
取得するような請求はできません。
ただし、相続開始後、
AB間の遺留分請求に関する合意
(または遺留分請求放棄の代わりに株式などを取得する合意)
などをすることは可能です。
株価が0ということですと、交渉次第では、
Bとしては、金銭を支払うよりは株式の方が
良いという考えもあるところですので、
実際に相続が開始した後、
Bに交渉していくことになるかと思います。
ただし、一度紛争になると、
Bが甲名義の土地建物の利用など
の目的から、会社を当該不動産から
立ち退かせるために株も譲らない
(または株を譲る条件として退去を求めてくる)
ということも想定できます。
2 ご質問②~根抵当について~
>2この店舗兼住宅が建っている土地に、Aが代表である法人の
>借入について、根抵当権が設定されています。
>この土地をBが相続した場合、この根抵当権はどうなりますか?
根抵当権は、Bが土地を相続したとしても、
そのまま残ることになります。
この点については、不動産の価値(売却して
得られる利益など)と借入金額のバランスは
ありますが、
上記の交渉の際に
法人が返済しなければ、Bも土地を失うことになる
旨伝え(Bは法人に求償できますが、Bが80%
の株主であるとするとあまり意味がないでしょう)、
現実論としてAが代表者として事業を続け、返済
していく必要があるが、株がなければ継続
することは難しい旨、伝えるということに
なると思います。
3 ご質問③~今すべきこと~
>3. いろいろと事情があり、先方と話すことは出来ない状況ですが、
>そういう状況の中で、今、やっておいた方がいいことはありますでしょうか?
まず、今、最もすべきこととしては、
前提を無視するようで申し訳ないのですが、
抜本的な解決の道を考えると
甲と話し合いの機会を持てるよう働きかける
以外ありません。
1対1では難しいということでしたら、
Bと三者間でも良いので、甲がご健在の
うちになんとか機会を持つことも検討
されても良いと思います。
いろいろな思いもあるかと思いますが、
少しずつでも、関係性の修復に努める
べきかと思います(もちろん、結果論
うまくいかないのは仕方がないとして)。
そのほか、現状で確認すべき事項として、
建物(店舗兼住宅)について、
使用貸借なのか、賃貸借なのか
という点を確認することです。
つまり、対価を支払っているかという点ですね。
店舗部分については、
Bが80%株式を有してしまう
という前提ですといずれに
しても、どうにもならない(BがAを
辞めさせて、自分が役員になることが
できるため)のですが、
住宅部分については、
甲とAの契約として、
賃貸借契約ということでしたら、
Bは賃貸人の地位も相続しますので、
正当な理由がない限り、Aに対して、
明け渡しを求めることができません。
また、住宅部分について賃貸借という
ことでしたら、Bの建物の利用用途も
限られるため、相続後の交渉上も、
有利に働くことになるでしょう。
使用貸借(無償利用)のケースであれば、
甲に対して、対価を少しでも払いたいという
旨伝えることで、話し合いの機会を
持つきっかけになさっても良いかと思います。
この辺りの接点を持つ方法は、
なぜ関係性がこじれたのかなどの経緯によって
変わってくるかとは思います(感情論ですので、
対価の支払いを伝えることで火に油を注ぐケースも
あり得るところです)。
よろしくお願い申し上げます。