税理士法 税理士賠償責任

税理士の横領等についての対応

以下、質問させていただきます。

質問: 税理士による詐欺横領行為を刑事罰の対象として厳罰に処してほしい
具体的には被害社長はどのように刑事罰を求めたらよいか

相談者:税理士による詐欺横領被害にあった社長

事案の内容
●被害者社長は5年ほど前に加害税理士と顧問契約を締結
現在は2社15事業所の記帳代行・税務申告・給与計算・法定調書・給与支払報告書提出を委任
●年間1000万円を超える税理士報酬を支払っている(一般的には不当に過大)
●契約していない新設会社の顧問料を勝手に受領している

◎日税ビジネスサービスの自動振替にて月額350万円もの引き落としがあったため被害社長より加害税理士に問い合わせ
1.請求明細をはじめて受領 160万円の地方税・消費税を立替して納付したと記載(虚偽)
2.地方税・消費税は会社において支払っており加害税理士による立替はなかったことを確認して再度説明を求める
3.加害税理士より再度請求明細(2回目)が提出される
内容は労働保険申告等々の手続きが列挙されるが既に別途支払済であり虚偽の請求明細であることが判明
また被害社長の社員の確定申告料3年分を含んでいた(代理支払を了解していない)
4.加害税理士が委任した弁護士より回答
日税ビジネスサービスへ提出した報酬台帳 法定給与 80万円・特別徴収納付書過去分80万円 と記載されている
5.加害税理士より請求明細(3回目)
給与支払報告書 80万円 特別徴収納付書過去分 80万円と記載
特別徴収納付書過去分は市区町村から会社に直接送付されており加害税理士は一切の処理を行っていない架空請求である

結論
被害社長は上記横領行為についておよび多額の不当な請求について、新たな被害者を出さないためにも厳重な刑事罰としてもらいたい。
さらに関連して税理士法上の厳重な懲戒処分を求めたい

1 ご質問

>質問: 税理士による詐欺横領行為を刑事罰の対象として厳罰に処してほしい
>具体的には被害社長はどのように刑事罰を求めたらよいか

>結論
>被害社長は上記横領行為についておよび多額の不当な請求について、新たな被害者を出さな
>いためにも厳重な刑事罰としてもらいたい。さらに関連して税理士法上の厳重な懲戒処分を
>求めたい

2 回答

刑事罰を求められたいということですので、
まずは、警察署にご相談に
行かれるのが最初のステップです。

その後、大まかにいうと、
通常、以下のような流れになります。

①警察に相談

②その後被害届、もしくは告訴状の提出

③警察が捜査開始、証拠収集

④有罪とできるだけのある程度の証拠がそろえば逮捕、その後、検察が起訴・不起訴を決定

基本的には、③の段階以降は、
警察・検察がその権限に基づいて
どの程度捜査を行うか、最終的に処罰をするかも
含めて判断することですので、
被害者としてはこれに介入することはできません。

刑事手続上での被害者の基本的な役割は、
警察に対して犯罪事実の申告(情報提供)をして、
警察がこれにつき、捜査を行う、処罰をする
端緒を与えるということにあります。

そして、被害者側として重要なのは、
②の段階で、被害届または告訴状を
警察に受理してもらう(その後、
警察が捜査を進める気を起こさせる)
ということになります。

証拠が乏しく、最終的に有罪にできそうもない
ということだと、被害届や告訴状を受理してくれない
ということも往々にしてあります。
なので、この段階で、一定の証拠がある(または捜査すれば
出てくるだろう)ということが必要になります。

事案の概要を時系列にまとめ
できる限り基礎付ける証拠となりうる
資料を持参すると良いでしょう。

なお、警察が告訴状を受理した場合には、
絶対に捜査をしなければならず、その結果、
起訴・不起訴の処分を行った場合、
告訴人に、その結果を通知しなければなりません。
警察は、告訴されると、手続きとして煩雑になるため、
なかなか受理しようとしない傾向にあり、
被害届の提出よりも数段ハードルが高いです。

被害届、告訴状を提出した後の捜査やその後の流れは、
警察・検察に任せることになります。

何はともあれ、横領行為につき刑事手続を進めたい
ということであれば、まずは警察にご相談に
行っていただければと思います。

なお、一般論としては、当事者間で示談が成立し、
被害額の弁償もなされているような事案では、
刑事処罰がなされる可能性も低下しますので、
民事的に、被害額の返還請求もされるご予定ということであれば、
この点はご認識いただいた方がよいと思います。

ただ、被害額の弁償がなされているからといって
絶対処罰されないわけではないですし、
弁償が未了だからといって、絶対に処罰されるわけでも
ありません。
ご依頼者様の意向にもよるところになりますが、

被害額を弁償してもらえるに越したことは
ないと思いますので、刑事手続を考慮して、
弁償を受ける機会があるのに、これを逃すという
ことは今回のような事例ではあまり想定できません。

ですので、民事上の返還請求はされればよいと
思いますが、返還を受けると、刑事手続に
影響が出る可能性があることを依頼者様に
ご認識いただく程度でよいかと思います。

また、税理士の懲戒手続についても、
手続的なイメージは、上記の刑事手続と同様かと思います。

懲戒事由に該当するような事実があったことを
当該税理士の所属税理士会(税理士法47条第2項)または
財務大臣(税理士法47条第3項)に書面にて請求をすることに
なります(一般的には税理士会が多いと思います。)。

深い調査をするかや懲戒処分を下すかの判断は
刑事同様、国にゆだねることにはなります。

懲戒を求めたいということでしたら、
まずは、税理士会にご相談いただくという流れが
一般的かと思います。

よろしくお願い申し上げます。