会社法 その他

監査役監査の目的又は役割

監査役監査の目的又は役割について、検討しております。
ネットで検索したところ、以下のリンクが見つかりました。

http://www.kansa.or.jp/support_tool/manual/A/A-006.doc

監査役協会のサイトかと思うのですが、こちらの「1. 基本方針」に以下の記載があります。

『会社の基本理念、行動憲章および経営方針に則り、監査役監査基準を指針とし、会社経営の目標達成、経営管理の改善・向上に資する監査を実施する。』

ここの「会社経営の目標達成、経営管理の改善・向上に資する」という文言ですが、監査役監査というより内部監査の目的のように感じました。

監査役監査(業務監査)とは、取締役の職務の執行が法令・定款を遵守して行われているかどうかを監査するものという理解です。
会社経営の目標達成、経営管理の改善・向上を行う権限・義務があるのは取締役であり、その取締役による権限・義務の遂行が法令・定款を遵守しているかをチェックするのが監査役監査というイメージであったため、監査役監査の目的又は役割とするのは違和感を感じています。
(もちろん、当該監査役によるチェックにより、「会社経営の目標達成、経営管理の改善・向上」が達成されるという意味では、間接的には監査役監査も「会社経営の目標達成、経営管理の改善・向上」に資するものともいえるかとは思いますが)

考え方次第であり、画一的な回答はないかと思いますが、監査役監査の目的又は役割を「会社経営の目標達成、経営管理の改善・向上(に資する)」にすることの妥当性に関して、先生のご意見をお伺いできれば幸いです。

些末な質問で大変恐縮ですが、よろしくお願いいたします。

1 ご質問

>監査役協会のサイトかと思うのですが、こちらの「1. 基本方針」に以下の記載があります。
>『会社の基本理念、行動憲章および経営方針に則り、監査役監査基準を指針とし、会社経営
>の目標達成、経営管理の改善・向上に資する監査を実施する。』
>ここの「会社経営の目標達成、経営管理の改善・向上に資する」という文言ですが、監査役
>監査というより内部監査の目的のように感じました。
>監査役監査(業務監査)とは、取締役の職務の執行が法令・定款を遵守して行われているか
>どうかを監査するものという理解です。

>考え方次第であり、画一的な回答はないかと思いますが、監査役監査の目的又は役割を「会
>社経営の目標達成、経営管理の改善・向上(に資する)」にすることの妥当性に関して、先
>生のご意見をお伺いできれば幸いです。

2 意見

(1)社会的な意義と法律上の意義

●●先生のご指摘の通り、
会社法上の監査役の本来の役割主眼は、

>監査役監査(業務監査)とは、
>取締役の職務の執行が法令・定款を遵守して行われているか

という点にあるというのが従来からの考え方です。

ただ、会社法の制定とともに、
監査役は、
・執行部門による買収防衛策や内部統制システムの基本方針・運用状況の
相当性を監査役(会)の意見として監査報告に記載すること(会社法施行規則129条1項5号・6号)
・株主代表訴訟制度において、株主による取締役への提訴請求に対して、取締役に責任があっても提訴しないとする妥当性判断を行う不提訴理由通知書制度(会社法847条4項)
・会計監査人の報酬同意理由を妥当性の観点から事業報告に記載すること(会社法施行規則126条2号)など

妥当性監査まで役割の一部になるという
見解が有力になってきてはいます。

何れにしても、
所有と経営の分離の下、
株主のために取締役の行為を監督・監視することが
本来的な責務になります。

ですので、●●先生のご理解が会社法の観点
からは妥当かと思います。

ただ、「コンプライアンス」などの定義も
社会学上は、
・単純な法令遵守のみ
または
・社会的信頼の維持向上をもって、企業の持続的な維持・成長を支えること

など種々のものがあり、後者の考え方から
コンプライアンス規定などを作成されていることが
現状の上場企業などでは多いとは思います。

個人的にも、社会的にインパクトのある
不祥事事件の解決を模索するケースでは、
単に法令に従った解決をするのみではなく、

当該案件についてどのように社会に伝えるのかや
(第三者委員会の厳しい調査を経て、委員長から
の具体的報告などに委ねるべきか、その前提として
一旦の記者会見などをどうするかなど)

原因の調査や今後の防止策の策定や公表などについては、
後者の視点から対応していくようにはしています。

(2)取締役と監査役の役割分担

ただし、会社全体のコンプラインスなどとは
異なり、取締役と監査役は、一種の緊張関係を
前提として、監督を図り取締役の業務を適正化
するという関係があります。

例えば、具体的に監査役が経営目標の達成
のための業務を行うということになると、
代表取締役と同種の業務を行うことになり緊張関係
がなくなったり、代表取締役の決定を遂行するという
(支配される)関係になるおそれがあります。

そうなると、監査役の緊張関係を前提にした
取締役の業務の適正化ということを適切に
遂行できないおそれがあります。

ですので、ご指摘の
>(もちろん、当該監査役によるチェックにより、「会社経営の目標達成、経営管理の改善・
>向上」が達成されるという意味では、間接的には監査役監査も「会社経営の目標達成、経営
>管理の改善・向上」に資するものともいえるかとは思いますが)

というものと同趣旨なのかも
しれませんが、

取締役と監査役の存在意義は、両者とも、
・社会的信頼を維持向上もって、企業の持続的な維持・成長を支えること
を最終目標としつつ、

監査役は、上記の達成のために必要な、

取締役による権限・義務の遂行が法令・定款を遵守しているか
株主の委託の趣旨に沿うものなのかなどをチェックする役割を担う
というような考え方が良いかと、個人的には思います。

(3)まとめ

ご指摘の「1. 基本方針」というものも表現の仕方の
問題として、このことを言っているという
解釈は可能かとは思いますが、

最終的な全体の目的とその全体目的達成手段としての
監査役の役割というものを

分けて記載した方がわかりやすいのかとは思います。

よろしくお願い申し上げます。