除外合意と生命保険金の受取人の関係について、
ご教示ください。
被相続人を被保険者とし、
遺留分権利者(後継者ではない)を受取人とする生命保険に加入することを条件に
除外合意の合意書を作成することは可能と考えていますが、
この理解で正しいでしょうか?
この合意書の中に、受取人変更がされた場合は本合意書は無効とする、
という条項を入れます。
また、この生命保険金の額ですが、
除外合意当時の遺留分相当額の近似値となっている必要はありますか?
どの程度の額(割合)であれば、家庭裁判所は許可するものでしょうか?
よろしくお願い致します。
>被相続人を被保険者とし、
>遺留分権利者(後継者ではない)を受取人とする生命保険に加入することを条件に
>除外合意の合意書を作成することは可能と考えていますが、
>この理解で正しいでしょうか?
>この合意書の中に、受取人変更がされた場合は本合意書は無効とする、
>という条項を入れます。
はい。法律上代償措置について、特段制限があるわけでは
ありませんので、考え方として問題ありません。
なお、念のため
>遺留分権利者(後継者ではない)を受取人とする生命保険に加入することを条件に
>この合意書の中に、受取人変更がされた場合は本合意書は無効とする、
>という条項を入れます。
ということですが、生命保険加入のタイミングにも
よりますが、合意後に加入するという形で合意が先行する場合には、
合意はしておいて、生命保険に加入しなかった場合を
合意の効力を失効させるという形が良いかと思います。
生命保険の加入を合意自体の停止条件とし、
合意の効力がまだ発生していないということになってしまうと、
最終的に裁判所の許可で効力が
発生する制度と矛盾が生じてしまうおそれがあるため、
裁判所から加入してからもう一度手続きをするよう
求められることがでてきそうです。
2 ご質問②~生命保険金の額について~
>また、この生命保険金の額ですが、
>除外合意当時の遺留分相当額の近似値となっている必要はありますか?
>どの程度の額(割合)であれば、家庭裁判所は許可するものでしょうか?
ここの判断は究極的には
「真意に基づく合意か」否かという点で、裁判所が
判断しますので、法的には、
他との事情との兼ね合いになってしまいます。
しかし、実務上の感覚値としては、
民法特例は、民法上の放棄の制度と異なり、
事業の円滑な承継を目的とした特殊な趣旨を有する制度で、
かつ「合意」(遺留分権利者の単独行為ではない)
というものを前提にしていますので、
裁判所単位で不許可になる事例というのは、
あまり考えられません。
あるとすれば、除外合意に付随するオプション合意として、
被相続人の事業用財産(株式や不動産など)以外の
財産のうち、かなり大きな財産を後継者に贈与しているケースで、
それについても、除外合意をしているような特殊なケースで
裁判所が疑念を持った場合や
その他、例えば、現状の相続財産を偽って説明して、
合意に至っているような合意過程が推認
できるようなことがあると不許可とされる
ケースもあるかと思います。詐欺や恐喝などに近いケースでしょう。
ですので、
>除外合意当時の遺留分相当額の近似値となっている必要はありますか?
必要はないと思いますね。
(実際にもかなり乖離のあるものでも、認められているケースを知っています。)
>どの程度の額(割合)であれば、家庭裁判所は許可するものでしょうか?
こちらについても、事業の円滑に承継させるという
目的ではなく、通常の相続財産の遺留分回避を目的として、
制度を悪用しているというような特殊な事情がうかがわれない
限り、問題ないと思います。
司法統計を見ていただければわかるかと思いますが、
現状、実際の統計上も
経産省の確認後、裁判所で不許可とされたという事例は
0件であり、許可率100%となっています。
ただし、そもそも遺留分権利者にかなり不利な
ケースですと、推定相続人間で本当に合意ができるのか?
という点は別の問題としてありますが。
よろしくお願い申し上げます。